令和6年2月県議会定例会知事演述
1 はじめに
本日ここに第4回県議会定例会が開会されるに当たり、今後の県政運営について、私の所信の一端を申し上げます。
はじめに、本年1月1日に発生した令和6年能登半島地震で犠牲になられた方々の御冥福をお祈りいたします。また、被害に遭われた皆様に心からお見舞い申し上げます。
東日本大震災津波を経験し、全国・世界から支援をいただきながら復旧・復興を進めてきた本県として、被災地に寄り添い、DMATや保健師、建築職の派遣に加え、復興計画の策定支援など、現地のニーズに応じて支援して参ります。
近年、交通と情報通信技術の発達によって、世界と交流することが容易になりました。生成AIの登場など、情報通信技術の発達は加速しています。
地球規模の気候変動が一因と考えられる災害の激甚化・頻発化や異常な気象が岩手にも及んでいます。
ロシアのウクライナ侵攻による原油高や食料問題が、円安と相まって、我が国に深刻な物価高騰をもたらしています。
原油価格・物価高騰は、県民の「暮らし」と、中小企業者や農林漁業者等の「仕事」に、大きな影響を与えています。
県は、これまでLPガス使用者や低所得世帯及び子育て世帯をはじめとした生活者支援、中小企業者や運輸・交通事業者、農林漁業者、介護・福祉・医療施設等の事業者支援を展開して参りました。また、全国知事会を通じるなどして、強力な経済対策を講じるよう国に要請して参りました。
今後も県民の「暮らし」と「仕事」を守るため、県民生活や地域経済への影響を注視しながら、県民一人ひとりに寄り添った支援策を機動的に講じることが重要です。
昨年12月、国立社会保障・人口問題研究所により、令和2年国勢調査をもとにした「日本の地域別将来推計人口」が公表されました。本県の2045年の推計人口は、前回、平成30年の推計と比べ、31,398人減少し、853,120人となっています。
このような中、近年の本県の人口移動は、コロナ禍による地方志向により、社会減の減少幅が縮小したものの、令和4年以降、再び拡大に転じています。また、コロナ禍のもとで婚姻数が急減し、出生数も大きく減少しました。
このため、県では、これまでの人口減少対策に加え、今年度、市町村と連携し、第2子以降の3歳未満児を対象とした所得制限のない保育料無償化や在宅育児支援金の創設など、全国トップレベルの子ども・子育て支援策をスタートしました。
また、社会経済面の対策として、中小企業者等の賃上げ促進に向けた支援策の創設や、生活困窮世帯に対する灯油購入費等の支援などの施策を講じてきました。
先般公表された推計人口は、追加的な対策を講じなかった場合の推計値であり、今後これを改善していくために、人口減少の背景にある「生きにくさ」を「生きやすさ」に変えていく更なる施策の展開が必要です。
2 いわて県民計画に基づく政策の推進
(4つの重点事項の推進)
政策推進プランでは、「自然減・社会減対策」を主軸に、自然に根ざした「GX、グリーン・トランスフォーメーションの推進」と情報を生かす「DX、デジタル・トランスフォーメーションの推進」を両翼とし、さらに「安心・安全な地域づくり」を基盤とする4つの重点事項を掲げています。
昨年、ニューヨーク・タイムズ紙の「2023年に行くべき52か所」で、盛岡市が2番目に選ばれました。盛岡市を訪れた観光客がコロナ禍前を上回り、欧米からの外国人観光客が増加しています。
この機を捉え、先般改訂した「第2期岩手県ふるさと振興総合戦略」では、国の「デジタル田園都市国家構想総合戦略」を踏まえ、積極的にデジタル技術を活用するほか、交流人口・関係人口を拡大する方向性を打ち出しています。
令和6年度は、政策推進プランとふるさと振興総合戦略をオール岩手で強力に推進し、結婚・子育てなどのライフステージに応じた支援と、本県への新たな人の流れの創出を進めて参ります。
人口減少問題をはじめ、「いわて県民計画(2019〜2028)」に掲げる施策を推進するに当たっては、県と市町村の連携が重要です。
