令和7年2月県議会定例会知事演述

ページ番号1080718  更新日 令和7年2月14日

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1 はじめに

 本日ここに第9回県議会定例会が開会されるに当たり、今後の県政運営について、私の所信の一端を申し上げます。

 はじめに、改めて、昨年元日に発生した能登半島地震とその後の奥能登豪雨で犠牲になられた方々の御冥福をお祈りし、被害に遭われた方々にお見舞いを申し上げます。いまだ不自由な避難生活を余儀なくされている方も大勢おられることから、一日も早い復旧・復興を祈念いたします。

 県では、市町村と連携しながら、今年も、中長期派遣等を通じた支援を行って参ります。

 年明け以降、県内で発生した過去に例を見ない大規模な高病原性鳥インフルエンザ事案に対して、国、19道府県、市町村、陸上自衛隊、そして岩手県建設業協会や岩手県バス協会などの関係団体の御協力をいただきながら、県の総力を挙げて防疫措置に取り組むことができました。関係者の皆様方に対して改めて感謝申し上げます。

 いま世界では、ロシアのウクライナ侵攻や中東情勢など戦争や紛争が止まず、国際社会においても、各国の国内においても、分断が深刻化する傾向があります。

 地球規模の気候変動が一因と考えられる災害の激甚化・頻発化や異常気象の多発もみられます。

 こうした国際情勢を背景に、資源・エネルギー価格や食料価格などの高騰が、新型コロナウイルス感染症に伴う打撃から回復途上にある県民生活や県民経済を厳しいものにしています。

 この物価高騰に対し、県では、県民の「暮らし」と「仕事」を守るため、生活困窮世帯をはじめとした生活者支援、広く中小企業者向け、また運輸・交通事業者、農林漁業者、介護・福祉・医療施設等、各分野向けの事業者支援を講じてきました。昨年12月にも、必要な対策を盛り込んだ補正予算を編成しました。

 今後も、県民生活や県民経済の状況に応じ、県民に寄り添った施策を機動的に講じて参ります。

 2014年に、まち・ひと・しごと創生法が施行され、地方創生が国全体で本格始動してから、10年が経ちました。

 これまで、岩手は、日本創生のための将来世代応援知事同盟や全国知事会の人口戦略対策本部など、地方創生の活動の先頭を進んできました。

 県内では、岩手県ふるさと振興総合戦略のもと、「岩手で働く」「岩手で育てる」「岩手で暮らす」、そして2020年度から「岩手とつながる」を加えた4本柱で、国の交付金も活用しながら、地方創生に取り組みました。

 その成果として、自動車や半導体、医療機器関連産業の集積、第2子以降の保育料無償化や在宅育児支援等による子育て環境の改善、女性活躍を推進する認定企業数の増加、道路ネットワークの構築、県外からの移住者の増加などが進み、生活環境や雇用情勢、地域の魅力が大幅に向上しました。

 しかし、この間、東京2020(にいぜろにいぜろ)オリンピック・パラリンピック競技大会に代表される大型事業を契機とした官民投資の東京への集中があり、コロナ禍の一定の時期を除き、東京一極集中はむしろ加速しました。

 出生率の向上も、岩手を含め全国的に達成できず、むしろ低下傾向にあります。その背景として、若い世代を中心とした可処分所得の低下が指摘されています。

 こうした課題は全国共通であり、昨年、民間では人口戦略会議が地方創生の見直しを提言するとともに、国では地方創生の再起動に踏み出しました。

 昨年、改めて全国的に関心が高まったのが、就職時期の若者、特に女性の都会への転出が高い水準で続いていることです。

 ジェンダーギャップを解消し、国際的にも通用するような女性の働き方を岩手で実現し、先進性を高めて、若者・女性に選ばれる岩手であるようにしなければなりません。

 いま、日本へのインバウンド観光はコロナ禍前を上回り、世界中で食をはじめ日本の生活文化に関係する需要が高まっています。

 特に、日本の地方への関心が高まり、その中で岩手が注目されています。盛岡などの街並みや日常風景、複数の海外メディアに取り上げられた「みちのく潮風トレイル」、世界遺産や伝統芸能、高品質の農林水産物や食文化、伝統工芸品などが、世界から高い評価を受けています。世界が岩手を求めています。

