『アツモリソウ無菌培養苗の生育促進法』が世界で最も権威あるラン専門誌に紹介されました!

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ページ番号1071510  更新日 令和6年1月24日

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絶滅の危機に瀕しているラン科植物「アツモリソウ」について、岩手県環境保健研究センター地球科学部、小山田主任専門研究員が約20年にわたり研究し開発してきた「アツモリソウ無菌培養苗の生育促進法」が、イギリスのラン専門誌「The Orchid Review(2010年12月号)」に掲載され、全く新しいアツモリソウの人工増殖技術として、世界に向けて紹介されました。

英国王立園芸協会が発行し、120年近い歴史を誇る「The Orchid Review」は、世界中から最新の研究論文が数多く投稿されている世界で最も権威あるラン専門誌であり、小山田研究員が開発した「アツモリソウ無菌培養苗の生育促進法」は、「The Orchid Review」に掲載されたことにより、世界的に価値ある技術であると認められたものといえます。

小山田研究員は、密封された容器の中に、成長に有効な栄養分などを混ぜ合わせた培養水を寒天などで固形化した培地を作り、この培地にアツモリソウの種を撒いて発芽させる「無菌撒種法」の開発に約10年前に成功していましたが、発芽後に成長不良が発生し、これまでの栽培実験では花を咲かせることは難しく、移植前に苗を培地の上で成長させる技術の開発が課題となっていました。

そこで、約10年をかけて、紙や特殊な鉱物など24種類の素材を組み合わせて実験を重ね、発芽した苗が根を張り成長することができる培地(ペーパーライト培地、以下、PL培地)を開発することに成功しました。

次に、培養容器の中で発芽直後の種子をPL培地に移植し、無菌状態のまま通気することのできる無菌フィルターを作製して、培養容器の上部に設置するという「全く新しい無菌育苗法」を開発することに成功しました。

その後の生育状況を従来の培養方法と比較すると、苗の草丈、葉数が増加していることが明らかで、根数、重量、越冬数も増加し、極めて高い効果が示されました。

このようにして育てたアツモリソウの苗を、2009年に遠野市内の野外試験地に定植して試験栽培を行った結果、多くの苗が生存していることが確認され、2010年6月に3輪のアツモリソウの開花を確認することができました。

小山田研究員は、「PL培地による育苗法は、園芸・育種分野において、苗の安定生産と育種年限の短縮化に効果を発揮し、地域資源としてのアツモリソウの利用を可能にすると思います。遠野物語に描かれたように、アツモリソウが咲き誇る風景を岩手に再現できれば嬉しいです。」と喜びを語っています。

写真:従来の方法と新しい育種法による成長の比較

写真:遠野市に移植し、開花したアツモリソウ


小山田主任専門研究員が開発した新種のアツモリソウの紹介は、下記をごらんください。

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このページに関するお問い合わせ

岩手県環境保健研究センター 地球科学部
〒020-0857 岩手県盛岡市北飯岡1-11-16
電話番号:019-656-5672 ファクス番号:019-656-5671
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