令和6年度部課長研修 知事講話

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ページ番号1081073  更新日 令和7年2月26日

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とき:令和7年1月16日(木曜日)
ところ:トーサイクラシックホール岩手(岩手県民会館)中ホール
対象者:総括課長級以上の職員
演題:「世界のいまと岩手県のこれから」

「世界のいまと岩手県のこれから」

 鳥インフルエンザ3例目の盛岡の養鶏場で、殺処分が夕べのうちに終了しました。最初の1例目の12万羽ですら今まで経験したことがない数でしたが、その後、2例目が約5万羽、そして3例目は約40万羽ということで、大勢の職員に現場に赴いて防疫措置をしてもらいました。ぜひねぎらって欲しいと思います。1人で何回も入った人もいます。

 また、人間のインフルエンザも流行っています。体が冷えたり、疲れたり、栄養が足りなかったりしますと、感染しやすくなりますので、保温、休息、栄養がとれるように配慮して欲しいと思います。

 今日のテーマは、「世界のいまと岩手県のこれから」。これは、2月8日の「岩手県政150周年記念 岩手未来シンポジウム~岩手発・世界の中の地方創生~」において、私が講演する予定のテーマでして、今日はその先行上映会みたいな感じで行きたいと思います。

 さて、「世界のいまと岩手県のこれから」ということで、まず、世界が今どうなっているか。戦争が続いています。ロシア・ウクライナ戦争とイスラエルのガザ侵攻。それら以外の場所での紛争もあちこちで起きています。あと、分断ですね、国と国の分断、そして国の中での分断。これがかなりあちこちで進んでいます。

 それから、物価高の問題。これは、日本だけでなく、世界中で起きています。

 去年、いろんな国で選挙があって、現職側が敗北したり後退したりするということが、日本も含めて、あちこちで起きました。これはそれぞれの国の中で物価高が進んで、国民生活が苦しくなっているということが大きいです。昔からインフレ、物価高っていうのは、政府の評判を落とす非常に大きな要因でありまして、それで去年そういう選挙結果が、あちこちの国で起きている。それほどの国民生活の危機的状況が、世界のあちこちで起きているということです。

 イアン・ブレマーというアメリカの国際政治学者が、ユーラシアグループという団体を主催し、毎年、今年の重大リスクというのを発表しています。2025年の重大リスクとして発表された第1は、深まるG0世界の混迷というものです。G0世界っていうのは、イアン・ブレマーさんとユーラシアグループが使い始めた言葉です。7つの大国をG7と呼び、超大国が2つあるとG2と呼んだりするのですが、G0世界というのは、世界を仕切るような大国、超大国がゼロだということです。アメリカが、世界全体の平和と繁栄に責任を持ち切れなくなっているし、アメリカ以外の国も、それぞれの国の事情、それぞれの国の利害ファーストで動いていて、世界の平和と繁栄を守ろうという秩序がなくなっちゃっているというのが、世界のリスクだと言われています。

 そして、リスクの2番目に指摘されているのが、トランプの支配です。トランプ氏というのは、リスクだということをアメリカ人の有識者、アメリカをベースとしたシンクタンクが言っています。

 トランプ氏のリスクについては、タイム誌が、去年のパーソンオブザイヤーは、ドナルド・トランプさんということで、ロングインタビューをしています。

 このロングインタビューの中で、イスラエルのネタニヤフ首相との関係で、タイム誌が、あなたはネタニヤフ氏を信頼しますか、と聞いたところ、ちょっと間を置いて、トランプ氏はこう言ったと。「I don’t trust anybody(私は誰も信頼しない)」

 これ結構、すごいなと思うのですけど。そういう人が世界で一番巨大な権力を握ったときに、世界はどうなるかというような状況になっているわけです。

 日本のいまはどうなっているか。去年、地方創生10年だったのですが、結局目標が未達成でした。地方創生の目標は、まち・ひと・しごと創生法に基づく国の人口ビジョンに書かれていて、1つは地方から東京への人口移動、転入超過を毎年10万人規模だったものをゼロにするというもの。これは、コロナ禍のときに減ったのですけれど、コロナ禍の例外を除くと、むしろ10万人を超えて増えてしまったという、東京一極集中はむしろ加速してしまったということが結果です。

 そして、合計特殊出生率を1.8まで高くしようというのが2つ目の目標でしたが、高まらずむしろ下がって1.2くらいになってしまったというのが、地方創生10年の結果です。

 2月8日のいわて未来シンポジウムで私と対談する予定の楡周平さんは、明日から全国で公開される映画「サンセット・サンライズ」の原作者です。「サンセット・サンライズ」は、2022年1月に発行されていて、初代地方創生担当大臣石破茂、それから岩手県知事達増拓也の2人が、帯の推薦に名前が並んでいます。

