令和元年9月県議会定例会知事演述

ページ番号1024226  更新日 令和1年10月18日

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1 はじめに

 本日、ここに第2回県議会定例会が開会されるに当たり、今後の県政運営について、私の所信の一端を申し上げます。

 かけがえのない多くの命が失われた東日本大震災津波の発生から8年半、また、甚大な被害をもたらした平成28年台風第10号災害の発生から3年が経ちました。

 改めて、犠牲になられた方々の御冥福をお祈りし、いまだ、応急仮設住宅で不自由な暮らしを余儀なくされている方々をはじめ、被害を受けられた皆様に、心からお見舞いを申し上げます。

 また、9月に発生した台風第15号など、日本各地が災害に見舞われています。

 犠牲になられた方々の御冥福をお祈りするとともに、被災された方々の一日も早い復旧・復興を念願いたします。

 私は、このたび、知事に当選し、県民の皆様の信託をいただくこととなりました。

 新しい時代「令和」の幕開けとともに、「いわて県民計画(2019〜2028)」が始まる重要な年に、県政を担当することとなり、その責任の重大さを改めて感じ、身の引き締まる思いがいたします。

 この度の知事選挙では、「いわて県民計画(2019〜2028)」の基本目標である「東日本大震災津波の経験に基づき、引き続き復興に取り組みながら、お互いに幸福を守り育てる希望郷いわて」を繰り返し紹介し、計画の推進と、いくつかの新たな政策を選挙公約に掲げて、県内全市町村、各地域を回り、多くの県民の皆様と直接接し、様々な課題や要望を伺う機会もありました。

 復興を成し遂げ、地域振興を推進し、岩手の未来を切り拓くべく、全身全霊を尽くして参りますので、県議会議員の皆様並びに県民の皆様の御支援と御協力をよろしくお願い申し上げます。

2 これまでの県政運営

 本県ではこれまで、東日本大震災津波からの復旧・復興に向け、県民一丸となり、最優先で取り組んで参りました。

 特に、県と市町村が連携し、国の制度では補い切れない支援策の創設に取り組み、また、必要に応じて国に働きかけ、新たな仕組みによる土地収用手続の迅速化など、県と市町村、国が力を合わせ、被災地の人々の暮らしや仕事を起点とした復興を進めて参りました。

 道路の整備が大きく進み、東北横断自動車道釜石・花巻間が全線開通して三陸沿岸道路につながり、沿岸と内陸が初めて高速交通体系で結ばれました。

 復興まちづくり事業は9割が完了し、県立病院や公立学校、警察施設は全て再建しました。

 被災者の医療費負担金や介護・福祉利用料の免除措置については、国による財政支援終了後も、県が財政支援を継続して参りました。

 漁港や農地の復旧も完了し、また、商店街の再生や、商店の仮設から本設への移行も進みました。

 さらに、釜石港への岩手初のガントリークレーン整備や、宮古・室蘭間における岩手初のフェリー航路の開設、三陸鉄道「リアス線」の開通などが実現しました。

 平成28年台風第10号災害からの復旧・復興に当たっても、被災市町村と連携し、県独自の補助金制度や自由度の高い交付金の創設など、スピード感を持ちながら支援に取り組み、事業所や観光施設などの復旧が完了しました。

 しかしながら、東日本大震災津波や平成28年台風第10号災害からの復旧・復興はいまだ途中であり、諸課題に直面する方々に寄り添い、後に述べるような施策を力強く進める必要があります。

 「いわて県民計画」や「岩手県ふるさと振興総合戦略」に基づく取組は、自動車や半導体関連産業を中心とした産業集積の進展や、いわて花巻空港における台北、上海国際定期便の開設、「金色の風」や「銀河のしずく」に代表される農林水産物のブランド化の進展など、多くの成果を挙げています。

 医療・介護・福祉分野においては、人口10万人当たりの病院勤務医師数が増加し、また、地域包括ケアシステム構築に向けた取組も進みました。

 さらに、県立療育センターと県立盛岡となん支援学校を、矢巾町の岩手医科大学附属病院の敷地内に移転新築し、障がいのある児童生徒一人ひとりに応じた総合的な支援体制を強化しました。