 様々な国際交流で重ねられた信頼関係も生かし、インバウンド観光と輸出を拡大していくことで、海外展開と連動した新しい地方創生を進めることが可能になります。海外との交流や経済関係が発展することは、岩手の社会や経済の先進性を高めることにもつながり、若者・女性に選ばれる岩手であるためにも重要です。

2 幸福を高める政策の推進

(4つの重点事項の推進)

 「いわて県民計画(2019~2028)」第2期政策推進プランでは、人口の「自然減・社会減対策」を主軸に、脱炭素と成長の両立を目指す「GX、グリーン・トランスフォーメーションの推進」と、情報通信技術の力を生かす「DX、デジタル・トランスフォーメーションの推進」を両翼とし、さらに「安全・安心な地域づくり」を基盤とする4つの重点事項を掲げています。

 主軸となる人口の自然減・社会減対策では、家庭や地域、職場での固定的な性別役割分担の解消を重視し、オール岩手で取り組みます。

 自然減対策では、「有配偶率の向上」、「有配偶出生率の向上」、「女性の社会減対策」の3本柱のもと、結婚・子育て支援などを展開し、経済的・社会的な困難から結婚・出産等を諦める、いわゆる「生きにくさ」の解消を図ります。

 社会減対策では、「多様な雇用の創出、労働環境と所得の向上」、「いわてとのつながりの維持・強化」、「交流人口・関係人口の拡大」の3本柱のもと、賃上げ支援や、インバウンド観光、輸出の拡大などを推進します。

 さらに、広域振興局を核に、地域の実情や課題に応じた施策を、市町村と連携して進めます。特に、行財政資源が限られる小規模町村に対しては、伴走型の支援を強化して参ります。

 昨年6月、中国大連市で行われた「夏季ダボス会議2024」に参加しました。会議を主催する世界経済フォーラムは、新しい経済成長の条件に、「包摂(インクルージョン)」、「持続可能性(サスティナブル)」、「革新(イノベーション)」、「強靭化(レジリエント)」を挙げています。

 この4条件は、本県の4つの重点事項の方向性と重なり、「包摂(インクルージョン)」が「自然減・社会減対策」、「持続可能性(サスティナブル)」が「GXの推進」、「革新(イノベーション)」が「DXの推進」、「強靭化(レジリエント)」が「安全・安心な地域づくり」に相当します。

 4つの重点事項を一体的に展開し、県全体で幸福・ウェルビーイングを高めながら、世界が求める社会・経済の発展の道を岩手も歩み、世界に開かれた地方創生を進めて参ります。

(3つのゾーンプロジェクト)

 広大な県土を有する岩手において、地域の多様な特性や豊かな資源を最大限に生かす未来志向の施策として、3つのゾーンプロジェクトをさらに推進します。

 県央・県南の北上川流域では、半導体分野で、昨年、デバイスメーカーの新工場が完成するなど、生産規模の拡大が続いています。自動車分野を含め、世界的な製造拠点として産業集積が進み、医療機器関連産業も本県ものづくりの第3の柱として着実に成長しており、新たな雇用が創出されています。

 産学官連携や高等教育機関による高度・専門人材の育成が進んでおり、民間企業によるデジタル人材の育成も展開されています。

 また、工業地帯が、農林水産業、世界文化遺産の「平泉」や民俗芸能、温泉、スキーリゾートなどの自然・歴史・文化に囲まれ、都市型の生活環境と共にあるという、全国的に他に例がないような地域です。

 このような北上川流域の特徴を生かしながら、一層の産業振興と生活環境の充実を進めます。

 三陸地域では、復興事業により、復興道路、三陸鉄道などの交通ネットワークの形成やまちづくりが進むとともに、港湾機能を生かした新たなコンテナ航路開設のほか、クルーズ船の寄港が増加しています。

 また、防災学習を活用した企業研修や大学のフィールドワークの場としての定着が進んでおり、復興・防災をテーマとした交流が活発になっています。

 さらに、「みちのく潮風トレイル」や「三陸ジオパーク」、三陸の豊かな食など、国内外から注目される観光資源に恵まれており、交流人口の拡大が期待されます。

 多様な主体の参画と協働により、防災、自然、多様な交通ネットワーク、食や文化・スポーツを通じて「国内外とつながる三陸」の創造をさらに進めます。

 北いわては、食やアパレル、漆関連など、日本文化の根源や先端に関連する産業が発展しており、農林水産資源や再生可能エネルギー資源にも恵まれた、人と自然の調和という点で、他地域を先導する可能性を有する地域です。

