環境基本条例
岩手県環境の保全及び創造に関する基本条例
平成10年3月30日
条例第22号
改正 平成11年12月17日条例第79号
岩手県環境の保全及び創造に関する基本条例をここに公布する。
岩手県環境の保全及び創造に関する基本条例
目次
前文
第1章 総則(第1条―第9条)
第2章 環境の保全及び創造に関する施策の基本方針等
第1節 環境の保全及び創造に関する施策の基本方針(第10条)
第2節 環境基本計画等(第11条・第12条)
第3章 環境の保全及び創造に関する施策等
第1節 環境の保全及び創造に関する施策(第13条―第25条)
第2節 地球環境の保全の推進(第26条)
附則
私たちの住む地球では、悠久の時を経て、多様性に富んだ生態系を持つ環境がつくり上げられてきた。人間は、その環境の恵みを受けつつ、知恵を蓄え、技術を身に付け、文化を築いてきた。
近代になって、人間が利便性や快適性を求めて、急速に天然資源や化石エネルギーを消費するようになったことなどから、自然のバランスが崩れ、地球環境に変化の兆しがみられるまでになった。このまま推移した場合には、地球上の生命が維持できなくなることが危ぐされる。
ここ岩手の地では、緑豊かな奥羽山脈や北上高地、三陸の海などの大自然の恵みを受け、古来より風土に根ざした共生の文化が築かれてきた。しかし、ここにも人間の活動の拡大が、原生的自然の減少や廃棄物の増大など見過ごすことのできない環境問題をもたらしつつある。
環境の恵みは、水、大気、森林等によって構成されている環境が総体として良好に形成されることによって、それぞれの地域で享受されるものであり、環境を守るための地域地域における行動の積み重ねが地球環境の保全につながるものである。私たちは、正に人間が環境の中で生かされているものであり、その環境が人間のみならず、すべての生命の母体であることを深く認識し、環境の保全と創造に向かって、地域からの一歩を力強く踏み出さなければならない。
環境と人間との関係が根源から問い直されている今、人知を結集し、環境の時代の新しい価値観と科学的知見を持ち、先見して、持続的な発展とゆとりのある生活をもたらすより良い環境を守り育て、将来の世代に継承していくことこそ、私たちの世代の最大の責務である。
ここに私たちは、魅力のある可能性の大地、この岩手で、恵み豊かな環境と共生する地域社会を共に築いていくことを決意し、この条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、環境の保全及び創造について、基本理念を定め、並びに県民、事業者、県及び市町村の役割を明らかにするとともに、環境の保全及び創造に関する施策の基本となる事項を定めることにより、環境の保全及び創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来の県民の健康で快適な生活の確保に寄与することを目的とする。
一部改正〔平成11年条例79号〕
(定義)
第2条 この条例において「地球環境の保全」とは、人の活動による地球全体の温暖化又はオゾン層の破壊の進行、海洋の汚染、野生生物の種の減少その他の地球の全体又はその広範な部分の環境に影響を及ぼす事態に係る環境の保全であって、人類の福祉に貢献するとともに県民の健康で文化的な生活の確保に寄与するものをいう。
2 この条例において「環境への負荷」とは、人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。
3 この条例において「公害」とは、環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁(水質以外の水の状態又は水底の底質が悪化することを含む。)、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下(鉱物の掘採のための土地の掘削によるものを除く。)及び悪臭によって、人の健康又は生活環境(人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含む。)に係る被害が生ずることをいう。
(基本理念)
第3条 環境の保全及び創造は、県民が豊かな岩手の自然及び文化の中で生かされていることを認識し、恵み豊かな環境と共生する地域社会を構築することを旨として、すべての県民の参加、連携及び協力によって行われなければならない。
2 環境の保全及び創造は、資源としての廃棄物の徹底的な利用、エネルギーの有効利用等が行われる循環型の地域社会が形成されることにより、多様な自然に恵まれた安全で快適な環境が確保され、将来の世代も豊かな環境の恵みを享受できるように行われなければならない。
3 地球環境の保全は、地域における環境の保全に関する活動の集積により成し遂げられることにかんがみ、県民が地球的な見地から地域の環境を考え、及び行動することによって行われなければならない。
(県民の責務)
第4条 県民は、その日常生活と環境とのかかわり合いを認識し、環境への負荷の少ない行動に自ら努めるものとする。