 文化・スポーツ分野においては、本県の才能豊かな人材が国内外で活躍しています。

 平成28年、2016年に開催した「希望郷いわて国体」、「希望郷いわて大会」は、県と市町村が一体となり、全国に感謝を伝え、感動を広げ、大成功をおさめました。

 そして、県内において、また、県外との間で、「希望」を共有することができました。

 全国的な東京一極集中の趨勢は、むしろ加速していますが、岩手県内で働き、暮らし、子育てをする環境には、一定の進展がありました。

3 今後4年間の県政運営の基本的な考え方

(「いわて県民計画(2019〜2028)」の推進)

 このような成果を土台とし、「いわて県民計画(2019〜2028)」のもと、県民一人ひとりの視点から県政を進めるやり方をより徹底し、人々の暮らしや仕事を起点とする政策を展開して、岩手が、全ての岩手県民と、岩手に関わる全ての人を幸福にできる県になることを目指したいと思います。

 オール岩手で、「いわて県民計画(2019〜2028)」を力強く推進し、「希望郷いわて」を新たなステージへと進めていきましょう。

 

(「全国植樹祭」等の全国的・国際的な事業の展開)

 今後4年間は、本県において、全国的・国際的な事業が連続する期間となります。

 今年度、現在行われている「ラグビーワールドカップ2019™」日本大会において、岩手県・釜石市は、「ラグビーのまち」であるとともに、東日本大震災津波の被災地で唯一の開催都市として注目されています。

 9月25日に行われた、フィジー対ウルグアイ戦では、選手や観客、来賓の方による黙とうが行われ、国内外から訪れた1万4千人を超える方々が東日本大震災津波に思いを致し、復興に思いを寄せてくださいました。

 10月13日には、ナミビア対カナダ戦が行われます。

 地元の方々や県民、国内外から訪れる方々が世界トップレベルの試合に大きな声援を送り、復興の大地に感動と共感の広がりを重ねることが期待されます。

 来月、11月には、「第36回伝統的工芸品月間国民会議全国大会」(KOUGEI EXPO IN IWATE)が開催されます。

 この大会を通じて、本県の歴史や風土に育まれた伝統的工芸品、南部鉄器、岩谷堂箪笥、秀衡塗、浄法寺塗及びその他の岩手の伝統工芸品の魅力を国内外に発信します。

 令和2年、2020年に「復興五輪」として開催される「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」に向けて、県内の市町村がホストタウンや、復興「ありがとう」ホストタウンに登録され、様々な交流が生まれています。

 岩手県としても、大会の成功を通じて、復興とスポーツ振興、共生社会の形成が進展するよう取り組んで参ります。

 東日本大震災津波の発災から10年の、節目の年となる令和3年、2021年には、「観光の力」による東北の活性化に向け、東北6県やJR東日本などが連携し、「東北デスティネーションキャンペーン」を実施します。

 この年は、一戸町の「御所野遺跡」を含む「北海道・北東北の縄文遺跡群」の世界遺産登録の年となるべき年であり、また、「平泉の文化遺産」が世界遺産登録から10年を迎える年でもあります。

 「橋野鉄鉱山」と「早池峰神楽」、「吉浜のスネカ」など無形文化遺産も合わせ、「世界遺産の國いわて」であることなどをアピールしながら、更なる観光振興を図って参ります。

 令和4年、2022年には、48年ぶりに、本県において「全国植樹祭」が開催されます。

 「全国植樹祭」は、天皇皇后両陛下をお迎えして行われる国民的行事です。

 林業の持続的で健全な発展とともに、森林の多面的機能に対する県民理解の醸成を図り、本県の豊かな森林環境を次の世代に引き継いで参ります。

 このように、岩手にとって歴史的とも言うべき、全国的・国際的な事業が相次ぐ機会を生かしながら、「いわて県民計画(2019〜2028)」の推進を確かなものにして参ります。

 

(東日本大震災津波からの復旧・復興の推進)

