内外情勢調査会盛岡支部懇談会における知事講演 「人口戦略と岩手の産業」

ページ番号1081994  更新日 令和7年3月25日

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とき:令和6年11月28日(木曜日)
ところ:ホテルロイヤル盛岡

はじめに

 内外情勢調査会盛岡支部懇談会での講演の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 「人口戦略と岩手の産業」というテーマで今日はお話をしたいと思います。

 今年6月、大連で行われた世界経済フォーラム主催の「夏季ダボス会議」に参加をいたしました。世界経済フォーラムを英語で言うとワールド・エコノミック・フォーラムと言いますけれども、スイス・ダボス会議の主催で有名です。また、ジェンダーギャップ指数を毎年発表していることでも有名です。

 夏には中国のどこかで夏季ダボス会議をやっているのですが、今年は大連で行われ、世界各国から政財界、市民社会、国際機関のリーダーや起業家、経営者、学術関係者など1,600人以上が参加して、講演やパネルディスカッションなどが行われました。

 そしてスイスのダボス会議や夏季ダボス会議の責任者であるミレク・デュセクさんというマネージング・ディレクターと20~30分ぐらい意見交換を行うこともできました。その意見交換で話題にしたのが、世界経済フォーラムが発表している「The Future of Growth Report 2024」です。Futureと言っていますけれど、「これから」ぐらいの意味ですので、「これからの経済成長レポート2024」というものであります。

 このレポートは、これからの経済成長というものは、「イノベーション性」「インクルーシブ性」「持続可能性」「強靱性」の4つの条件を満たさなければならないということを言っています。名詞で整理しましたけれど、覚えるには形容詞で覚える方がいいかもしれません。イノベーティブ、インクルーシブ、サステナブル、レジリエントという条件です。

 経済成長というものにイノベーション性を持っていなければならないというのは、これは当たり前といえば当たり前で、イノベーション、技術革新、生産性の向上によって成長するというのが当たり前ですけれども、これからはそれだけでは駄目ですよということです。

 インクルーシブというのは差別しない、裏返すと平等ということで、特にジェンダーギャップの問題もあり、日本が今、直面している最大の課題の1つでもあります。女性の働き方の問題や障がい者の方々の働き方、高齢者、また日本の場合ですと外国人が働くということも大きなテーマになりますが、そのように働けない人や働き方において差別される人が出てこないようにということが2番目に掲げられています。

 3番目の持続可能性、サステナブル、サステナビリティというのは、環境に優しいということで、脱炭素化、気候変動を引き起こさない、地球温暖化を起こさないということが求められるということです。

 最後のレジリエント、強靱性も日本では防災分野でおなじみの言葉であり、強靱化対策という国の事業もありますけれども、河川整備や海岸であれば津波防災設備などを充実させて災害に強くなる。またハード面だけではなく、ソフト面でも災害に強くなる。そして災害だけではなくて、感染症の流行などの危機管理、危機対応がちゃんとできるということが、レジリエント、強靱性ということであり、これからの経済成長というものは、この条件を満たしていなければならないということについて話をしました。

 どういう話をしたかというと、岩手県はこれを全部やっていますよという話をしました。まず、イノベーション性については、県民計画のもとに、DX(デジタル・トランスフォーメーション)をはじめ、県民計画の各分野でイノベーションを進めています。

 そして、インクルーシブについては、人口戦略の観点から、今ジェンダーギャップ解消、男女の伝統的役割意識やアンコンシャスバイアスをなくすことに力を入れていますし、性別だけではなく、年齢や障がいの有無にかかわらず活躍できるような社会を目指しています。

 持続可能性については、これも岩手県はGX(グリーン・トランスフォーメーション)ということを掲げて、地球温暖化防止を目指しています。

 強靱性(レジリエント)については、もうこれは東日本大震災津波からの復興、そしてその後の様々な防災対策、そしてコロナ対策のような感染症対策も含め、安全・安心な地域づくりに取り組んでおり、実は地方こそが世界経済のあるべき姿を実現する場所であり、地方こそ世界経済フォーラムが目指しているような経済成長を実現させられる場所であるという話をしたところ、デュセクマネージングディレクターが大いに感心をしてくれました。