 このため、東京大学を中心とする「COI-NEXT」の事業に参画し、バイオ炭による収益性の高い循環型農林業や、木質バイオマス資源を生かした地域内エコシステム構築など、イノベーションを通じ地域のポテンシャルを最大限に発揮する地域振興に取り組んでいます。

 また、AIを活用できる中小企業の人材育成も進んでいます。

 イノベーションに加え、世界遺産の御所野遺跡や漆、琥珀などを生かした交流人口拡大も推進し、持続的に発展する先進的な地域づくりを進めます。

 以上のような3つのゾーンの魅力や先端的な取組を広く発信し、関心を高め、さらに多様な主体の参画を図ります。

(ILCの推進)

 ILCは世界中の研究者等が結集するアジア初の大型国際科学技術拠点であり、その実現による波及効果は日本全国、世界に及びます。

 東北に国際的なイノベーションの拠点が形成され、世界に開かれた地方創生、東日本大震災津波からの創造的復興が実現します。

 現在、次期大型加速器について、日本、欧州、中国の3つの計画の検討が進められている中、日本のILC誘致に残された時間は少なくなってきています。

 政府による早期の前向きな誘致判断に向けては、国民的な機運を盛り上げていくことが重要です。

 県では、県内外の関係団体と一層の連携を図り、2025年日本国際博覧会「大阪・関西万博」等のあらゆる機会を捉えた機運醸成や国への働きかけの強化など、実現に向けて全力で取り組んでいきます。

 また、受入環境の整備や加速器関連産業への参入促進等を推進していきます。

(多様な主体との連携)

 「いわて県民計画」は、県民、企業、団体、NPO、市町村や県など、あらゆる主体が連携・協働して進めていくものです。昨年、東京大学と県が締結した包括連携協定も、そうした考えを具体化する取組のひとつであり、東京大学をはじめとした世界最先端の研究や知見を生かしながら、「いわて県民計画」の実現につなげていきます。

3 令和7年度の主要施策の概要

 以下、令和7年度の具体的な施策について申し上げます。

⑴ 東日本大震災津波からの復旧・復興の推進

 はじめに、東日本大震災津波からの復旧・復興です。

 東日本大震災津波から14年になろうとしています。

 県は、「いのちを守り 海と大地と共に生きる ふるさと岩手・三陸の創造」を目指す姿とし、国内外から多くの御支援をいただきながら、県民一丸となって復興に取り組んできました。

 改めて、被災された方々、御支援いただいた皆様の御尽力に敬意を表し、感謝申し上げます。

 これまでに、復興道路などが完成し、県土の縦軸、横軸を構成する新たな道路ネットワークが構築され、沿岸と内陸が一つになりました。また、防潮堤などの津波防災施設は、計画された事業の多くが完成しました。

 一方、被災者のこころのケアなどの一人ひとりの状況に応じたきめ細かい支援や、なりわいの再生に、中長期的に取り組んでいく必要があります。

 また、「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震」に備え、関係機関と連携して、防災・減災対策を進める必要があります。

 これまでの成果と課題を踏まえ、「誰一人として取り残さない」という理念のもと、復興推進プランに掲げる4本の柱に基づき、三陸の「ビルド・バック・ベター」、より良い復興を進めます。

(安全の確保)

 「安全の確保」として、津波防災施設の早期完成に向けた整備や社会資本の適切な維持管理を行います。

 産業の振興や地域の活性化に向けて、国と連携しながら、市町村における移転元地の利活用を支援します。

 「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震」に備え、避難訓練の実施や個別避難計画の作成、自動車避難ルートの設定、津波避難ビルの確保など、沿岸市町村と一体となって津波避難対策を推進します。

 LINEなどを活用した「被災者把握システム「岩手モデル」」の実証実験を重ね、避難所運営のデジタル化を促進します。

 被災者の多様な課題に対応できるよう、関係者が連携して必要な支援を行う災害ケースマネジメントの体制整備を進めます。

 ALPS処理水の処分への対応を含め、原子力発電所事故に起因する放射線影響対策を実施します。

(暮らしの再建)