 東日本大震災津波からの復興は、引き続き、岩手県の最重要課題です。

 「東日本大震災津波からの復興に向けた基本方針」を引き継ぎ、「一人ひとりの幸福追求権を保障すること」、「犠牲者の故郷への思いを継承すること」を原則として、復興を進めて参ります。

 「いのちを守り 海と大地と共に生きる ふるさと岩手・三陸の創造」の実現を目指し、社会資本などの整備完了に向け、強力に取組を推進します。

 また、中長期的な観点に立ち、被災者一人ひとりに寄り添った支援や地域の活性化などに引き続き取り組み、復興とその先の三陸地域の振興を図ります。

 「三陸防災復興プロジェクト2019」では、多様な主体とのつながりを復興の力とする「開かれた復興」の意義、そして、オール岩手で進める岩手の復興が、世界、そして、未来につながっていく姿を確認できました。

 引き続き、震災の事実を踏まえた教訓や復興の姿を発信して参ります。

 

(平成28年台風第10号災害からの復旧・復興の推進)

 平成28年台風第10号災害からの復旧・復興については、被害が最も大きかった岩泉町において、災害公営住宅への入居が進んでいます。

 また、全ての公共土木施設の災害復旧工事に着手し、完成に向け、取組を進めています。

 引き続き、被災市町と一体となって復旧・復興に取り組み、さらに、将来を見据えた地域振興に取り組んで参ります。

 

(ILCの実現)

 本年3月、政府は初めて、ILC・国際リニアコライダーへの関心を表明しました。

 現在、国際間において、政府レベル、研究者レベルで関係国が一体となった議論が進められる中、ILCの実現に向けて、国内及び国外において、重要な局面を迎えています。

 国内外の動向に臨機に対応し、また、国等への要望や国民理解の増進に関する活動をはじめ、関係団体と連携を密にしながら、ILCの実現に向けて、引き続き全力で取り組んで参ります。

 

(4広域振興圏、県北・沿岸圏域等の振興)

 持続可能な地域社会を実現するためには、より住民に身近な市町村との連携を推進し、県央、県南、沿岸、県北の4広域振興圏の振興を一層進めることが重要です。

 特に、人口減少が進行している県北・沿岸圏域においては、優れた地域資源や、新たな交通ネットワークなどの社会資本を最大限に生かし、東日本大震災津波からの復興とその先の振興も見据えながら、地域経済の基盤強化を図ります。

 さらに、広域振興圏や県の区域を越えた広域的な連携を進め、「北上川流域」や「三陸」、県北圏域をはじめとする「北いわて」などの地域について、長期的な視点のもと、社会経済環境の変化に的確に対応し、それぞれの地域の強み、特徴を生かして、産業振興と地域課題の解決が両立したゾーンの実現に取り組みます。

 また、過疎・山村などの条件不利地域についても、その振興を図って参ります。

 

(「ふるさと振興」の展開)

 東京圏への人口の過度の集中を是正するため、国を挙げて、いわゆる「地方創生」に取り組んできましたが、依然として、東京一極集中は是正されていません。

 国では現在、情報通信技術「ICT」をはじめとする科学技術を活用した超スマート社会「Society5.0」の実現や、地方移住の裾野拡大に向けた「関係人口」の創出、2015年に国連サミットで採択された持続可能な開発目標「SDGs」など新たな視点を盛り込んだ第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の策定を進めています。

 本県においても、県議会、県民、有識者などの御意見をいただき、国や市町村の取組と連携しながら、次期「ふるさと振興総合戦略」の策定に取り組みます。

 岩手の強みを生かした、質の高い雇用の確保や、結婚、妊娠・出産、子育て期にわたる切れ目のない支援、若者・女性の活躍支援、文化・スポーツ振興など、岩手の魅力を高め、岩手への新たな人の流れを生み出す取組や、岩手との交流やつながりを拡大する取組を力強く推進して参ります。

 

(行政経営)

 岩手県を取り巻く社会経済情勢が大きく変化し、県民ニーズが多様化する中、安定的・持続的に県民サービスを提供していくためには、質の高い行政経営を進めることが重要です。