 その楡周平さんがその後、2023年6月に、「限界国家」という本を出しています。限界集落をもじって限界国家ということで、国全体がもう限界国家になっているという本で、そのくらい絶望的な状況だという指摘です。

 世界全体も、日本も、絶望的な状況になっておりまして、「闇が広がる」っていう歌があるのですが、「闇が広がる」っていう歌を聞いたことある人いますか。ゼロではないですね。これは、ミュージカル「エリザベート」の歌で、闇が広がり、人は皆彷徨っている、闇が広がる、この世の終わりが近い、というような歌詞です。世界の今は日本の今も含めて、そういう絶望的な状況にあるのではないかというふうに見ることもできると思います。

 ところが、視点をがらりと変えて、岩手から今という時間を見ますと、好材料ばかりではないでしょうか。去年の世界の10大ニュース、国内10大ニュース、そして岩手県の10大ニュースと思い出しますと、やはり世界の10大ニュースと、全国の10大ニュースは、悲惨な話とか、よくない話が多く、しかし岩手の10大ニュースは、大谷翔平選手の活躍から始まって、いいニュースばかりです。

 大谷選手の活躍に加え、菊池雄星選手もメジャーリーグで活躍し、エンゼルスの救世主として移籍が決まり、そしてふるさと岩手に「King of the Hill」という、今まで誰も作ったことがないような練習施設を作るという大活躍。そこに、佐々木朗希選手の大リーグ挑戦、そして佐々木麟太郎君のアメリカ留学ということがありました。

 ニューヨークタイムズが盛岡を紹介したことは、その効果が続いています。ニューヨークタイムズは去年、山口市を紹介し、そして今年は富山市を紹介して、日本の地方に注目しています。

 日本の地方都市が3つ続いてきますと、最初に選ばれた盛岡が、日本の地方都市筆頭、岩手は日本の地方筆頭というイメージが出てくるのではないかと思います。

 そして去年は、みちのく潮風トレイルが、主要な海外メディアにどんどん取り上げられた年でもありました。

 自動車・半導体産業の集積が順調ですし、空気圧制御工作機械で世界的なシェアを誇るSMCが、遠野に部品を供給、サプライしてくれる会社約40社を招いて、サプライヤーパークを作っています。

 スタートアップ、ベンチャー企業についても、ヘラルボニー、雨風太陽、その前からあるエルテスが有名ですし、TOLIC、医工連携。医療関係機械が発展しています。

 また、最近発見したのですが、盛岡一高を卒業し、慶応の医学部に入って、東大の医学部研究所にも入って、治療アプリというのを開発し、Cure App(キュアアップ)という会社を立ち上げた、鈴木晋さんという若い人がいます。

 ハロウインターナショナルも、岩手の好材料に挙げられるでしょう。日本式のインターナショナルスクールの開校も準備されています。

 というふうに、岩手の今というのを見ますと、そこには好材料がたくさんあります。

 その好材料に、多くの場合、共通するのは、この岩手らしさと海外展開を組み合わせるということではないでしょうか。岩手らしさと、海外展開を組み合わせていく時に、そこには希望が見えてくるのではないか。

 最初に、世界や日本で闇が広がる、と言いましたが、国家のあり方や国家間関係については、非常に悪くなっているのですけれども、個人や企業、団体、また地域が何かしようとすれば、そこには非常に大きな可能性があるわけです。その象徴が大谷翔平選手ですね。そこに岩手県のこれからを考えていく方向性があるのではないかと考えております。

 岩手の海外展開のこれからを予想させる、エビデンスを挙げましょう。地場産品の輸出が伸びています。そして、牛肉の輸出がすごい勢いで伸びていますし、お米の輸出額も同様に伸びています。

 牛肉は、香港やアメリカ、シンガポール、カナダなど、それぞれの国が認可した、レベルの高い食肉処理場で処理した肉じゃないと輸入してくれない、輸出ができません。岩手県では「いわちく」が、対応できる処理場として認められているので、どんどん輸出できるようになっています。今度は東北唯一、EU向けの輸出認定を受けました。お米については、流通業者さんや現地の小売、飲食関係の評判が良くなってきまして。去年はパリで見本市に参加しました。

 インバウンド観光客の数も、去年2024年、ついにコロナ禍前を上回るようになりました。この外国人観光客数の伸びには、円安ということもあるのですけれども、ニューヨークタイムズに書かれた盛岡を褒めるクレイグ・モドさんの記事や、潮風トレイルの評判の良さなども役に立ったと思います。