県と市町村が構築してきた重層的な連携体制を生かし、地域の実情や課題に応じた施策を一層進めて参ります。
また、少子高齢化が進む市町村が、個性や特色を生かした地域づくりを進めるため、県は広域的な視点に立ち、必要な支援を機動的に行います。
特に、限られた行財政資源の中で、多様化・複雑化する行政需要に対応している小規模町村に対しては、人口減少対策等を強力に推進できるよう、柔軟に対応できる伴走型の支援体制を構築しながら、新たな地方自治の在り方を見出して参ります。
(3つのゾーンプロジェクト)
広大な県土を有する岩手において、長期的な視点に立って、地域の資源やポテンシャルを最大限に生かすため、3つのゾーンプロジェクトを更に推進します。
北上川流域では、自動車や半導体関連産業、医療機器等関連産業の集積、企業の設備投資や生産拡大により、各産業が成長し、新たな雇用が創出されています。
また、産業分野におけるDXの進展に加え、デマンド型乗り合いバスやモバイルクリニックの取組など、生活分野におけるDXの活用も進んでいます。
このような北上川流域の強みや特徴を生かし、働きやすく、暮らしやすい地域としての発展を促すため、一層の産業振興と生活環境の充実を進めます。
また、北上川流域の産業や地域の魅力の発信を強化し、高度技術やデジタル人材の育成を図り、新しい時代を切り拓く先行モデルとして、その成果を全県に波及させます。
三陸地域においては、復興事業により、まちづくりや交通ネットワークの形成が進み、港湾機能などを生かした地域産業が発展しています。
また、震災学習を中心とした教育旅行や、復興の絆を生かした「さんりく音楽祭」などの文化・スポーツ分野における交流等により、三陸地域への関心は持続的なものとなっています。
さらに、昨年12月に再認定された「三陸ジオパーク」、本年4月に開業40周年を迎える三陸鉄道や豊かな「食」など、世界有数の地域資源の活用により、交流人口が更に拡大し、地域経済に好循環をもたらすことが期待されます。
「国内外とつながる三陸」として、様々な地域や主体と連携しながら、地域産業の更なる振興と交流の活性化により、持続可能な三陸地域を創造します。
北いわてにおいては、「北いわて産業・社会革新推進コンソーシアム」のもと、産学官連携による先端技術を活用した地域振興が進んでいます。
また、地域が直面する課題解決に向け、東京大学を中心とする「COI-NEXT」と連携し、林地残材を活用したバイオ炭の製造や、農地への炭素固定によるJ-クレジットの創出などを進めています。
さらに、高校生を対象とした脱炭素・未来ワークショップの開催など、地域の未来を担う人材育成が進められています。
このように多様な主体と連携しながら、北いわてのポテンシャルと新技術を生かしたイノベーション創出に取り組み、持続的に発展する地域づくりを推進します。
(ILCの推進)
ILCの実現に向けては、国内外の研究者により、国際協働による研究開発や政府間協議の環境づくりが進められています。
米国では、今後10年の素粒子物理学の方向性を示す報告書に、米国が貢献するプロジェクトの選択肢として、ILCが具体的な予算規模とともに示されました。
昨年は、盛岡市でILCに関する国際ワークショップが開催されたほか、県内外の関連団体により多様な理解促進活動が展開されています。
日本誘致には、こうした取組と併せて、ILCの意義を広く発信し、国民的な機運を盛り上げていくことが更に重要です。
県は、県内外の関係団体とともに、国民的な機運を醸成し、日本誘致に向けた大きな流れを作り出しながら、国家プロジェクトとして誘致を推進するよう、国に強く働きかけて参ります。
また、受入環境の整備や加速器関連産業への参入促進などにも、全力で取り組んで参ります。
3 令和6年度の主要施策の概要
以下、令和6年度の具体的な施策について申し上げます。
⑴ 東日本大震災津波からの復旧・復興の推進
はじめに、東日本大震災津波からの復旧・復興です。