 「暮らしの再建」として、複雑かつ多様な課題を抱える被災者の安定した生活に向け、いわて被災者支援センターや市町村等と連携した重層的な支援を行います。

 こころのケアセンターによる被災者に寄り添った支援を継続します。

 児童生徒の心のサポートのため、スクールカウンセラー等の配置による丁寧な支援を行います。

 「いわての復興教育」を推進し、岩手の復興・発展を支える人材を育成します。

 被災者の生活再建先におけるコミュニティの形成や活動の定着、住民の高齢化を踏まえた維持・活性化に向けて、市町村を支援します。

(なりわいの再生)

 「なりわいの再生」として、「水産業リボーン宣言」に基づき、サケなどの主要魚種の資源回復や、マイワシやブリなどの増加している資源の有効利用、サケ・マス類の海面養殖、ワカメやアサリなどの生産拡大を推進します。

 いわて水産アカデミーにおいて、地域漁業の次代を担う人材を育成します。

 水産加工事業者の人材確保に向けて、DXの推進や女性が働きやすい職場環境の整備を支援します。水産業における生産分野と流通・加工分野の連携強化を進めます。

 高収益な園芸作物の生産や原木しいたけ産地の再生に向けた取組を支援します。

 事業者の経営安定化のため、商工指導団体等と連携し、経営・金融両面での支援を行います。

(未来のための伝承・発信)

 「未来のための伝承・発信」として、東日本大震災津波伝承館を拠点に、震災津波の事実・教訓の伝承に取り組みます。

 いわて復興未来塾などの事業を通じて、震災伝承施設等を巡る機会の創出を図るとともに、国内外に復興の姿を発信します。

⑵ 10の政策分野の推進

 次に、「いわて県民計画」の10の政策分野です。

 県民一人ひとりがお互いに支え合いながら、幸福を追求していくことができる地域社会を目指し、各分野の事業を進めて参ります。

(健康・余暇)

 「健康・余暇」の分野では、

 新たに策定した「岩手県立病院等の経営計画」に基づき、高度・専門医療の充実と、身近な医療の継続的な提供に向けて、県立病院間の機能分化と連携強化を図り、持続可能な医療提供体制を構築します。

 医師の確保と地域偏在の解消、看護職の県内定着を図ります。また、医師の働き方改革や医療DXを進めます。

 医療機関の受診や救急車の要請に迷う場合の電話相談窓口・#7119(シャープなないちいちきゅう)を設置し、県民の安心の確保と消防や医療機関の負担軽減を図ります。

 介護人材の不足に対応するため、介護職員の確保や労働環境の改善を支援します。

 地域包括ケアシステムの深化・推進に向け、市町村の取組への支援や認知症に関する正しい知識と理解の普及啓発を進めます。

 健康寿命を延ばすため、生活習慣の改善や検診受診率の向上に取り組みます。

 包括的な自殺対策プログラムの推進、働き盛り世代や高齢者に対する自殺予防の啓発を強化します。

 ヤングケアラーやダブルケアなど複雑化・複合化した支援ニーズに対応するため、重層的支援体制の整備を促進します。

 生活困窮者の生活再建のため、関係団体と連携して、困窮者に寄り添った支援を行います。

 重度心身障がい者等の経済的負担の軽減を図るため、医療費助成の対象者に精神障害者保健福祉手帳1級を所持する方を新たに追加します。

 福祉・消費生活分野における相談機能の一元化と充実を図るため、福祉総合相談センターと県民生活センターの一体的な整備を進めます。

 入所者の高齢化や施設・設備の老朽化が進んでいる「中山の園」について、整備基本計画の策定を進めます。

 性別や年齢、障がいの有無に関わらず、誰もがスポーツを楽しむことができる環境を整備します。

 県内のアール・ブリュット作家・作品を通じて、障がい者文化芸術の魅力を広く発信します。

(家族・子育て)

 「家族・子育て」の分野では、

 今議会に提出しております「いわてこどもプラン」に基づき、こども・若者の権利の保障と最善の利益の推進、心身ともに健やかに生活できる環境づくり、こどもの貧困対策、ひとり親家庭への支援、児童虐待防止対策、いじめ問題への適切な対応など、こども施策を総合的に推進します。

 子どもの視点に立った政策推進に向けて、子どもを対象に意見聴取を行うこどもモニター制度を新たに実施します。

 市町村と連携し、産後ケア利用時の交通費や一時預かりへの支援、第2子以降の3歳未満児に係る保育料の無償化、在宅育児支援を行い、子ども・子育て支援の充実を図ります。子どもの居場所・遊び場づくりを進めます。

