8 退職の際、同業他社に転職しない旨の誓約書を書かされた。
大手小売チェーンで店長として勤務していましたが、先日、会社を退職しました。退職する際、「退職後、1年間は同業者への転職はしない」旨の誓約書を提出させられましたが、このような誓約書の定めに従わなくてはならないでしょうか。
労働者の転職を制限することについては、使用者の正当な利益の保護に照らし、労働者の職業選択の自由を制限する程度が、制限期間、場所的範囲、制限対象となっている職種の範囲、代償措置の有無等からみて、必要かつ相当な限度を超える場合には無効となるとされています。裁判例では、量販店チェーンを展開する会社の地区部長や店長を務めた労働者が会社に提出した「退職後、最低1年間は同業者への転職はしない」旨の誓約書の定めを、次の事情などから無効ではないとしたものがあります(東京地判平成19年4月24日 ヤマダ電気事件)。
- 会社がこの労働者のような知識、経験がある者の転職を制限することは不合理ではないこと。
- 転職が禁止される範囲が同種の量販店に限定されていること。
- 退職後1年という期間が目的に照らして不相当に長くないこと。
- 会社から誓約書の提出を求められる従業員の賃金が他の従業員と比較して高額であること。
なお、会社側から強迫されて誓約書を提出したなどの場合には、転職しない旨の誓約を取り消すことができます。
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