 自治体から大連での夏季ダボス会議に参加した人はほとんどおらず、日本から私のほか、北九州市長さんが参加していましたが、やはり国際的な会議の中で地方自治体というものの存在が今まであまり見られていなかったのかなと思うのですけれども、そこに新しい視点を世界経済フォーラムの幹部に注入することができたかなと思います。

1 岩手県の人口戦略

《岩手県の有効求人倍率》

 まず岩手県の人口戦略です。岩手の産業について語る場合に、それは人口戦略にも資するものであるべきと考えるからであります。

 さて、統計が公表されている1963年以降、岩手県の有効求人倍率は1.0に達することがほとんどなく、地方には仕事がないというような状況が続きました。岩手から出ないと職に就けないというようなイメージが広がりました。

 有効求人倍率が0.5を下回る時期もあり、そういうときは岩手県の中で働きたいと思っている人のうち半分は県外に出ないと働けないという状況だったわけです。ところが2013年から有効求人倍率が常に1を超える時代に入りました。人手不足時代と言っていいと思います。

 これは全国共通の現象であり、少子化で若い世代の人口が少なくなったので全国一斉に人手不足時代に突入しているのですけれども、岩手の場合は復興事業により、さらに大きく不足が感じられたと思います。企業の側から見ますと、人手不足というのは大変なことですけれど、働こうとする側から見ますと、県外に転出せずに岩手で働くことができる、そういう時代になったということでもあります。 

《岩手県の生産年齢人口と労働力人口》

 人手不足をもたらしたのは、生産年齢人口の減少であり、このグラフが少子化と、それに続く生産年齢人口の減少、そして高齢化を示すグラフであります。

 ちなみに岩手県の生産年齢人口が1985年から減っているのですが、労働力人口は生産年齢人口ほど減っていません。生産年齢人口というのは15歳以上64歳以下の人口ですので、まずその人たちが100%働いているとは限りません。労働力人口というのは、15歳以上の人口のうち就業者・完全失業者合計です。そうしますと65歳以上で働く人が増えているということが推測されるわけです。

 高齢者の労働参加が進んだということと、あとは女性の労働参加が進み、生産年齢人口がまず下がり始めた頃に、労働力人口はむしろさらに増えたのですが、たださすがに最近になって労働力人口も減ってきていますので、高齢者や女性でまだまだ働きたいけど働けないという人の働く余地はあります。特に女性の場合、103万円とか110万円の壁とかもあって、充分に働けていないところもありますので、そういったところが人手不足対策になるだろうということがわかります。

《働き方改革》

 人手不足時代においては、女性や高齢者、さらに障がい者などが活躍できるよう、職場の労働条件の改善や生産性の向上、そして賃金の向上などが求められます。

 岩手県は、行政、産業界、教育機関等が一体となった「いわてで働こう推進協議会」で「いわてで働こう宣言2023」を策定し、その中で「岩手において、女性も男性も共に働き、共に家事や育児ができる働き方を実現します。」と宣言しています。

 いわてで働こう推進協議会を核として、専門家による個別企業への指導支援や働き方改革のモデル事例の創出などに取り組むとともに、優れた企業の取組を表彰する「いわて働き方改革AWARD」を実施しております。「いわて働き方改革AWARD」は、長時間労働の削減やDX、職場環境改善、女性活躍推進、リスキリングなどの好事例を表彰しています。

 昨年度は、男性育児休業の取得促進を行った「(社福)つくし会」、社員の声を取り入れ、古民家やスキー場のロッジを借りてワーケーションを実施するなどした「株式会社ネクスト」、記念日や誕生日などを理由とした休暇(メモリアル休暇)や取得理由のない休暇(みんとる休暇)など、様々な独自の休暇制度を制定し、長年にわたり長時間労働削減に取り組んできた「株式会社アイオー精密」の3社が受賞しています。