 保育人材の確保に取り組みます。

 長時間労働の是正、休暇制度の整備など、仕事と子育ての両立支援に向けた企業等の取組を促進します。

 機能強化した“いきいき岩手”結婚サポートセンターの利用促進や、民間事業者との連携による出会いの機会の創出に取り組みます。

 不妊治療に係る経済的負担の軽減を図ります。企業等による仕事と治療の両立環境の整備を促進します。

 予期せぬ妊娠等により困難な問題を抱える女性への支援を強化します。

 質の高い療育が受けられるよう、地域療育ネットワークの構築と機能の充実を支援します。

 地域における医療的ケア児等の支援体制の構築を推進します。

 動物のいのちを大切にする社会の実現に向けて、動物愛護管理センターの整備を進めます。

(教育)

 「教育」の分野では、

 市町村等と連携して、県立高校の魅力化を推進します。

 県立高校における医系等分野の専門職を目指すコースなどの設置に向けた検討を進めます。

 多様な教育ニーズに対応した特色ある教育活動を支援することによって、私学教育の充実に取り組みます。

 中学校の部活動の地域クラブ活動への移行を進めるため、助言や指導などを行うアドバイザーの配置等により市町村を支援します。

 子どもたちが安心して学校生活を送ることができる環境を整え、いじめや不登校に適切に対応します。

 ものづくり産業や農林水産業、建設業等の産業人材の育成・確保、地域を支える国際人材の育成を進めます。

 スポーツ医・科学の知見やデジタル技術等を活用して、スポーツ水準と競技力の向上、スーパーキッズの育成に取り組みます。

 昨年公表した「県営スポーツ施設のあり方に関する報告書」を踏まえ、スポーツ医・科学センターの整備について検討を進めます。

 パラアスリートの競技力向上と競技環境の整備を進めます。

(居住環境・コミュニティ)

 「居住環境・コミュニティ」の分野では、

 広域バス路線の維持・確保に取り組むとともに、バス運転士の確保・定着や、市町村による地域公共交通計画等の策定を支援します。

 沿線自治体等と連携して、復興のシンボルである三陸鉄道の持続的な運行、IGR及びJRローカル線の維持・確保に向けた取組を推進します。

 移住・定住を促進するため、本県の魅力の発信、移住支援の拡充、就職マッチング、県営住宅のお試し居住の取組を進めます。

 空き家の活用による若年層等の住宅取得を支援します。

 市町村における地域おこし協力隊の募集・受入れ、任期終了後の定着を支援します。

 スポーツ大会や合宿の誘致を通じた交流人口の拡大を進めます。

 汚水処理事業の次期県構想を策定し、汚水処理施設の整備・普及を推進します。

 市町村と連携して、木造住宅の耐震化を促進します。

 新たな「岩手県多文化共生推進プラン」に基づき、外国人県民等が暮らしやすい環境づくりを推進します。また、海外の県人会との連携を強化します。

(安全)

 「安全」の分野では、

 新たに改訂した「第2期岩手県国土強靱化地域計画」に基づき、今後起こり得る地震・津波への備えとして、県と市町村が一体となった具体的な対策の検討や情報共有、市町村への支援、総合防災訓練の実施など、防災・減災対策を推進します。

 災害発生時のトイレ、温かい食事、ベッドの提供など、市町村における避難所環境の改善を進めます。

 自主防災組織の活動支援や消防団員の確保・育成に取り組みます。

 関係団体と連携し、火山活動の観測調査や防災対策を継続して実施します。また、岩手県風水害対策支援チームのもと、市町村の風水害対策を支援します。

 新たな「岩手県犯罪被害者等支援実施計画」に基づき、犯罪被害者等への途切れることのない支援を行います。

 特殊詐欺被害を予防するため、効果的な広報啓発活動を実施し、防犯意識の向上を図ります。

 被害の多い若年者や高齢者を中心に、消費者被害の防止のための消費者教育の推進、相談対応の充実に取り組みます。

 ドローンの利活用による警察活動の高度化を進めます。

 新たな「新型インフルエンザ等対策行動計画」に基づき、新興感染症に備えた医療提供体制の構築に取り組みます。

 高病原性鳥インフルエンザや豚熱などの家畜伝染病の発生予防・まん延防止のため、飼養衛生管理の徹底や病原体の侵入防止対策、豚熱ワクチン接種など家畜衛生対策を推進します。また、発生時を想定した訓練を実施し、防疫対策を強化します。