 県民をはじめ、市町村、関係団体、企業、NPOなど多様な主体との連携のもと、地域意識に根ざした県民本位の行政経営を推進します。

 特に、人口減少や少子高齢化が進行する中、基礎自治体である市町村が、持続的に行政サービスを提供できるよう、県による事務の補完や、県・市町村の二層制を超えた柔軟な支援を行うなど、市町村の実情に応じた連携・協働を一層推進します。

 また、高い専門性と県民視点を兼ね備えた職員の確保・育成や、ICTの活用などによる効率的な業務遂行、ワーク・ライフ・バランスに配慮した職場環境づくりに取り組みます。

 さらに、PDCAサイクルの徹底による施策の効果的かつ効率的な実施、内部統制によるリスクマネジメントの強化、透明性が高く安定した財政運営に取り組みます。

 「いわて県民計画(2019〜2028)」に基づき、復興を成し遂げ、地域振興を推進するため、中期財政見通しのもと、安定した財政基盤を確保していくことが重要です。

 公債費は、依然として高水準にありますが、平成30年度決算において実質公債費比率は18.0%を下回り、公債費負担適正化計画の目標を2年前倒しで達成しました。

 持続可能な財政構造の構築に向け、引き続き、あらゆる手法による歳入確保に努めるとともに、事業効果が高い施策への「選択と集中」を進めます。

4 「いわて県民計画(2019〜2028)」に基づく主要な施策

 このような「考え方」に基づき「いわて県民計画(2019〜2028)」を推進する、今後4年間の主要な施策について申し上げます。

 

(復興の取組)

 東日本大震災津波からの復興の推進についてでありますが、「安全の確保」、「暮らしの再建」、「なりわいの再生」、「未来のための伝承・発信」の4本の柱のもと、復興のゴールとその先の地域振興も見据えながら取組を進めて参ります。

 まず、「安全の確保」では、災害に強く安全で安心な暮らしを支えるため、水門・陸こう自動閉鎖システムを備えた防潮堤などの津波防災施設の整備を推進します。

 復興道路である三陸沿岸道路や宮古盛岡横断道路の整備区間は、「復興・創生期間」内の全線開通が決まりました。

 新たな高速交通ネットワークが生み出すストック効果を最大限に活用した産業振興、地域振興に引き続き取り組みます。

 原子力発電所事故に起因する放射線に対する県民の不安解消に向け、放射線量、食品の安全性などの情報発信に、引き続き取り組みます。

 また、市町村などと連携し、引き続き、東京電力ホールディングス株式会社に対する交渉を行い、実態に即した十分な賠償の実現を図ります。

 「暮らしの再建」では、被災者一人ひとりの生活の安定と住環境の再建に向けて、持ち家再建や、新たなコミュニティの形成などの支援のほか、様々なニーズに対する相談支援など、被災者一人ひとりに寄り添った支援を行います。

 被災者の健康面、経済面での不安を軽減し、医療や介護サービス等を受ける機会を確保するため、国民健康保険等の一部負担金免除を来年も継続します。

 また、「岩手県こころのケアセンター」における専門的な相談対応や、生活支援相談員による見守り活動などを行い、こころと体のケアに中長期的に取り組みます。

 「いわての学び希望基金」などを活用した進学・通学支援や、スクールカウンセラーの派遣など、被災した児童生徒の学びの支援とともに、「いわてこどもケアセンター」によるサポートに取り組みます。

 また、県民の学びの場となる「県立野外活動センター」の移転復旧を進めます。

 「なりわいの再生」では、地域に根ざした水産業を振興するため、経営体の育成や、地域漁業をリードする人材の育成、水産物の高付加価値化、漁港施設などの整備を推進します。

 原木しいたけの産地再生を図るため、引き続き、出荷制限解除に向けた取組を進めながら、生産規模拡大に対する支援、新規参入者の確保に取り組みます。

 中小企業などの事業再開や経営力向上に向けた取組の支援とともに、新たなまちづくりと連動した商店街などのにぎわいの創出、地域の特性を生かした産業の振興に取り組みます。

 また、三陸鉄道と三陸の食、自然、体験を組み合わせた宿泊旅行商品、震災学習などをテーマとした高付加価値型の旅行商品の造成・販売を促進し、「観光で稼ぐ三陸」のモデルを構築します。