 受賞企業の取組は、就職活動応援メディアなどの県の広報媒体でPRするとともに、受賞企業への現場見学会を開催して、取組の普及拡大に努めています。

 DX(デジタル・トランスフォーメーション)については、DX推進連携会議で県内の企業団体のDXに繋がる優良事例を表彰する「いわてDX大賞」で優良事例を広く紹介しています。

 昨年度は「株式会社西部開発農産」が大賞を受賞しました。株式会社西部開発農産は北上市で約870ヘクタールの農地を管理していますが、スマホアプリで圃場ごとの作業時間や農業機械の稼働状況をリアルタイムで把握し、それを自動で記録する仕組みを整えました。そして自動で記録されたデータを活用して、次の作業計画を立てる、これまでの勘と経験に頼る生産からの脱却が評価されました。

 国や地方の人口戦略というのは、個人一人ひとりの人生戦略に対応するものでなければなりません。多様化する一人ひとりの人生戦略が成功するように、岩手県の人口戦略を組み立てていこうと思います。

2 岩手県の農林水産業

《農業》

 ここから、いよいよ産業の話です。人生戦略の中心になるのは生業でありまして、これに行政が対応するのが産業政策です。

 まず農業です。仕事として主に自営農業に従事している基幹的農業従事者数は、20年前の2000年(平成12年)と比べて2020年(令和2年)には56%減少しています。そして農業経営体数も15年前の2005年(平成17年)と比べて2020年(令和2年)には48.5%減少しています。

 これを見ると岩手の農業はもう半分ぐらいの規模になっているのかと思うかもしれませんが、農業産出額は基本的に減っておりません。一時、減少傾向が見られましたが、2011年(平成23年)からは増加傾向にあります。

 岩手の農業というと、まず米を思い出す方が多いのではないかと思いますが、農業産出額でいきますと、米は全体の2割弱(17.6%)です。多いのは畜産で、牛豚鶏などの畜産を合わせると約6割となります。そして鶏卵やブロイラーが畜産の半分を占めるという岩手の農業産出額の状況になっています。

 基幹的農業従事者や農業経営体数が減少して、農業産出額が増加しているということは、経営の規模が拡大しているということです。2020年(令和2年)の販売額が3,000万円以上の農業経営体は15年前の2005年(平成17年)に比べ30%増加しています。2020年(令和2年)の販売額が1億円以上の農業経営体は15年前の2005年(平成17年)に比べ50%増加しています。

 販売額3,000万以上、あるいは1億円以上の経営体数が着実に増加するなど、経営規模の拡大や経営の高度化が進んでいます。

 そしてトラクターの自動操舵や施設野菜の環境制御、生産性の高い農業を可能とするスマート農業技術の導入が拡大しています。県は、これらを加速すべく、新規就業者の確保や担い手の育成、農業経営体の経営力向上などを行っています。

 岩手県の新規就農者は、年間確保目標数を260人と設定していましたが、2019年(令和元年)以降は目標を上回る人数で推移しましたので、今の目標数は280人となっており、その目標は達成されています。

 農業情報総合サイト「マイナビ農業」というのがありまして、県内で活躍する新規就農者の農業経営や暮らしを発信しています。岩手県公式動画チャンネルでも動画を上げています。

 冬の雫石町に広がる一面の銀世界に魅了され、家族4人で移住して雇用就農した方や、地元にUターン後、農業大学校で研修して独立した方、経営者になる夢の選択肢の1つが農業であったということで就農した方など、様々な形で就農した方々を紹介しています。

 農業経営の担い手を養成する中核的な機関が農業高校や農業大学校です。新規学卒就農者の多くは、農業高校や農業大学校の卒業生です。農業高校は、農業の基礎的知識・技術の習得を合わせて行っており、盛岡農業高校は毎年ローソンと共同開発で商品化を行うなど、特色ある教育を行っています。

 農業大学校は、地域農業の発展を担うリーダーとなる青年農業者を育成するため、実学・実践を重視したカリキュラムで議論と技術を一体的に学ぶ教育を行っています。今年度は、コロナ禍で休止していた海外農業研修を5年ぶりに実施して、オーストラリアでファームステイや農業経営体の視察などを行いました。

