【移住者インタビュー】最新号
【第38回】特定非営利活動法人高田暮舎 木津谷 亜美 さん
『「自分がやりたいこと」に出会った陸前高田 もっともっとこの地域を知りたい!』
-ご出身と現在の活動について教えてください。
青森県の日本海側にあるつがる市の出身です。高校卒業まで、つがる市で生まれ育ち、栃木県の大学に進学しました。
現在は、特定非営利活動法人高田暮舎の職員として、空き家の相談窓口の業務を担当しています。空き家の持ち主からの相談、依頼を受けて、管理の代行や家財整理などを行っているのですが、私は主に古物の販売を担当しており、空き家で不要となっている古物を引取り、きれいにした上で販売するという業務を行っています。空き家から引き取った古物は、高田暮舎の副理事長である越戸さんが、「泊まれる古本屋」として昨年オープンした「山猫堂」で販売しており、私自身も店舗スタッフとして、販売・窓口業務を行っています。
-陸前高田市に移住される前はどのようなことをなさっていたのですか?
栃木県の大学で、国際学部に所属し、様々な国や地域の文化や政治について、幅広く学んでいました。その後、大学卒業と同時に、陸前高田市に移住してきました。
-陸前高田市に移住することを決めたきっかけ・タイミングについて教えてください。
陸前高田には、大学の卒業間近に出会いました。
在学中に就職活動をして、実は栃木県内の企業に内定もいただいていたんです。将来的には東北に戻って何かしたいと考えていたのですが、いきなり東北で自分のやりたいこと、就職先を探すのは難しかったので、東北の中で趣味的に関わることができる場所を探すことにしました。
そこで、大学最後の夏休みに、東北で、住み込みでできるインターンシップ先を探してみました。元々空き家に関する取組に興味があり、探していたところ、特定非営利活動法人wizの「岩手実践型インターンシップ」の募集内容の中に、高田暮舎の空き家の課題をテーマとしたインターンシップの募集を見つけ、参加することを決めました。
インターンシップでは、空き家問題という現実的な課題に向き合いながら、家財整理等で出てくる古物や体験などを価値化することがミッションとして与えられ、私は古物販売の仕組みづくりに取り組みました。
インターンシップの期間中、当時開店準備中だった山猫堂の宿泊スペースに泊めさせていただきました。準備が進む店内の様子を見て「面白いことが始まりそう」と感じていましたし、空き家の仕事も面白く、自分のやりたいことに近いなぁと考えるようになりました。
その後、2ヶ月の予定だったインターンシップ期間を延長していただき、山猫堂の開店準備や、私が提案した古物の販売も実現に向けて話が進む中で、このままこの仕事に関わり続けたいという思いが強くなっていきました。たくさんの方に相談し、とても悩みましたが、東北で自分のやりたいことがすぐできるのはこのタイミングしかないと思い、内定をお断りして陸前高田に来ることを決意しました。
-移住するにあたって、どのようなことを重視しましたか?
人の安心感があったというのが、移住に踏み切れた理由の一つです。インターンシップの時に、越戸さんが、地域のいろいろな方と人脈をつないでくれましたし、地域の方々も新しく来る人を受け入れてくれる雰囲気があって、ここでなら安心して暮らせると感じました。
また、移住後もやっぱりいいなと感じるのは、陸前高田の気候です。学生時代に関東で生活していた時は、湿度の高い夏と乾燥した冬の気候が体に合わなかったのですが、陸前高田を訪れた際、空気が澄んでいて風景もきれいで、気候も慣れ親しんだ東北の気候といった感じで、自分にとってとても心地よく、暮らしやすい地域だと感じました。
-陸前高田市への移住を考えてから、どれくらいで実現されましたか?
インターンシップで陸前高田に滞在していたのが、2022年の8月から10月でした。その後、11月上旬ころにもう一度来たのですが、11月の後半あたりには、内定を断って移住することを決めていたので、大学卒業までの間に移住の準備を進めていました。
住む場所も、越戸さんに空き家を活用したシェアハウスをご紹介いただいて、卒業後すぐに移住することができました。
-移住に当たって県や市の支援制度は利用しましたか?
ホームページなどを確認しながら、いろいろ調べてみたのですが、残念ながら該当する支援制度がなく、利用できませんでした。
-移住するときに大変だったことはありますか?
インターンシップの際にできたつながりもあり、周りの方もサポートしてくれたので、そんなに大変だったという印象はないですね。
強いて言うなら、移住する前に、卒業論文を書きながらこちらの業務のお手伝いをしていた時が一番大変でした。
-どんな時に移住してよかったと感じますか?