東日本大震災津波から13年を迎えようとしています。
県は、復興を最重要課題と位置付け、「いのちを守り 海と大地と共に生きる ふるさと岩手・三陸の創造」に、県民一丸となって取り組んできました。
この間、全国や海外から多くの御支援をいただき、国内外との絆に支えられてきました。
改めて、被災された方々、御支援いただいた皆様の御尽力に敬意を表し、感謝申し上げます。
これまでに、復興道路・復興支援道路・復興関連道路が完成し、災害に強い新たな道路ネットワークが構築されました。また、防潮堤などの津波防災施設を整備し、その多くが完成しました。
一方、被災者一人ひとりの状況に応じたきめ細かい支援や、なりわいの再生に、中長期的に取り組んでいく必要があります。
また、「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震」に備え、関係機関と連携して、防災・減災対策を進める必要があります。
これまでの成果と課題を踏まえ、今後も「誰一人として取り残さない」という理念のもと、復興推進プランに掲げる4本の柱に基づき、「三陸のビルド・バック・ベター」、より良い復興を進めて参ります。
(安全の確保)
「安全の確保」として、津波防災施設の整備や整備済みの社会資本の適切な維持管理を行います。
また、移転元地などの利活用を支援します。
本県最大クラスの津波被害想定を踏まえ、沿岸市町村が行う避難対策や自主防災組織の育成・活性化、自動車避難の実効性の検証など、犠牲者ゼロを目指す津波避難対策を支援します。
災害医療に携わる人材を育成します。また、「いわて災害医療支援ネットワーク」の体制を強化します。
災害マネジメントサイクルを推進するため、事前復興まちづくり及び災害ケースマネジメントに係る、市町村の取組を促進します。
ALPS処理水の処分への対応を含め、原子力発電所事故に起因する放射線影響対策を実施します。
(暮らしの再建)
「暮らしの再建」として、「いわて被災者支援センター」において、市町村や関係機関と連携し、生活・経済面等の多様な課題を抱える被災者一人ひとりに寄り添った支援を行います。
地域コミュニティの形成・活動の定着に向け、コーディネーターを配置し、市町村を支援します。
被災者の見守りのため、相談員等を継続して配置します。
「こころのケアセンター」において心のケア等の取組を継続します。
郷土に誇りや愛着を持ち、岩手の復興・発展を支える人材や、災害発生時に主体的に行動する人材を育成するため、地域や関係機関・団体と連携し、「いわての復興教育」を推進します。
(なりわいの再生)
「なりわいの再生」として、「水産業リボーン宣言」に基づき、大型で強靱なサケ稚魚の生産等による資源回復や、水揚げ量が増加している資源の有効利用、新たな漁業・養殖業の導入・拡大を推進します。また、漁村の活性化や交流人口の拡大に向け、地域が取り組む海業のビジネスモデルづくりを支援します。
水産加工業の人材確保に向け、職場環境の改善やDXの取組を支援します。
原木しいたけの産地再生に向け、出荷制限の解除や販路拡大等に向けた支援を継続します。
事業者の経営安定化のため、商工指導団体等と連携し、経営・金融両面での支援を行います。
三陸固有の観光資源を生かした地域づくりを推進するため、「三陸DMOセンター」の機能強化を図り、市町村や観光事業者と一層連携します。
(未来のための伝承・発信)
「未来のための伝承・発信」として、東日本大震災津波伝承館を拠点とし、震災の事実・教訓の伝承を進めます。
また、県内の震災伝承施設等と連携し、周遊機会を創出します。
昨年11月に県立図書館に開設した「I-ルーム」を活用し、児童生徒やグループにおける震災・防災についての探究的な学び等を支援します。
⑵ 10の政策分野の推進
次に、10の政策分野についてです。
県民がお互いに支え合いながら、幸福を追求していくことができる地域社会を目指し、各分野の事業を進めて参ります。
(健康・余暇)