 そして、「未来のための伝承・発信」では、「ラグビーワールドカップ2019™」釜石開催などの機会や、「東日本大震災津波伝承館」における普及事業に加え、「いわての復興教育」や、復興フォーラム、「いわて震災津波アーカイブ〜希望〜」を通じて、震災の事実を踏まえた教訓や復旧・復興の取組を後世に伝えて参ります。

 

(10の政策分野に基づく取組)

 復興の取組とともに、暮らしや仕事などに着目した10の政策分野のもと、「いわて幸福関連指標」の向上を図り、一人ひとりの幸福を守り育てる取組を展開して参ります。

 まず、「健康・余暇」分野では、「健康寿命が長く、いきいきと暮らすことができ、また、自分らしく自由な時間を楽しむことができる岩手」の実現を目指します。

 官民が一体となった脳卒中予防や、健康増進対策、がん検診、特定健康診査の受診勧奨、こころの健康づくりを促進します。

 奨学金による医師の養成や計画的な配置調整、「医師確保計画」の策定に加え、「地域医療基本法」の提言や他県と連携した取組を推進し、さらに実効性の高い医師確保対策を進めます。

 また、看護職員の県内への定着、復職を支援するなど、医療従事者の確保に取り組みます。

 共生社会の更なる推進に向け、地域包括ケアシステムの構築・促進、ヘルプマークの普及やユニバーサルデザインの推進を図り、ひとにやさしいまちづくりに取り組みます。

 また、県民が身近な地域で、文化芸術やスポーツを楽しむ機会の充実を図ります。

 「家族・子育て」分野では、「家族の形に応じたつながりや支え合いが育まれ、また、安心して子育てをすることができる岩手」の実現を目指します。

 “いきいき岩手”結婚サポートセンターを中心とした結婚支援や、周産期医療体制の充実、特定不妊治療、男性不妊治療への助成に取り組みます。

 また、保育所の利用定員の拡大や病児保育などの多様な保育サービスの充実を図ります。

 さらに、現物給付による子どもの医療費助成の対象について、中学生までの拡大に向け、市町村と協議を進めて参ります。

 生まれ育った環境に左右されることなく、子どもが将来に希望を持てるよう、「岩手県子どもの生活実態調査」の結果を踏まえた子どもの貧困対策や、児童虐待のない地域づくりを推進します。

 障がい児とその家族の多様なニーズに対応した療育が受けられるよう、地域療育ネットワークの強化など、障がい児の療育支援体制の充実を図ります。

 「教育」分野では、「学びや人づくりによって、将来に向かって可能性を伸ばし、自分の夢を実現できる岩手」の実現を目指します。

 児童生徒の実態に応じた授業改善や家庭学習の充実による「確かな学力」の育成や、多様なニーズに応じた特別支援教育の実施とともに、いじめや不登校の未然防止、適切な対応に取り組みます。

 生徒本位の有意義なスポーツ・文化活動の実践に向けた調査・研究や、部活動指導員の配置など適切な部活動の推進に取り組みます。

 また、私立学校の特色ある教育活動の支援とともに、キャリア教育の推進や、国際交流、文化・スポーツ、産業など様々な分野における人づくりを推進します。

 さらに、ICT環境の整備や冷房設備の設置など新たなニーズ等に対応した学習環境の整備に取り組みます。

 「居住環境・コミュニティ」分野では、「不便を感じないで日常生活を送ることができ、また、人や地域の結び付きの中で、助け合って暮らすことができる岩手」の実現を目指します。

 衛生的で快適な生活環境の保全のため、市町村等が行う水道事業の広域連携の取組の促進や、持続可能な地域公共交通ネットワークの構築、地域コミュニティづくりを推進します。

 また、岩手の多彩な魅力を発信し、岩手ファンの拡大を図り、U・Iターンを促進します。

 さらに、市町村や国際交流協会等と連携し、外国人が暮らしやすい環境づくりを推進するため、言葉の壁や生活上の不便の解消、文化や習慣などの多様性の理解促進に取り組みます。