おいしいものを食べたときと、きれいな景色を見たときですね。
食べ物では、特にお魚がおいしいですが、陸前高田は魚、果物、お米、野菜と、全部あって、全部おいしいんです。土地の豊かさに驚かされるというか、一つの土地でこれだけ全て揃うというのは、とてもすごいことだと感じていて、この土地の魅力の一つだと思います。
-移住してみて改めて、気仙地域はどんなところだと思いましたか?
地元と比較してしまうのですが、やはり地域全体で寛容さがあると感じます。地域の方々も明るい方が多くて、来るもの拒まずといった雰囲気がとてもいいと思います。私自身も、県外から移住してきたことについて悪く言われたことは全くないですし、むしろ「来てくれてありがとう」ですとか「応援してるね」とか、声をかけてくださる方もいらっしゃって、とても過ごしやすい場所だなと感じています。
-移住してから驚いたこと、不便だと感じることはありますか?
驚いたことは、先ほども触れましたが土地が豊かなことと、他には地域の芸能がたくさん残っていることです。三陸地域には多いと思うのですが、小さな地域ごとのお祭りや行事がしっかり残っていて驚きました。
不便に感じることとしては、夜に出かけられる場所があまりないことですね。あと、不便とはまた違いますが、意外と海が遠いと感じました。私は今山側の土地に住んでいるのですが、家から海が見えるのに、行くには車での移動が必要だったり、防潮堤を越えなければいけなかったりと、海のある暮らしではありますが、意外と生活から海が遠いというのはこの地域特有のものなんだと感じました。
-現在古物の販売等を行っている、「山猫堂」はどんなお店ですか。
座ってゆっくりできる古本屋というのは、他にはあまりないかなと思います。また、夜遅くまで営業しているので、夜に来れる場所としてもおすすめです。
私自身がセレクトしている古物もぜひ見ていただきたいです。置いている古物一点一点にストーリーがあって、元は空き家にあったものなので、その時々によって仕入れもランダムなんです。中には元の持ち主の名前が書いてあったりとか、子どもが学校の授業で作った器なんかもあったりするので、そういったものに触れるのも面白いんじゃないかなと思います。山猫堂に来ていただくことで、「自分のお婆ちゃんの家にもこういうのあったなぁ」とか、「こう並んでいるとかわいく見える」とか、自分の周りにあるものを捉え直すような経験をしてもらえると嬉しいです。
-気仙地域の好きな場所、景色を教えてください。
いくつかあって、先ずは陸前高田市から住田町に向かう道路から見える気仙川の景色がいいなぁと思います。
あとは、広田町に向かう道路から見える広田湾の景色も好きですし、アップルロード(米崎町を走る県道)からは、海も山も田んぼも全部見えて、すごくいい景色だと思います。通勤の際などに、日常的に通る道ですが、いつも癒されています。
-今後の目標や、やりたいことを教えてください!
地域に積み上げられてきた文化や暮らしを、もっともっと知りたいなと思っています。例えば、最近だと横田町に住むお婆さんから布草履の作り方を教わったり、市内の産直施設で藤づるを使ったかごの作り方を教えてもらったりしたのですが、そういった地域の暮らしの中にある手仕事ですとか、地域に根付いた文化や技術に、もっとたくさん触れていきたいです。そのような技術を自分自身で吸収した上で、新しい価値を作り出せていけたらすごく面白いなと考えています。
-移住を考えている方にメッセージをお願いします!
移住するときに「仕事」の選択が一つの壁になるかと思いますが、周りに助けてくれる人もいますし、意外と何とかなるということを伝えたいです。私の場合、今の仕事に採用されなかった時には、産直のお仕事ですとか、リンゴ農家さんのお手伝いなどをしながら、空いている時間に山猫堂にもお邪魔しようかなとも考えていましたし、そういった関わり方も面白いと思います。
移住する際に選択する仕事として、デスクワークを前提に考える方が多いかと思いますが、そうじゃない仕事の選択肢もあって、むしろそっちの方が面白い場合もあるんじゃないかなと考えています。
私の場合、地域で紡がれてきた知恵や習慣といったものに触れるのがすごく面白いと感じていて、とても勉強になりますし、身に着けた知恵が自分の人生において大事な考え方になることもあって、移住するにあたってはそういう楽しみ方もあるということも知っていただきたいです。
【お店紹介】
泊まれる古本屋 山猫堂
住 所 陸前高田市竹駒町字仲の沢60
営業時間 13時00分~22時00分 (定休日は毎週火曜日)
駐 車 場 無料駐車場あり(15台)
電話番号 080-1802-8512
関連情報
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沿岸広域振興局経営企画部大船渡地域振興センター
地域振興課
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