県民一人ひとりをケア、あるいはエンパワーし、「健康寿命が長く、いきいきと暮らすことができ、また、自分らしく自由な時間を楽しむことができる岩手」を目指します。
新たな岩手県保健医療計画に基づき、周産期医療や在宅医療をはじめ、関係機関と連携した、患者本位の良質で適切な医療を持続的かつ効果的に提供する体制を構築します。
健康寿命の延伸のため、生活習慣の改善や受診率の向上に取り組みます。
包括的な自殺対策プログラムを推進し、地域特性や一人ひとりの事情に応じた相談支援体制を充実・強化します。
医療提供体制の更なる充実のため、医師の確保と地域偏在の解消、看護職の県内定着を図ります。
多様化・複雑化する県民ニーズに対応するため、相談支援をはじめとする公的福祉の拠点整備を進めます。
地域包括ケアシステムの更なる深化・推進に向けた市町村の取組を支援します。
ヤングケアラーやダブルケアなどに対応する包括的な支援体制を構築するため、市町村における重層的支援体制整備事業を支援します。
生活困窮者の生活再建のため、市町村や関係団体等と連携し、地域の実情に応じた支援体制を強化します。
処遇や労働環境の改善を促進し、福祉・介護職の人材確保・育成に取り組みます。
デジタル技術も活用し、県民誰もが身近な場所で手軽に文化芸術を発表・鑑賞できる機会の充実を図ります。
新たな岩手県スポーツ推進計画に基づき、ライフステージに応じて楽しむ生涯スポーツや共生社会型スポーツの推進等、県民誰もがスポーツに取り組むことができる環境を整備します。
(家族・子育て)
結婚や出産、子育てなどのライフステージに応じた支援に加え、仕事と生活を両立できる環境づくりに向けた働き方改革を推進し、「安心して子育てをすることができる岩手」を目指します。
今年度からスタートしている全国トップレベルの子ども・子育て支援策の更なる充実に向け、少子化の要因分析に基づき、市町村が行う子どもの遊び場の整備や産後ケア等を利用する際のアクセス、一時預かりへの支援など、市町村の地域課題に応じた人口減少対策の支援に取り組みます。
市町村と連携し、第2子以降の3歳未満児に係る保育料の無償化、在宅育児支援を行います。また、仕事と子育ての両立支援などを行う企業等の拡大に継続して取り組みます。
「“いきいき岩手”結婚サポートセンター」のマッチング機能を強化し、交際から成婚までのフォローアップを充実させます。
不妊治療に係る交通費の一部を助成するなど、不妊に悩む夫婦を総合的に支援します。
市町村と連携し、保育の受け皿整備、保育人材の確保に取り組みます。
教育支援等の子どもの貧困対策に取り組みます。また、ひとり親家庭に対する包括的な相談支援を行います。
児童虐待を防止するため、児童相談所や地域における見守りの体制を強化します。
県内どの地域でも、多様なニーズに対応した質の高い療育が受けられるよう、地域療育ネットワーク機能の充実を支援します。
「医療的ケア児支援センター」を中心に、地域における医療的ケア児の支援体制の充実を図ります。
(教育)
知・徳・体のバランスの取れた生きる力の育成や、地域や様々な分野で活躍する人づくりを進め、「将来に向かって可能性を伸ばし、自分の夢を実現できる岩手」を目指します。
本県の教育施策の基本方針となる新たな「岩手県教育振興計画」を踏まえ、「一人ひとりの可能性を伸ばす学びの確保」や「郷土に誇りと愛着を持ち、岩手で世界で活躍する人材の育成」などの施策を講じます。
また、令和7年1月に本県で開催されるインターハイスピードスケート競技選手権大会では、参加選手が最高のパフォーマンスを発揮できるよう、万全の準備を進めます。
「いわて幼児教育センター」を中核として、就学前教育の充実を図ります。
中学校の休日部活動の地域移行を進めるため、学校や関係団体で構成される推進体制を構築します。
子どもたちが安心して学校生活を送ることができる環境を整え、いじめや不登校に適切に対応します。
県立高校の魅力化や、特色ある私学教育の充実に取り組みます。
