絶滅危惧植物コマクサの大量増殖技術の開発に成功

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ページ番号1015879  更新日 平成31年2月20日

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岩手県環境保健研究センターは、このたび、自生するコマクサを大量増殖させるための新技術の開発に成功し、原著論文が「薬用植物研究」に掲載されました。今回の研究成果は、絶滅危惧植物コマクサの保存はもとより、野生植物資源利用の研究分野においてもコマクサを材料にした新たな有用物質の発見を支える極めて有用な技術になります。

コマクサの写真
コマクサの自生写真(2014年7月7日・焼走り登山道8合目)

1 研究内容

当所地球科学部の小山田智彰上席専門研究員ほか3名は、絶滅危惧植物 コマクサを大量増殖させるための新技術の開発に成功しました。

過去に発表されてきた技術は、増殖が不安定で、根の発生に失敗するなどの理由で実用的な大量増殖法はありませんでした。

そのため、岩手山の土壌を分析した結果を参考にした独自の「コマクサ専用培地」の開発から着手しました。

次にコマクサの花や茎、葉から組織を切り出して酸性水に漬け込み、細胞の初期化が可能なものを調べた結果、葉が適していることを確認しました。

「コマクサ専用培地」に初期化した葉の組織を植え込んで行き、植物の発生を促す効果が期待できる植物調整成長物質数種から最も効果のある組み合わせと最適濃度を追求した結果、葉の一部をもとに10本前後の培養苗を発生させることができました。

続けて培養苗に根を発生させるための試験を行い、「コマクサ専用培地」に加える物質の検討を続けた結果、「炭」と「糖」を一定量加えることで確実に発根させることに成功したのです。

この苗を試験管から取り出して栽培に移行すると翌春には90%が生存し、その全てに花が咲きました。

図1 開発した新技術の工程図
図1 開発した新技術「コマクサの組織培養による大量増殖法」の工程図
図2 組織の初期化試験の写真
図2 組織の初期化試験
図3 葉の組織から発生させた培養苗の写真
図3 葉の組織から発生させた培養苗
図4 翌年に開花したコマクサ培養苗の写真
図4 翌年に開花したコマクサ培養苗

2 研究の意義

コマクサは,民間利用による薬用として採取され続けたことによって国内有数の自生地が絶滅した過去を持ちます。また、全国でコマクサが自生している山を含んだ火山の活発化が話題となっておりますが、ひとたび噴火すればコマクサは最初に被害を受ける高山植物でもあります。
今回の研究によって絶滅危惧植物コマクサの保存を確実に行うことができるようになり、さらに野生植物資源利用の研究分野においてもコマクサを材料にした新たな有用物質の発見を支える極めて有用な技術にもなります。

3 研究内容の詳細

「薬用植物研究」38巻1号(2016年1号)に原著論文として掲載されました。
なお、論文の内容は、本ページに添付ファイルとして掲載します。

参考

1 コマクサ

本州中部以北の高山砂礫地に自生する多年生植物で、本県を含む7道県のレッドデータブックで絶滅危惧植物に搭載されている。
本県では岩手山と秋田駒ヶ岳のみに自生する。

2 「薬用植物研究」

薬用植物栽培研究会(事務局:新日本製薬 薬用植物研究所)が年2回発行する研究誌。
同会は、約30年前に日本生薬学会「栽培部会」関係者が連携して「センブリ研究会」として発足。5年後に、「薬用植物栽培研究会」と変更し、薬用植物の栽培と有効利用に関する研究等の拡大を図ることを目的に活動している。

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このページに関するお問い合わせ

岩手県環境保健研究センター 地球科学部
〒020-0857 岩手県盛岡市北飯岡1-11-16
電話番号:019-656-5672 ファクス番号:019-656-5671
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