 国際競争時代に通用する経営感覚と起業家マインドを持った農業経営者や地域リーダーを養成するため、岩手大学などと連携し、「いわてアグリフロンティアスクール」を開設しています。経営革新を実現するために必要な財務・労務管理や生産管理、マーケティングなどの農業経営に関わる学習や、食ビジネスとして発展させていくための6次産業化の学習、県内外の先進事例の現地研修など、意欲ある農家・指導者のレベルアップやベテラン農家の学び直しを行っています。令和5年度の修了生に感想聞くと、期待以上だった、そして期待通りという声を合わせると95.8%となっています。

 今年度、軽米町にある岩手県農業研究センター県北農業研究所に「いわてグリーン農業アカデミー」を新設しました。県北ではブロイラー等の畜産業が盛んですので、堆肥等の豊富な有機資源が利用できます。また雑穀生産における環境負荷低減の取組や研究の蓄積を活用し、有機農業などの環境負荷を低減する農業の実践者を育成しています。1期生は27人で、実際に有機農業を行っている農園での研修やスマート農機の操作実習、土壌診断の実習などを行っています。 

《林業》

 続いて林業です。林業従事者数も近年減少傾向です。高性能林業機械の導入が進んで生産性が向上していますが、林業事業者から人手不足だという声が上がっています。

 岩手県の森林面積は県面積の約77%を占め、北海道に次ぐ全国第2位の森林面積であります。戦後に造成してきた人工林が本格的な利用期を迎えていて、伐採後の再造林など森林整備に人材の確保が必要になっています。

 林業産出額ですが、東日本大震災津波で一時落ち込みましたが、被災工場の復旧や復興需要で2015年(平成27年)には231億円と震災の前年を上回りました。2016年(平成28年)以降、復興需要がピークアウトして、新型コロナウイルス感染症による経済活動の落ち込みや、2022年(令和4年)のウッドショックと呼ばれた価格高騰などの乱高下がありますが、概ね横ばいというような形で、2022年(令和4年)にはぐっとまた調子良くなっております。林業従事者数は減少傾向にありますが、林業産出額は一定程度の規模を保っているという状況です。

 そして担い手の育成です。2017年(平成29年)に、「いわて林業アカデミー」を開講し、将来的に林業経営体の中核となる現場技術者を養成しています。開講以降、111人の修了生のうち110人が林業分野、森林組合や民間事業体等に就業をしていて、今年度は15名が研修しています。

 いわて林業アカデミーでは、国、研究機関、大学、林業関係団体、企業などによるサポートチームの手厚い支援のもと、1年をかけて林業に必要な資格取得を進め、造林から伐採、利用まで林業現場での実践力をつけています。

《漁業》

 次に漁業です。漁業従事者数は東日本大震災津波で大きく減り、震災前に比べ49.8%の減であります。漁業産出額については、東日本大震災津波からの復旧・復興で回復が進んでいたのですが、近年は主要魚種の不漁問題、サケやサンマが取れないという問題があり、2017年(平成29年)以降、減少傾向にあります。

 2022年(令和4年)はぐっと増えているのですが、これは新型コロナウイルス感染症で海外のマグロ船の操業が減少し、日本のマグロ価格が上昇したということ、そしてマグロがサケを取る定置網にもちょくちょくかかるようになってきたという、そういうイレギュラーが要因ではありますが、それで漁業産出額がぐっと上がっています。漁業産出額には様々な要因が影響しているということでもあります。

 地域漁業の核になる販売高1,000万円以上の漁業経営体の数は、震災以降、徐々に増加して、2017年(平成29年)に震災前の平均を上回りました。しかし、近年、主要魚種の不漁問題があり、2018年(平成30年)以降減少傾向にあります。