 「安全」分野では、「災害をはじめとした様々なリスクへの備えがあり、事故や犯罪が少なく、安全で、安心を実感することができる岩手」の実現を目指します。

 自助・共助・公助による防災体制づくりに向け、県民の防災意識の向上、消防団の強化や消防団員の加入促進などを通じた地域防災体制の強化、防災・減災体制の整備に取り組みます。

 また、安全・安心なまちづくりに向け、治安基盤の強化とともに、防犯意識の高揚、高齢者と子どもを重点とした交通安全対策、配偶者等に対する暴力の根絶、消費者教育の推進に取り組みます。

 「仕事・収入」分野では、「農林水産業やものづくり産業などの活力ある産業のもとで、安定した雇用が確保され、また、やりがいと生活を支える所得が得られる仕事につくことができる岩手」の実現を目指します。

 今後の復興需要の減少も見据え、地域経済の活性化を図るため、国際競争力の高いものづくり産業や、社会資本の整備を担う建設業、地域の特性や資源を最大限に生かした地場産業や観光産業などについて、経営力や生産性の向上を図って参ります。

 生産年齢人口の減少や人口の社会減が続く中、将来の岩手を担う若者や女性などの地元定着を一層促進するため、「いわてで働こう推進協議会」を中心に、処遇改善など雇用・労働環境の整備を推進します。

 また、県内企業の認知度を高める情報発信を一層強化し、県内就業の促進やU・Iターンによる人材確保に取り組みます。

 地域の農林水産業の核となる経営体を育成するため、生産活動の効率化や経営力の向上を図ります。

 効率的で高収益な農林水産業を実現するため、生産基盤の整備を着実に進め、生産性・市場性の高い産地づくりを推進します。

 また、農林水産物の高付加価値化と販路の開拓・拡大に向け、6次産業化による特産品の開発や、トップセールス等による戦略的な輸出促進に取り組みます。

 「歴史・文化」分野では、「豊かな歴史や文化を受け継ぎ、愛着や誇りを育んでいる岩手」の実現を目指します。

 世界遺産の保存と活用に加え、本県出身の偉人や様々な文化財、ユネスコ無形文化遺産の「早池峰神楽」や「吉浜のスネカ」をはじめとした多様な民俗芸能など、文化資源の魅力発信に取り組みます。

 「自然環境」分野では、「一人ひとりが恵まれた自然環境を守り、自然の豊かさとともに暮らすことができる岩手」の実現を目指します。

 本県の優れた自然や大気・水環境の保全とともに、環境負荷の低減に向け、プラスチックごみなどの海岸漂着物対策や、廃棄物の3Rを推進します。

 また、全国トップクラスのポテンシャルを有する再生可能エネルギーの導入の促進や、簗川発電所の建設、稲庭高原風力発電所の再開発に取り組み、温室効果ガスの排出削減対策を推進します。

 「社会基盤」分野では、「防災対策や産業振興など幸福の追求を支える社会基盤が整っている岩手」の実現を目指します。

 県民生活の向上を図るため、ICT利活用の重要な基盤である第5世代移動通信システム「5G」の整備を促進します。

 「岩手の強靱化」に向け、国の「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」などの動向も踏まえながら、幹線道路や緊急輸送道路等の整備、河川改修や砂防施設、農業水利施設、治山施設の整備などのハード対策に加え、災害関連情報の充実強化などのソフト施策を推進します。

 また、防災拠点建築物である県・市町村の庁舎や、学校などの耐震化を進めます。

 最後に、「参画」分野では、「男女共同参画や若者・女性、高齢者、障がい者などの活躍、幅広い市民活動や県民運動など幸福の追求を支える仕組みが整っている岩手」の実現を目指します。

 県民参画と協働による地域社会の形成に向け、多様な主体の参画と協働を図る指針を策定し、県民運動の更なる強化や、地域の力を引き出す取組を一層推進します。

 男女平等や多様な性が理解・尊重されるよう、教育・学習機会の充実に取り組みます。

 「いわて女性活躍企業等認定制度」やイクボス等の普及による、女性が働きやすく活躍できる職場環境づくりや、「いわてネクストジェネレーションフォーラム」の開催、「いわて若者カフェ」の運営などによる、若者の交流・活躍の促進に取り組みます。