世界と岩手をつなぐ人材の育成、デジタル人材の育成、ものづくり産業、農林水産業、建設業などの産業人材の確保・育成を進めます。
「いわて高等教育地域連携プラットフォーム」を中心として、リカレント教育を推進します。
トップアスリートの国内強化施設を活用し、スーパーキッズを育成します。また、パリ2024パラリンピック等に向け、パラアスリートの競技力向上に取り組み、競技環境を整備します。
文化芸術振興のため、人材育成やネットワークの形成、デジタル技術の活用を推進します。
(居住環境・コミュニティ)
県民が住まいの快適さや暮らしやすさを実感できる環境を整備するとともに、多様な主体が連携し、「地域のつながりを実感できる岩手」を目指します。
新たな地域公共交通計画のもと、持続可能な地域公共交通ネットワークの構築を推進します。また、ニューヨーク・タイムズ紙を契機とした交流人口・関係人口の拡大を移住・定住につなげていきます。
県営住宅のストックを活用した、お試し居住体験事業の内容を更に充実させます。
市町村と連携し、住宅の耐震化、若者・移住者の定住推進に向けた空き家の利活用を促進します。
訴求力の高い情報発信、移住希望者への就業体験や地域住民と交流する機会の提供を進め、県内企業への定着を促進します。
地域おこし協力隊のOB・OG等を核としたネットワークや市町村との連携により、地域おこし協力隊の受入拡大や、定着の促進に向けた支援等を総合的に実施し、本県への定住につなげます。
日本語教育の総合的な支援体制の構築など、外国人県民が暮らしやすい環境づくりに取り組みます。
「ハロウインターナショナルスクール安比ジャパン」との連携など、国際化、多文化共生を推進します。
本年8月に予定されているブラジル岩手県人会創立65周年記念式典への県からの出席等を通じて、本県と世界とのつながりの深化を図ります。
(安全)
災害をはじめとした様々なリスクに備え、犯罪や事故が起きにくい環境づくりを進め、「地域の安全や暮らしの安心を実感できる岩手」を目指します。
関係機関・団体とともに犯罪被害者を支援するため、犯罪被害者の権利保護を目的とする条例案を今議会に提出しております。
防災意識の向上や、地域コミュニティにおける住民同士が助け合える体制の強化、国・県・市町村・防災機関が連携した実効的な防災・減災体制の整備などを進めます。
先進的な試みとして、デジタル技術を活用した避難所運営の実証実験を実施します。
新興感染症の発生に備えるため、入院・外来の医療体制や検査体制などの整備に取り組みます。
鳥インフルエンザなどの発生を防ぐため、飼養衛生管理の徹底や病原体の侵入防止対策、豚熱ワクチン接種など家畜衛生対策を推進します。また、備蓄資機材の拡充や訓練を実施し、防疫対策を強化します。
特殊詐欺被害の防止啓発や地域安全マップの作成支援により、防犯意識の高揚を図ります。
輸入食品を含む県内流通食品の検査・指導により、食の安全・安心を確保します。
被害の多い若年者や高齢者を中心に、消費者被害の防止のための消費者教育の推進、相談対応の充実を図ります。
(仕事・収入)
一人ひとりの能力を発揮できる多様な雇用の確保を進め、「希望する仕事に就き、安心して働きながら仕事のやりがいを実感できる岩手」の実現を目指します。また、経済基盤の高度化や生産性の向上を図り、「必要な収入や所得を得られていると実感できる岩手」を目指します。
県民の「暮らし」と「仕事」を守るため、目下の危機である物価高騰対策を進めます。
商工業では、経営革新計画に基づいて生産性の向上を図り、適切かつ円滑な価格転嫁や賃上げに取り組む、中小企業・小規模事業者を支援します。
農林水産業では、生産性向上等を図るスマート技術の活用や、経営体質の強化に取り組む農林漁業者を支援します。
「いわてで働こう推進協議会」を核として、若者や女性などに魅力ある雇用・労働環境の構築、U・Iターンによる人材確保の推進を図ります。また、長時間労働の是正と、仕事と子育ての両立を図る家庭への支援を強化します。