(仕事・収入)

 「仕事・収入」の分野では、

 賃上げに取り組む中小企業・小規模事業者を支援します。経営革新計画の策定やAIなどデジタル技術を活用した自動化・省力化による生産性の向上、円滑な価格転嫁等を進め、賃上げ環境の整備に取り組みます。

 農林漁業者に対する燃料・資材価格高騰の影響緩和対策や省エネ技術の導入支援に取り組みます。

 県産品の輸出やインバウンドを含む観光客の誘客拡大を推進します。

 県産農林水産物、加工食品、日本酒、伝統工芸品等のトップセールスやECサイトの活用などにより、国内外の販路開拓・拡大、高付加価値化を支援します。

 「みちのく潮風トレイル」など魅力的な観光資源を生かした滞在型の商品造成や観光推進体制の強化、世界の各市場に対応した戦略的なプロモーションを展開します。

 航空会社や関係機関と連携し、いわて花巻空港のより一層の利用促進に取り組みます。

 クルーズ船の寄港がさらに増加するよう、港湾ごとにターゲットを絞った効果的なポートセールスを行います。

 「いわてで働こう推進協議会」を核に、企業等による若者・女性に魅力ある職場環境づくりや働き方改革の取組を促進し、高校・大学等卒業者の県内就業やUIターンによる人材確保を支援します。

 いわてスタートアップ推進プラットフォームを核とした若者・女性の創業支援や、県内スタートアップの成長に向けた海外との連携に取り組みます。また、事業承継や経営力の向上を支援します。

 商工指導団体の体制の維持・強化を図りながら、中小企業等への伴走支援を促進します。

 自動車や半導体、医療機器関連産業など、県内ものづくり産業の一層の集積と高度化を促進します。また、企業の新規立地や増設などにより多様な就業の場を創出します。

 JR東日本の重点共創エリア指定を受けた秋季観光キャンペーンにより、観光需要を創出します。大阪・関西万博での東北合同出展により、本県の魅力を発信します。

 農林水産業の経営体育成や、メタバースを活用した農林水産業への就業相談、いわて林業アカデミー・いわて水産アカデミーを通じた新規就業者の確保・育成を推進します。

 シニア世代や外国人材等の多様な農業人材と農業法人とのマッチングに取り組みます。

 女性農林漁業者が働きやすい環境づくりを進めます。

 農業大学校の教育機能強化に向けた基本構想の策定に向け、検討を進めます。

 市町村・関係団体・生産者と一体となって、本県農業を強化していくための「いわて農業生産強化ビジョン」を策定します。

 主食用米、高収益の園芸作物、畜産物、しいたけや木炭、生漆等の特用林産物の生産振興を図ります。また、主要魚種の資源回復に向けた取組と新たな漁業・養殖業の導入を推進します。

 生産基盤整備や林業経営体の人材育成、県産木材の供給体制の構築を推進します。

 新たな県北地域向け県オリジナル水稲新品種「白銀のひかり」のプロモーションを展開します。AI等を活用した飼料生産コスト低減技術の実証や高水温耐性を持つ県オリジナルサクラマス種苗の開発に取り組みます。

 グリーン・ツーリズムの受入体制強化や海業の新たなビジネスモデル構築を支援し、農山漁村の交流人口拡大を進めます。

 野生鳥獣による農作物被害に対して、有害捕獲や侵入防止柵の設置、ICT機器等を活用した被害防止対策に取り組みます。

(歴史・文化)

 「歴史・文化」の分野では、

 本年、「橋野鉄鉱山」が世界遺産登録10周年となることを記念し、橋野鉄鉱山への来訪促進、「平泉」・「御所野遺跡」を合わせた3つの世界遺産の価値や魅力の普及、交流・周遊促進に取り組みます。

 世界遺産の構成資産及び関連資産からなる「ひらいずみ遺産」を中心とした文化観光を進めます。

 昨年12月、日本の「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。南部杜氏発祥の地として、県内各地に根付いている日本酒の魅力を世界に発信します。

 今議会に提出しております「第4期岩手県文化芸術振興指針」に基づき、県民誰もが文化芸術に親しみ創造できる環境づくりを進めます。

 民俗芸能の宝庫である岩手の魅力を発信し、伝統文化への理解を深め、次世代へ受け継ぐ取組を推進します。

 県政150周年期間の最終年度となる令和8年度に向けて、県民の機運を醸成します。

(自然環境)

