【環境保健研究センター】ハヤチネウスユキソウの大量増殖技術を確立しました!

Xでポスト
フェイスブックでシェア
ラインでシェア

ページ番号1071508  更新日 令和6年1月24日

印刷大きな文字で印刷

ハヤチネウスユキソウは、岩手県の早池峰山のみに自生し、ヨーロッパアルプスに生育するエーデルワイスに似ていることから、早池峰山を訪れる登山者の憧れの花となっています。

しかし近年、登山者による踏みつけや盗掘により、個体数の減少が指摘されており、いわてレッドデータブックでは、環境省レッドデータブックの絶滅危惧I類に相当するAランクに掲載されています。

この度、絶滅が危惧されているハヤチネウスユキソウについて、当センター地球科学部、小山田智彰主査専門研究員が、組織培養によるウイルスフリー苗(無病苗)の大量増殖技術を確立しましたので、ご紹介します。

組織培養によるハヤチネウスユキソウの大量増殖技術確立の経緯

  1. 組織培養に使用する培地について、最適な培地を選定した。
  2. 使用する茎頂分裂組織(けいちょうぶんれつそしき:植物の茎の先端部分で細胞分裂が行われる部分)を摘出する適期が4月から5月であることを確認した。
  3. 茎頂培養からシュート(茎とそれについている葉を一括してシュートと呼ぶ)の形成を進めるために、培地に添加する植物生長調整物質の種類と最適な配合を発見した。
  4. 上記3のシュートから得られた葉を培養して、多芽体(芽やシュートが集まって塊になったもの)を得るために、培地に添加する植物生長調整物質の種類と最適な配合を発見した。
  5. 上記4で得られた多芽体を材料に、発根を進め植物体を得るために、培地に添加する植物生長調整物質の種類と濃度を発見した。
  6. 以上の方法を組み合わせ、発根培養から50日経過した培養苗を順化(自然環境に耐えられるように慣らすこと)し、栽培を行うと、全ての個体の開花を確認することができた。

ハヤチネウスユキソウは、「岩手県希少野生動植物の保護に関する条例」の「特定希少野生動植物」に指定されており、生きている個体を採取等することはできませんが、届出を行った事業者に限り生産したハヤチネウスユキソウを販売することが可能です。

自生地からハヤチネウスユキソウを採取することができない一方で、これまで大量増殖技術が確立されていなかったことから、相当数のハヤチネウスユキソウが盗掘され販売されたと推測されています。

今回確立された、茎頂培養を用いてウイルスフリー苗(無病苗)を大量増殖する技術は、早池峰山で採取することなく苗を提供することができるようになるため、絶滅危惧種ハヤチネウスユキソウを保護する観点において非常に有用な技術であると考えられます。

また、将来的にはハヤチネウスユキソウが園芸種として流通することや、薬用植物としての研究が進むことも大いに期待されます。

詳しい組織培養の方法は、添付ファイルをご参照ください。

小山田主査専門研究員のこれまでの研究成果

写真:ハヤチネウスユキソウ

写真:葉片培養による大量増殖

PDFファイルをご覧いただくには、「Adobe(R) Reader(R)」が必要です。お持ちでない方はアドビシステムズ社のサイト(新しいウィンドウ)からダウンロード(無料)してください。

このページに関するお問い合わせ

岩手県環境保健研究センター 地球科学部
〒020-0857 岩手県盛岡市北飯岡1-11-16
電話番号:019-656-5672 ファクス番号:019-656-5671
お問い合わせは専用フォームをご利用ください。