関係団体と連携し、スタートアップ創出の場づくりや、継続的に起業家が生み出される仕組みの構築に向けた支援を強化します。
中小企業の経営継続に向け、商工指導団体、産業支援機関、金融機関等の関係機関と連携し、伴走型の支援を展開します。
デジタル技術人材や半導体関連人材の育成、技術の高度化支援を進め、ものづくりのグローバル拠点化を推進します。
消費者ニーズに応じた商品開発やECサイトの活用、メタバースなどのオンラインを活用したプロモーションの強化により、県産農林水産物、加工食品、伝統工芸品等の高付加価値化や販路の拡大を図ります。
中小企業等のGXやDXの取組を関係団体と連携して積極的に支援します。
DMOや市町村において、「いわて観光データ・マネジメント・プラットフォーム」の活用を進め、旅行者のニーズや動態分析を行い、観光DXの活用による観光地域づくりを推進します。
交流人口の拡大に向けて、JR東日本と連携し、本年3月まで開催している冬季観光キャンペーンや、10月から12月にかけて開催予定の秋季観光キャンペーンを実施します。また、いわて花巻空港開港60周年を契機としたプロモーションを展開します。
農林水産業をけん引する経営体の育成や、次代を担う新規就業者の確保・育成、農業法人等への雇用就農支援を行います。また、女性農林漁業者が働きやすい環境づくりに取り組みます。
食料・木材の安定供給に向け、海外依存度の高い麦・大豆の生産拡大や、主伐から再造林までの一貫作業などを進めます。また、農林水産業の生産基盤の着実な整備等を進めます。
環境負荷を低減する農業生産の推進や、スマート農業技術を活用した高収益園芸作物の生産性向上など、生産現場のイノベーションを進めます。
県北農業研究所を拠点とした「仮称・いわてグリーン農業アカデミー」の開講や収益性の高い果樹生産を支援する研究体制の整備に取り組みます。また、県北地域が栽培適地となる県オリジナル水稲品種の普及・定着を進めます。
農林水産物等の輸出拡大に向け、アジアや北米等をターゲットに、フェア開催やトップセールスなど、戦略的なプロモーションを展開します。
また、全国知事会等と連携し、農林水産物をはじめとした地方の持つ価値や魅力の発信に広域的に取り組みます。
農作物被害を防止するため、有害捕獲や里山の整備に加え、新たに市町村が実施するシカの集中捕獲等の特別対策を支援します。
(歴史・文化)
3つの世界遺産をはじめ、それぞれの地域の豊かな歴史・文化を守り継承し、「岩手や地域への誇りや愛着を実感できる岩手」を目指します。
本年、中尊寺金色堂建立900年を迎え、東京国立博物館において、特別展が開催されるなど、改めて平泉の文化遺産が全国・世界の注目を集めています。
「平泉世界遺産ガイダンスセンター」の魅力向上を図ります。
また、世界遺産の構成資産及び関連資産から成る「ひらいずみ遺産」を拠点とした文化観光を進めます。
「平泉」・「橋野鉄鉱山」・「御所野遺跡」の3つの世界遺産の連携により、一体的な価値や魅力の発信と周遊促進を図ります。
ユネスコ無形文化遺産の「早池峰神楽」をはじめとした、郷土色豊かな民俗芸能に触れる機会の創出や情報発信により、次代への継承を図ります。
(自然環境)
地球温暖化対策や良好な自然環境の保全などを進め、「恵まれた自然環境を守り、自然の豊かさとともに暮らすことができる岩手」を目指します。
温室効果ガスの削減目標達成に向けて、県民の理解増進を図ります。また、市町村や事業者の脱炭素に向けた取組を支援します。
J-クレジットの創出・活用、藻場の再生・造成を推進します。
過去最多となったツキノワグマによる人身被害を踏まえ、野生鳥獣と人間との共生を図るため、被害防止対策を進めます。
市町村の海洋再生可能エネルギー導入や、県内企業の関連産業への参入に向けた取組を支援します。
県有施設のZEB化や太陽光発電、LED照明、公用車のEVの計画的な導入を進めます。