 「自然環境」の分野では、

 温室効果ガスの削減目標達成に向けて、県民理解の増進やZEH+住宅である岩手型住宅の普及、事業者の省エネ設備更新を支援します。

 県有施設や港湾・空港の脱炭素化を進めます。

 環境負荷を低減する農業や森林整備、藻場の再生・造成を推進します。令和6年度から発行を開始した県有林J-クレジットの販売を促進します。

 次期「海洋再生可能エネルギー関連産業創出ビジョン」の策定を進め、海洋再生可能エネルギー発電事業の導入に向けて取り組みます。

 県で発電したCO2フリー電力の県内企業等への供給を行い、再生可能エネルギーの地産地消と企業の付加価値向上を推進します。県の既設水力発電所の再開発を進めます。

 「三陸ジオパーク」を活用した交流人口拡大や世界ジオパーク認定を見据えた取組を推進します。

 ツキノワグマの個体数管理のための捕獲や被害防止対策を進めます。沿岸地域で農作物被害が増加しているニホンザルの生息状況調査を実施し、市町村と連携して被害防止を図ります。

(社会基盤)

 「社会基盤」の分野では、

 「岩手県DX推進計画」に掲げる4つの取組方針に基づき、行政、産業、社会・暮らし、基盤整備の分野におけるDXを推進します。

 「流域治水」の考え方のもと、河川改修や砂防堰堤の整備などのハード対策と、洪水浸水想定区域や土砂災害警戒区域等の指定などのソフト施策を効果的に組み合わせ、防災・減災対策を推進します。

 盛土等の崩落に伴う災害から県民を守るため、規制区域の指定や周知広報、監視強化を行います。

 災害に強い道路ネットワークを構築するため、緊急輸送道路の橋梁耐震化、道路防災対策、無電柱化、交通あい路の解消を推進します。

 物流の基盤となり、観光振興に資する道路の整備を進めます。「岩手県新広域道路交通計画」に位置付けた広域道路ネットワークの強化に向けて、構想路線等の整備や調査を推進します。

 岩手県広域サイクリングルートの整備などサイクリング環境の向上に取り組みます。

 社会資本の長寿命化計画に基づき、予防保全型維持管理への転換を図り、計画的な維持管理を推進します。

 建設関連団体と連携し、建設業の担い手の確保・育成に向けた魅力発信や職場環境の改善、ICT技術等を活用した建設DXを進めます。

(参画)

 「参画」の分野では、

 国のえるぼし認定やいわて女性活躍企業等認定制度の普及と取得企業の拡大を促進します。経営者層への理解促進や女性のエンパワーメントを目的としたセミナー・研修の開催、デジタルスキルの取得支援など、女性の活躍支援を強化します。

 家庭・地域・職場などあらゆる場面におけるジェンダーギャップの解消に向けて、オール岩手での取組を推進します。

 若者が生き生きと活動できる地域をつくるため、いわて若者カフェの県内連携拠点の拡充や若者のアイディア実現への支援、社会全体で若者を理解し応援する機運の醸成に取り組みます。

 パートナーシップ制度の導入拡大に向け、市町村を支援します。また、制度利用者が利用可能なサービスの拡大を推進します。

⑶ 新しい時代を切り拓くプロジェクトの展開

 「いわて県民計画」の「新しい時代を切り拓くプロジェクト」については、先に述べた3つのゾーンプロジェクトやILCプロジェクトに加え、岩手らしさを生かした先導的な施策を進めて参ります。

 活力ある小集落実現プロジェクトでは、買い物や通院の移動支援など日常生活維持の仕組みづくりや、農村型地域運営組織等による集落機能維持への支援などを進めます。

 農林水産業高度化プロジェクトでは、沖縄県と連携した高温登熟耐性を持つ水稲品種の早期開発や、本県海域で定着が確認されたヨーロッパヒラガキの種苗生産技術開発など、収益性の高い農林水産業を目指します。

 人交密度向上プロジェクトでは、いつでも岩手につながることができる環境を整備しながら、地域おこし協力隊の受入れ・定着促進や、遠恋複業課による外部人材と地域とのマッチングなど、関係人口を質的・量的に拡大します。