2 県民は、環境美化活動、再生資源に係る回収活動その他の環境の保全及び創造に関する活動(以下「環境保全活動」という。)への積極的な参加に努めるとともに、県が実施する環境の保全及び創造に関する施策に協力するものとする。
一部改正〔平成11年条例79号〕
(事業者の責務)
第5条 事業者は、物の製造、加工又は販売その他の事業活動を行うに当たって、資源の循環的な利用、エネルギーの有効利用等による環境への負荷の少ない事業活動に自ら努めるものとする。
2 事業者は、県が実施する環境の保全及び創造に関する施策に協力するものとする。
一部改正〔平成11年条例79号〕
(県の責務)
第6条 県は、環境の保全及び創造に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、及びこれを実施するものとする。
2 県は、広域的な見地から、市町村が実施する環境の保全及び創造に関する施策の総合調整に当たるものとする。
3 県は、環境の保全及び創造に関する施策を推進するに当たっては、必要に応じて、国及び他の都道府県と協力するものとする。
(市町村の役割)
第7条 市町村は、当該市町村の地域の特性に応じて、それぞれの立場において、環境の保全及び創造に関する施策を策定し、及びこれを実施するよう努めるものとする。
一部改正〔平成11年条例79号〕
(相互連携等)
第8条 県民、事業者、県及び市町村は、相互に連携し、及び協力して環境の保全及び創造に努めるものとする。
(年次報告書)
第9条 知事は、毎年、環境の状況並びに環境の保全及び創造に関して講じた施策の状況を明らかにするため報告書を作成し、及びこれを公表しなければならない。この場合においては、当該施策に関する目標の達成の状況を可能な限り明らかにすることに努めるものとする。
第2章 環境の保全及び創造に関する施策の基本方針等
第1節 環境の保全及び創造に関する施策の基本方針
(環境の保全及び創造に関する施策の基本方針)
第10条 県は、第3条に定める基本理念にのっとり、次に掲げる基本方針に基づき、環境の保全及び創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進するものとする。
(1)森林、農地、水辺地等における多様な自然環境の体系的な保全及び創造を図るとともに、野生動植物の保護、地域に固有の生態系の確保その他の生物の多様性の確保を図ること。
(2)資源の採取から廃棄に至る各段階における廃棄物の発生の抑制、資源としての再使用及び再生利用並びに適正な処分を図るとともに、資源及びエネルギーの効率的な利用、新エネルギーの利用等を促進すること。
(3)公害の防止及び有害な化学物質等による大気、水、土壌等の汚染の防止を図り、安全な環境を確保すること。
(4)水と緑に親しむことのできる生活空間及び優れた景観の保全及び創造、公共の場所等の美観の保持並びに周囲の自然と調和した歴史的文化的環境の保全に努め、潤いと安らぎのある快適な環境を確保すること。
(5)水系等により環境に関して密接なつながりを有する地域は、一体的にその環境をとらえるとともに、当該地域の住民の積極的な参加、連携及び協力による環境の保全及び創造を推進すること。
第2節 環境基本計画等
(環境基本計画)
第11条 知事は、環境の保全及び創造に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、環境の保全及び創造に関する基本的な計画(以下「環境基本計画」という。)を定めなければならない。
2 環境基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
(1)環境の保全及び創造に関する総合的かつ長期的な目標及び施策の方向
(2)前号に掲げるもののほか、環境の保全及び創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3 知事は、環境基本計画を定めようとするときは、あらかじめ、岩手県環境審議会の意見を聴かなければならない。
4 知事は、環境基本計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
5 前2項の規定は、環境基本計画の変更について準用する。
(環境の水準)
第12条 県は、県民、事業者及び市町村の理解及び協力の下に、環境の保全及び創造に関する施策を積極的に推進し、環境について高い水準を確保するよう努めるものとする。
第3章 環境の保全及び創造に関する施策等
第1節 環境の保全及び創造に関する施策
(県民参加及び情報提供)
第13条 県は、環境基本計画並びに環境の保全及び創造に関する施策の策定への県民の参加について必要な措置を講ずるものとする。
2 県は、環境の保全及び創造に資するため、環境の保全及び創造に関する情報の県民への提供について必要な措置を講ずるものとする。
(環境に配慮した施策の策定等)
第14条 県は、環境に影響を及ぼすと認められる施策を策定し、及び実施するに当たっては、環境の保全について配慮しなければならない。
(環境に配慮した事業等の誘導)