岩手型住宅ガイドラインの改訂を踏まえたZEH+住宅の普及を促進します。
脱炭素社会の形成に向けて、早池峰発電所などで発電したCO2フリーの電力を県内企業や公共施設等へ供給します。
全国植樹祭のレガシーを継承する「いわての森林(もり)の感謝祭」を開催します。
(社会基盤)
社会経済活動の土台となる社会基盤を強化し、「幸福の追求を支える社会基盤が整っている岩手」の実現を目指します。
デジタル社会の実現に向け、5Gなど情報通信基盤の整備を促進します。また、行政、産業、社会・暮らしのDXに係る取組を進めます。
激甚化・頻発化する自然災害に備えた道路や河川などの社会資本を整備します。
「流域治水」の考え方のもと、ハード整備とソフト施策を効果的に組み合わせた防災・減災対策を進めます。
物流の基盤となり、観光振興に資する道路を整備します。
「岩手県新広域道路交通計画」に位置付けた構想路線等の調査の熟度を高めます。
自転車を活用した観光振興を促進するため、官民連携による広域的なサイクリングルートの整備等を進めます。
クルーズ船の更なる寄港拡大を図るため、港湾ごとにターゲットを絞ったポートセールスを行います。
これまで整備してきた社会資本の長寿命化を図ります。
建設業団体等と連携し、建設DXを進め、働き方改革の推進、現場の生産性向上を促進します。
(参画)
誰もが活躍できる仕組みづくり、幅広い市民活動や県民運動を促進し、「幸福の追求を支える岩手」を目指します。
女性に魅力的な雇用労働環境の整備と、活躍できる職場の創出に向けた取組を強化します。
アンコンシャス・バイアスをなくし、性別に関わらず助け合える企業風土づくりに向け、経営者の意識改革を進め、若者・女性に魅力ある職場づくりを促進します。
また、家庭における家事・育児のジェンダーギャップの解消に取り組みます。
女性のデジタル人材育成やキャリア形成支援、「いわて女性活躍企業等認定制度」の普及拡大により、女性が活躍できる職場環境づくりや若年女性の県内定着を推進します。
若者による地域づくりや、復興の課題解決に向け、いわて若者カフェと連携した拠点整備を進め、地域をけん引する若者を育む環境づくりに取り組みます。
パートナーシップ制度の導入拡大に向け、市町村を支援します。また、制度利用者が利用可能なサービスの拡大について、検討を進めます。
⑶ 新しい時代を切り拓くプロジェクトの展開
「新しい時代を切り拓くプロジェクト」については、先に述べた3つのゾーンプロジェクトやILCプロジェクトに加え、岩手らしさを生かした先導的な施策を進めて参ります。
活力ある小集落実現プロジェクトでは、スマート物流の実装促進など日常生活の支援のほか、市町村や民間企業と連携したワンストップサービスの拠点化など地域のつながりを守る仕組みの構築を進めます。
農林水産業高度化プロジェクトでは、AI技術等を活用した花の省力型栽培体系の開発・実証や、海面養殖するサケ・マス類の高水温への適応性調査など、収益性の高い農林水産業の実現に向けた取組を進めます。
人交密度向上プロジェクトでは、世界遺産や三陸ジオパーク、防災学習、農林水産業などの豊富な地域資源を生かし、様々な主体の参画によるネットワークを形成することにより、関係人口の質的・量的な拡大を図ります。
また、ビッグデータの活用による健康づくりや、効果的なICT活用による学びの充実、地域資源を生かした文化芸術・スポーツの振興、持続可能なグリーン社会に向けた水素の活用などに取り組みます。
⑷ 地域振興・市町村への支援の展開
10の政策分野の取組に加え、持続的な地域社会を築くために、各広域振興局を拠点として、圏域の特性を踏まえた地域づくりを進めます。
特に人口減少が進んでいる県北・沿岸圏域では、市町村など多様な主体とともに豊かな地域資源を基盤に、地域の産業や社会におけるGXやDXを推進することで「新しい成長」を実現する地域を目指します。
市町村のニーズに応じて、基幹業務システムの標準化への対応をはじめとする行政DXに対する支援策を講じます。