 また、ビッグデータを活用した地域の健康課題の「見える化」や、効果的なICT活用による学びの充実、文化芸術やスポーツによる特色あるまちづくりの推進、再生可能エネルギー由来の水素の利活用など、それぞれのプロジェクトを進めていきます。

⑷ 地域振興・市町村への支援の展開

 地域振興について、住民に身近なサービスは、市町村が担うことを基本としつつ、より広域的な視点から、4つの広域振興局を拠点に、各圏域のニーズや課題に応じた施策を展開します。

 各広域振興局の人口減少対策体制を強化し、市町村と一体となった集中的かつ効果的な取組を推進します。特に人口減少が進んでいる県北・沿岸圏域を中心に、本庁と広域振興局が連携して、各地域の実情を踏まえた伴走型の支援を展開します。

 市町村の人材確保に向けて、合同就職セミナーの開催やインターンシップ受入れを支援します。複数市町村の共同による職員採用など新たな人材確保支援策の検討を進めます。

 小規模町村に対しては、職員の相互交流、保健師や林学職等の専門職員の派遣、地域経営推進費の活用など、人的・財政的支援を一体的に行います。

 また、標準準拠システムへの円滑な移行や電子申請システム共同利用の拡大を通じ、市町村の行政事務のデジタル化を支援します。

4 質の高い行政経営の推進

 施策の推進に当たり、県民サービスを持続的・効果的に提供していくため、職員の確保や働き方改革、行財政改革を一層進め、より質の高い行政経営を行います。

 また、組織のスリム化を前提とした中長期的な在り方検討を本格化し、機動的かつ最適な組織・職員体制を構築します。

 全職員を対象としたフレックスタイム制の導入など柔軟な働き方環境の整備や生成AIの利活用により業務を効率化します。

 将来にわたり、公共施設の維持管理・サービスの提供を持続可能なものとするため、個々の公共施設等について丁寧な評価を行い、それを踏まえた「次期公共施設等総合管理計画」の策定を進めます。

 県庁舎整備については、本年度内に取りまとめる予定の大まかな整備の方向性を踏まえ、県民の意見を広く聴きながら、基本構想の策定を進めます。

 ふるさと納税やグリーン/ブルーボンドの発行、基金の有効活用等による歳入確保策を実施しつつ、持続可能な財政構造を構築します。

5 むすび

 昨年開業40周年を迎えた三陸鉄道が、東日本大震災津波の甚大な被害から全線復旧を果たしたのは2014年3月でした。復興支援に携わる方々や三鉄ファン、「あまちゃん」ファンなど、全国・海外の皆さんと迎えたあの日を忘れることはできません。

 その2014年、地方の魅力を高め、人口減少に歯止めをかけようとする地方創生が国全体で本格始動し、それから10年が経ちました。

 地方創生10年の反省を踏まえ、「若者・女性に選ばれる」という視点を重視し、地方創生をバージョン・アップすべき時です。

 「開かれた復興」として、全国や海外との「つながりの力」を高めてきた姿勢を、これからの地方創生でも大事にすべきです。

 また、大谷翔平選手に代表される、全国や海外で活躍する若者を育ててきた地域の力を大事にすべきです。

 菊池雄星選手、大谷翔平選手に続き、佐々木朗希選手が、今年、海外で飛躍の時を迎えます。合唱の分野では、毎年全国的な受賞が相次ぎ、特に、北上市内の中学校6校合同チームは、金賞を受賞し、紅白歌合戦で「緑黄色社会」とコラボしました。

 こうした活躍の背景には、復興や地方創生の事業によって、交通ネットワークやスポーツ・文化施設、交流施設が充実し、意欲ある指導者の下、関係者が力を合わせ、若い力を育ててきたことがあります。

 そして、これからの地方創生では、東日本大震災津波という深い悲しみを共有し、共に苦楽を重ねてきた中で、私たちが築いてきた、お互いの幸福を守り育てる風土を大事にすべきです。

 地方創生は、個人一人ひとりの多様な幸せを実現するものでなければなりません。

 地方創生のこれまでの10年を経て、全国や海外に開かれた、全国や海外に通用する、幸福・ウェルビーイングを志向する、新しい地方創生に取り組んでいきましょう。

 ここにおられる議員の皆様並びに県民の皆様の深い御理解と更なる御協力を心からお願い申し上げ、私の所信表明を終わります。

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