 ニューヨークタイムズが盛岡市を選んだり、クレイグ・モドさんが文章を書いてくれたり、そしてみちのく潮風トレイルも評判が高まっているっていうのは、偶然ではないです。

 まず、そもそも日本という国が、海外旅行先として、世界中から愛好されています。盛岡がロンドンの次に、行くべきところとして一昨年紹介されたとき、王様が交代するので、一番はロンドン、2番目には日本のどこかを入れようという、ニューヨークタイムズの判断でした。日本は、世界中の海外旅行愛好家の間で人気があり、それが、一昨年ようやく年の初めから、コロナ対策の水際対策なしで、世界中から自由に日本に行けるようになった。これは、日本を2番目に紹介するしかないということで、そもそも日本が海外旅行先として非常に人気があるんですね。

 日本の自然の豊かさは、世界的に大変貴重です。例えば、水が豊かで、透明な水が流れる川がよく見られるというのは、世界ではとても珍しいことです。

 大体、川というものは濁っているのが世界標準で、汚染物質で濁っている場合もあれば、中国の黄河のように、土砂が入ってきて濁るというケースも多いです。

 ゆったり流れる川というのは、大体濁ります。日本の川は、短くて流れが速いことが多いので、綺麗なまま流れていく。特に上流の辺りは、渓流とか言いまして、川底が見え、魚も見えます。駅があるような町からちょっと行けば、透明な川の流れを見られる、釣りもできるっていうようなところは、世界でも非常に稀です。日本が自然に恵まれている例です。

 自然が豊かなので、食べ物が非常においしい。食材に非常に恵まれている。これも世界的に見て、特筆すべき恵まれ方です。ちなみに、世界3大料理は、中華料理、フランス料理、トルコ料理で、宮廷料理がベースなのですが、日本に来た外国人が食べたがる料理っていうのは、普通の人が食べる料理なのですね。

 日本は、皇室の料理がゴージャスな形で発展しなかったですし、江戸時代、将軍料理っていうのも聞きませんよね。むしろ、小説「鬼平犯科帳」などを読みますと、江戸の庶民が食べる食べ物が美味しいわけですよ。鬼平さんがあの店のあれは美味いから一緒に食いに行こう、とかですね。普通の人が食べる料理が非常に発達したのが日本というところがあります。

 その関係で、日本の家事にかける時間の長さという問題があります。特に料理にかける時間が、欧米よりかなり長いという統計があるようです。日本は、家庭での料理に時間をかけている。それだけ普段食べるものに手間暇かけないと満足できないみたいな感覚が日本社会にあり、お昼の定食屋の定食などもですね、1,000円以下で美味しいものが食べられる。諸外国は、そうですね昼ご飯でも、3,000円ぐらい出せば美味しいものが食べられますけど、1,000円以下で、諸外国で美味しいものを食べようと思ってもなかなか食べられない、ファストフードになってしまうところがあります。またファストフードでも、パンにハムやチーズ、ハンバーグ挟むとか、また、唐揚げをそのまま食べるとか、それに比べて日本のラーメンとか丼物とかは、手間のかけ方も違えば美味しさも違うわけですよね。

 ということで、日本全体が外国人に行き先として好まれますし、日本の食べ物や飲み物、広く生活文化を自分の国でも体験経験したいということで、日本から食材を輸出するチャンスがあるわけです。

 地方創生を成功に持ってくためには、海外展開をテコとし、海外展開と連携した新しい地方創生をやっていくといいのではないかというふうに見えてくるわけです。

 それを理論的に補強する話を、去年大連で聞いてきました。大連での夏季ダボス会議。スイスのダボスで、毎年1月、世界経済フォーラム主催のダボス会議が開かれています。ジェンダーギャップ指数って毎年報告されていますけど、これを取りまとめて報告しているのが世界経済フォーラムです。

 この世界経済フォーラムの幹部、マネージングディレクター、スイスのダボス会議や、中国の夏季ダボス会議の責任者である、ミレク・デュセクさんと面会し、30分くらいお話をさせてもらう機会がありました。

 この時話題にしましたのが、地方こそ、世界経済フォーラムが目指しているような経済社会のあり方にすでに取り組んでいるし、取り組んでいくのにいい場なのだということを話して、おお、そうかということで、意気投合しました。

 世界経済フォーラムは、「これからの成長の4条件」として、イノベーション、インクルージョン、サスティナブル、レジリエントを打ち出しています。

 イノベーションは、技術革新とか、技術以外でも、いろんな新機軸で新しい価値を生み出していくということで成長に必要ということは分かりやすいのですが、これだけじゃないところがみそです。