第15条 県は、事業者による土地の形状の変更、工作物の新設その他これらに類する事業(以下「事業等」という。)が環境の保全に配慮して行われるよう誘導に努めるものとする。
(環境影響評価の推進)
第16条 県は、事業等を行う事業者が、その事業等の実施に当たりあらかじめその事業等に係る環境への影響について自ら適正に調査、予測又は評価を行い、その結果に基づき、その事業等に係る環境の保全について適正に配慮することを推進するため、必要な措置を講ずるものとする。
(規制等の措置)
第17条 県は、公害の防止を図るため、その原因となる行為に関し、規制その他の必要な措置を講じなければならない。
2 県は、自然環境の保全を図るため、自然環境の保全に支障を及ぼすおそれのある行為及び絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関し、規制その他の必要な措置を講じなければならない。
3 前2項に定めるもののほか、県は、環境の保全を図るため、規制その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(助成等の措置)
第18条 県は、県民又は事業者による環境の保全について配慮した施設の整備等を促進するため、助成その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(環境美化に関する意識の向上)
第19条 県は、公共の場所等の美観を損なう行為を防止するため、県民の環境美化に関する意識の向上を図るよう努めるものとする。
(環境教育等の推進)
第20条 県は、青少年をはじめ広く県民及び事業者が環境と人とのかかわり合いについての理解を深めることができるよう、環境に関する教育及び学習の推進について必要な措置を講ずるものとする。
(県民等の自発的な活動の促進)
第21条 県は、県民、事業者又はこれらの者が組織する民間団体が自発的に行う環境保全活動が促進されるよう必要な措置を講ずるものとする。
(人材等の育成)
第22条 県は、環境の保全及び創造に資する専門的知識を有する人材並びに環境保全活動の指導者の育成について必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(調査の実施及び監視等の体制の整備)
第23条 県は、環境の状況の把握に関する調査その他の環境の保全及び創造に関する施策の策定に必要な調査を実施するものとする。
2 県は、環境の状況を把握し、並びに環境の保全及び創造に関する施策を適正に実施するために必要な監視、巡視、測定等の体制の整備を行うものとする。
(科学技術の振興)
第24条 県は、国の試験研究機関、大学、民間等との協力の下に、環境に関する科学技術の研究開発の総合的な推進及びその成果の普及について必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(文化的環境の保全)
第25条 県は、歴史にはぐくまれた文化的環境の保全について必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
第2節 地球環境の保全の推進
(地球環境の保全の推進)
第26条 県は、地球環境の保全に関する施策を推進するものとする。
2 県は、国、国際機関等と連携し、海外の地方公共団体その他の団体等との間で環境の保全に関する技術の相互協力を行う等地球環境の保全に関する国際協力に努めるものとする。
附則
1 この条例は、平成10年4月1日から施行する。
2 岩手県公害防止条例(昭和46年岩手県条例第36号)の一部を次のように改正する。
第1条中「他の法令に特別の定めがある場合を除くほか」を「岩手県環境の保全及び創造に関する基本条例(平成10年岩手県条例第22号)第3条に定める基本理念にのつとり」に改める。
第2条第1号を次のように改める。
(1)公害 岩手県環境の保全及び創造に関する基本条例第2条第3項に規定する公害をいう。
第7条を次のように改める。
第7条 削除
第9条及び第10条を次のように改める。
第9条及び第10条 削除
第11条の見出しを「(公害の状況の公表)」に改め、同条第1項を削り、同条第2項を同条とする。
第12条を次のように改める。
第12条 削除
第14条を次のように改める。
第14条 削除
3 岩手県自然環境保全条例(昭和48年岩手県条例第62号)の一部を次のように改正する。
第1条中「自然環境の保全の基本理念その他」を「岩手県環境の保全及び創造に関する基本条例(平成10年岩手県条例第22号)第3条に定める基本理念にのつとり、」に改める。
第2条を次のように改める。
第2条 削除
第4条を次のように改める。
(県等の責務)
第4条 県、市町村、事業者及び県民は、自然環境の適正な保全が図られるよう、それぞれの立場において努めなければならない。
第6条から第10条までを次のように改める。
第6条から第10条まで 削除
附則(平成11年12月17日条例第79号)
この条例は、平成12年4月1日から施行する。
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