 さらに、企業や大学等の教育機関と連携し、女性や若者の起業を促進します。

 また、高齢者の地域活動や社会貢献活動への参加、障がい者の社会参加、職業能力開発を支援します。

 

(「新しい時代を切り拓くプロジェクト」の推進)

 新しい時代を切り拓いていくためには、長期的な視点に立って、岩手らしさを生かした、先導的な「プロジェクト」を戦略的、積極的に推進することが重要です。

 ILCを契機とした、知と技術が集積された世界最先端の国際研究拠点形成の支援や、多文化共生社会の形成を図る「ILCプロジェクト」を推進します。

 北上川流域における産業集積や恵まれた生活環境などの強みを生かし、働きやすく、暮らしやすい新しい時代の先行モデルを創出する「北上川バレープロジェクト」を推進します。

 「三陸防災復興プロジェクト2019」の成果を踏まえ、東日本大震災津波の教訓や復興の姿の伝承・発信、ジオパークや世界に誇れる食など三陸地域の多様な魅力の発信・PR、また、豊かな自然を生かしたスポーツアクティビティの創出などに取り組み、三陸地域の持続的な発展を図る「三陸防災復興ゾーンプロジェクト」を推進します。

 人口減少と高齢化が全県に先行して進行する「北いわて」では、関係市町村をはじめ、全国の自治体、企業等で構成される「プラチナ構想ネットワーク」や、県立大学、研究機関などの高度な知見を活用し、食や再生可能エネルギーなど、そのポテンシャルを最大限に生かして地域課題の解決を図る「北いわて産業・社会革新ゾーンプロジェクト」を推進します。

 また、活力ある小集落やICT等の活用による収益性の高い農林水産業の実現、医療データや健診データを活用した健康づくり、児童生徒一人ひとりに応じた教育環境の構築を図るプロジェクトを推進します。

 さらに、各地域の特色を生かした魅力ある文化芸術・スポーツのまちづくりや、低炭素で持続可能な社会の実現、本県の地域や人々と多様に関わる「関係人口」の拡大を図るプロジェクトを推進します。

5 むすび

 近年の技術革新の流れの中で、政府や経済界が、その実現を提唱している「Society5.0」で描かれているような技術は、時間や地域の制約を超え、地方の可能性を広げるものであり、特に、広大な県土を有し、農林水産業や、ものづくり産業、観光産業まで幅広い産業を展開し、人々の暮らしや仕事の現場に広がりがある岩手でこそ、活用や実装の可能性が大きく、真価の発揮が期待されます。

 世界遺産「橋野鉄鉱山」は、我が国の近代化をけん引した、日本最古の洋式高炉跡であり、幕末日本における岩手の先進性を示す象徴です。

 現在、その実現に向け、取組を進めているILCは、岩手への世界最先端の知と技術の集積を推進するものです。

 岩手には、最先端の技術を導入し、産業の発展や生活の向上を図り、人々の幸福度を高めていく、そのような歴史や風土があります。

 岩手の先人、宮沢賢治は、「われわれはどんな方法でわれわれに必要な科学をわれわれのものにできるか」という言葉を残しています。

 賢治は、ふるさとに思いをよせ、地域に根ざした科学や技術の活用に努め、人々の幸福を願いました。

 今後の4年間は、「いわて県民計画(2019〜2028)」の最初の4年間であり、それは、本県において、全国的・国際的な事業が相次ぐ4年間であり、また、地方における科学技術の可能性が大きく広がる4年間でもあります。

 これからの4年間、「東日本大震災津波の経験に基づき、引き続き復興に取り組みながら、お互いに幸福を守り育てる希望郷いわて」を目指し、県民みんなの力を合わせ、復興と地域振興に全力を注ぎ、未来を切り拓いて参りましょう。

 ここにおられる議員の皆様並びに県民の皆様の深い御理解と更なる御協力を心からお願い申し上げ、私の所信表明を終わります。

添付ファイル

令和元年9月定例会知事演述全文

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