小規模町村において、専門職員が不足している状況を踏まえ、現在、派遣している農学職や土木職に加え、特に支援を必要とする地域を管轄する保健所の保健師を増員します。
保健所全体で小規模町村を支援し、両者が一体となってその地域の保健活動を推進していく体制を整備します。
また、小規模町村に対しては、人的・財政的支援を一体的に行う仕組みを新たに設け、地域課題や住民ニーズへ適切に対応しながら、それぞれの個性や特色を生かした施策の展開を支援します。
4 質の高い行政経営の推進
施策の推進に当たり、県民の幸福を的確に捉え、県民サービスを持続的かつ効果的に提供していくため、職員の確保や働き方改革の取組、行財政改革を一層進め、より質の高い行政経営を推進して参ります。
地域意識に根ざした県民本位の行政経営の推進のため、市町村を取り巻く環境を踏まえ、方向性を共有しながら、市町村相互の連携支援、県の連絡調整機能と補完機能を強化します。
多様な人材の確保及び職員のキャリアを生かした能力発揮により、高度な行政経営を支えます。
行政のDXを進めるため、体系的にDX人材を育成するとともに、デジタル技術の活用により業務を効率化します。
ふるさと納税やJ-クレジット、第9回サステナブルファイナンス大賞において「地域金融賞」を受賞したグリーン/ブルーボンド発行などによる歳入確保策を実施しつつ、持続可能な財政構造の構築による財政改革に引き続き取り組みます。
5 むすび
昨年のニューヨーク・タイムズ紙の「行くべき52か所」で、日本のどこかを上位に挙げるとの方針のもと、地方都市である盛岡市が選ばれ、今年は山口市が選ばれたことは、世界的な視点から見て、日本の地方が大変価値があり、魅力的だということを確認させてくれました。
人口が少ない地方には、「生きにくさ」を「生きやすさ」に変えていかなければならないという課題はありますが、そのことは、人口が少ない地方にこそ、すばらしい価値や魅力があるということを否定するものではありません。
今年、新年を迎えるに当たって、私は、県北・沿岸から仕事を始めました。東日本大震災津波以来の「一年の計は沿岸にあり」という思いとともに、岩手の中でも人口の少ない市町村が多い地域で仕事始めをしようとの考えによるものです。
そこで、漁港内でウニの蓄養・出荷に取り組む組合の方々や、サケの魚醤「鮭醤」などの新たな商品開発に取り組む若者、商店街で地域をもっと元気にしようと商品の販売やイベントの開催に取り組む商工会の方々にお会いしました。
人口の少ない市町村にも、すばらしい価値や魅力があります。人口が少ない地域の問題は、価値や魅力がないことではなく、価値や魅力がまだまだ知られていないことではないでしょうか。それは岩手全体の問題でもあります。
交通の発達や情報通信技術の発展により、岩手に居ながら、世界とつながり、岩手の価値や魅力を発信できるようになり、これまでにない質的に豊かな、多様で、国際的な交流が可能となっています。
このような環境のもと、大谷翔平選手をはじめ、全国・世界で活躍する若者が岩手に生まれ育っています。また、ハロウインターナショナルスクールジャパン安比のように、世界から岩手にやってきて、世界に羽ばたくこともできるようになっています。
岩手県内各市町村の価値や魅力、そして岩手県の価値や魅力を共有・発信し、岩手に生まれ育ち、岩手で生き続ける人たちも、岩手に生まれ育ち、いったん県外に出てまた戻ってくる人たちも、岩手に生まれ育ち、県外で活躍する人たちも、県外で生まれ育ち、岩手にやってくる人たちも、みんなが岩手の価値や魅力と共にあり、岩手とつながりながら、希望の道を進むことができる岩手県でありたいと思います。それが、「希望郷いわてのその先」です。
ここにおられる議員の皆様並びに県民の皆様の深い御理解と更なる御協力を心からお願い申し上げ、私の所信表明を終わります。
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