損失の補償
損失の補償(当事者主義)
収用委員会は、損失の補償について、起業者、土地所有者及び関係人それぞれ申し立てた範囲内の額で、裁決をすることになっています。
具体的には、以下の3つの類型に分類されます。
- 土地所有者の申立て額が11万円、起業者の見積額が9万円、収用委員会の認定額が8万円である場合、起業者の見積額9万円が裁決額になります。
- 土地所有者の申立て額が11万円、起業者の見積額が9万円、収用委員会の認定額が10万円である場合、収用委員会の認定額10万円が裁決額になります。
- 土地所有者の申立て額が11万円、起業者の見積額が9万円、収用委員会の認定額が12万円である場合、土地所有者の申立て額11万円が裁決額になります。
損失の補償の主な種類
収用委員会は、主に土地所有者及び関係人が受ける損失の補償を裁決しますが、それには権利取得裁決で決められる「土地に関する補償」と明渡裁決で決められる「明渡しに関する補償」の2種類があります。
損失の補償は、原則として、各人別に金銭で補償することになっています。
なお、補償のうち、土地所有者又は関係人が意見書による請求をしない場合、補償されないものもありますのでご注意ください。
土地に関する補償
- 土地に対する補償(土地が収用されるとき)
この補償は、近傍類地等の取引価格などを考慮して決定されます。
また、この価格は、事業認定の告示があった時に固定され、以後権利取得裁決の時までの物価の変動に応じた修正がなされます。 - 権利消滅に対する補償
(土地の収用により土地に関する所有権以外の権利が消滅するとき)
この補償は、土地に対する補償と同じ方法で決定されます。 - 残地に対する補償
(同一の土地所有者の一団の土地の一部が収用されることにより残地が生じるとき)
残地補償
一団の土地の一部の収用又は使用により、残地の価格が減じる等、残地に関して損失が生ずるときは、その損失が補償されます。
残地収用
土地の収用により、残地を従来利用していた目的に供することが著しく困難となるときは、土地所有者は、その全部の収用を意見書により請求することができます。
当該補償を請求する場合、意見書の提出が必要となります。
残地の工事の補償
土地の収用又は使用により、残地に通路、みぞ、かき、さくその他の工作物の新築、改築、増築若しくは修繕又は盛土若しくは切土をする必要が生ずるときは、これに要する費用が補償されます。
この補償の全部又は一部に代えて起業者が当該工事を行うことを請求する場合、意見書の提出が必要となります。
替地に対する補償(金銭に代えて替地による補償を求めるとき)
土地所有者及び関係人は、土地に対する補償金(権利消滅に対する補償金)の全部又は一部に代えて、替地による補償を請求する場合、意見書の提出が必要となります。
明渡しに関する補償
- 移転料の補償(収用する土地に建物等の物件があるとき)
収用する土地にある建物、立竹木等の物件は移転しなければなりませんが、これに要する移転料は補償されます。
ただし、立竹木について、伐採が相当と認められる場合には、伐採費を補償します。
なお、補償金の額は、明渡裁決の時の価格で決められます。
また、事業認定後に、建物などを新築、増築した場合、あらかじめ知事の承認を受けていないかぎり、これについて損失の補償を請求することはできません。
物件が分割されることとなり、その全部を移転しなければ従来利用していた目的に供することが著しく困難となるため物件全部の移転料を請求する場合、意見書の提出が必要となります。 - 移転困難な場合の収用請求
物件を移転することが著しく困難であるとき、又は物件を移転することによって従来利用していた目的に供することが著しく困難となるときは、その所有者は、その物件の収用を意見書により請求することができます。
当該補償を請求する場合、意見書の提出が必要となります。 - その他の補償
特別な事情に基づく損失以外の、離作料(農業補償)、営業上の損失補償、建物移転による賃貸料の損失補償、借家人補償、移転雑費など、土地を収用することによって通常受ける損失は、補償されます。
以上のほか、土地収用法(第6章)には、損失の補償について詳しい定めがありますので、参照してください。
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