 2番目にインクルージョン(包括包摂)というのが来ます。性別、年齢、障害の有無、国籍などに関係なく、あらゆる人々を平等に受け入れ、参加させ、尊重する。平等というふうに言ってもいいのです。これは今日本にとって大事、地方創生にとっても非常に大事なジェンダーギャップ解消が含まれます。女性の伝統的役割や意識、男女の伝統的役割分担に関するアンコンシャスバイアスを直していかないと、地方からの若い女性の転出超過は止まりませんというのが、去年、非常に大きくクローズアップされました。地方として取り組んでいかなければならないことです。

 3番目はサスティナブル(持続可能性)。サスティナブルに関しては、岩手県も、環境王国いわてとか、環境非常事態宣言とか、取り組んでいます。SDGsと言ってもいいです。持続可能な開発目標。持続可能性は今、地方が取り組んでいるし、企業も地方でこれに取り組んでいます。典型的な例は、トヨタ東日本が自動車組み立て工場を動かす電力を、企業局の水力発電での再生可能エネルギーで賄うようにしたことです。岩手で工場を操業すれば、脱炭素(ゼロカーボン)で生産できるということです。地方でこそそういうことができるわけでありまして、岩手にとっても大事です。

 4番目に、レジリエント(強靭化)。日本では、防災の中で強靱化が出てきます。自然災害、それから感染症などの危機管理です。これも、東日本大震災津波を大きな例として、岩手は必要に迫られてずっと取り組み続けているし、これに関しては、世界的にも発信できることもあり、岩手の取り柄と言っていいところだと思います。

 ということで、世界経済フォーラムが言っている成長の4条件は、岩手は既にかなり取り組んでいるし、むしろ、日本の地方は、そういうことをやるのに非常にいい場だよということで、話が盛り上がったわけであります。

 この成長の4条件の話を聞いていて、デジャヴ、どこかで見たことある、どこかで聞いたことある、という感覚を覚えた人が結構いるのではないかと思いますが、それは、実はいわて県民計画第2期アクションプランの4つの重点事項というのが、今の4条件とほぼ同じと言えるからです。

 分かりやすい方から行きましょう。強靱化は、「安全安心な地域づくり」そのものです。そしてイノベーションは今、このDX(デジタルトランスフォーメーション)を中心に取り組んでいます。持続可能性は、GX(グリーントランスフォーメーション)。インクルージョン、平等の件も、ジェンダーギャップ解消っていうのが、人口減少対策の大きいテーマになっているということから、岩手が今取り組んでいて、これからさらに力を入れる、人口減少対策の一環、地方創生の主要な柱と言っていいと思います。

 人口減少対策は、「生きにくさを生きやすさに変える」と言っていますが、生きにくさとは、何かから排除されるということではないでしょうか。子供がいるがゆえにいろいろ自由にできないとか、結婚が仕事と両立しないなど。ですから、生きにくさを生きやすさに変えていくということは、すべてインクルージョンと考えていいと思います。どんな状況にある人も、差別なく、やりたいことが自由にできるようにする、それが生きにくさを生きやすさに変えることであり、人口減少対策なのだと考えることもできると思います。

 世界経済フォーラムの成長の4条件、イノベーション、インクルージョン、持続可能性、強靱化をきちっとやることで、「お互いに幸福を守り育てる希望郷いわて」が実現する。幸福ウェルビーイングであり、また希望でもあるということが、結論になるわけであります。

 改めて「世界の今と岩手県のこれから」という題に戻りますと、国家や国家間を見ると、悲惨な状況で絶望的になってくるのですが、世界の普通の人たちの消費行動などを見ていますと、世界は日本を求めている、また岩手を求めているということが言えて、そこに輸出やインバウンド観光振興で答えていけば、そこに大きなチャンスがあるということです。

 そして、世界経済フォーラムの、ダボス会議や夏季ダボス会議に集まる民間企業や団体、大学教育機関など、国家じゃない、国際社会における様々な主体は、さっき言ったような成長の4条件という方向に進んでいこうとしているのですが、岩手も、県民計画と第2期アクションプランのもと、それを4つの重点事項として取り組んできたわけなので、それを徹底していくことで、そういう国際社会の様々な主体と一緒にやっていけるだろうと思います。

 そういうことは、すでに大谷翔平選手もやっています。大谷翔平選手もイノベーションがあるわけですよね。あとインクルージョンも、国籍を問わずという中にみずから飛び込んでいく形でやっています。

 成長の4条件、県民計画とアクションプランの4つの重点事項を進める方向性は、実はすでに大谷翔平選手がやっていたことでもあるし、がんばりましょうというところで終わりたいと思います。ありがとうございました。

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