 ただ、漁業従事者数が震災前と比べ半分まで減少しましたが、中核的漁業経営体数はそこまでは減っていないというところがあります。

 主要魚種の漁獲量は、東日本大震災津波以前と比べ、サケは0.5%しか取れない、サンマは8.4%、スルメイカは14.0%と極端な不漁です。主要魚種の資源回復の追求は行っていますけれども、新たな養殖業として、2019年度(令和元年度)以降、県内各地でサケ・マスの海面養殖試験を開始し、その後、事業が本格化しています。今年の8月末現在のサケ・マスの海面養殖の生産量が2,000トンを超えました。震災前の定置網によるサケの水揚量2万5,000トン規模に比べますと、まだまだ少ないのですが、海面養殖のサケ・マス類は寿司ネタやフランス料理などにも使用され、付加価値が高いところがあります。

 近年の高水温の影響を受けてホタテガイ等の養殖が難しくなってきています。これに対して、新たにアサリの養殖の事業化に取り組んでいます。アサリはホタテガイに比べて、高水温に強く、貝毒の影響が少ないです。そしてヨーロッパヒラガキというカキが山田湾などで見つかり、これも高水温に強く、貝毒の影響が少ないとされていて、ヨーロッパでは高級食材とされていますので、ヨーロッパヒラガキの可能性も追求してまいります。

 ウニの蓄養も行っています。ウニが増えすぎ、その増えたウニがことごとくやせて売り物にならないということが起きているのですけれども、この増えすぎてやせているウニを漁港の空いているところなどに移して、そこで様々な餌をやって、実入りを回復させる。こういう蓄養を行っておりまして、年末など普通のウニの旬とは違う時期、高い単価が期待できる時期に出荷するということを始めています。

 担い手の育成としては「いわて水産アカデミー」があります。2019年(平成31年)に開講以来、34人が研修を修了し、全員が県内で漁業就業しています。今年度は13人が研修中です。いわて水産アカデミーでは、関係法令やロープワークなどの基礎的な知識・技術からICT等を活用した最新の漁業経営まで研修を行っています。研修のうち約9割は漁業現場におけるOJT研修です。研修生が希望する研修地や指導者等のマッチングを行って、修了者に対しては就業先への個別訪問などのフォローを行っています。 

《新しい商品・新しい販路》

 農林水産業は、農林水産物の流通や加工と両輪を成しています。

 加工については、小野食品株式会社が地元三陸産の新鮮な水産物を生かして、核家族化、高齢化、マンション暮らし、生の魚を調理した後のごみ処理もままならない、魚自体をさばけないという消費者のニーズに応える商品を開発しています。食べる直前に袋ごとお湯に入れて温める商品は、自家消費だけではなく、贈答品としての人気を集めており、売上高は震災前を大きく上回っています。

 また、株式会社雨風太陽は代表が花巻出身ですが、全国の農家さん、漁師さんから新鮮な旬の食材を直接購入できるアプリ「ポケットマルシェ」を運営しています。

 株式会社雨風太陽は、東日本大震災津波を契機に生まれ、本来不可分である消費者と生産者、都市と地方、人間と自然が、今分断されているということで、都市と地方の間に関係人口を生み出したいというふうにしています。食べ物付き情報誌「食べる通信」の発刊や生産者を訪れる地方留学プログラム「ポケマルおやこ地方留学」を行っています。

 株式会社雨風太陽はNPOとして創業しましたが、昨年12月、東証グロース市場に上場し、社会性と経済性の両立を目指しています。

3 岩手県のものづくり産業

 続きまして、いわゆる第2次産業、岩手県の経済を牽引している国際競争力の高いものづくり産業についてです。

 岩手の製造業は自動車関連産業と半導体関連産業を2つの山とする連峰型の産業集積を形成してきましたが、第3の山として、医薬・医療機器関連産業の創出にも取り組んでいます。

 岩手の製造品出荷額は、統計が開始された1939年(昭和14年)以降、初めて3兆円台に達しました。

 岩手県の最低賃金は全国平均を下回りますが、岩手県の10代後半の正社員の年収中央値は全国の中央値を上回る水準となっています。

《自動車関連産業》

 自動車関連産業では、東北の自動車生産台数は岩手を中心に伸びており、東日本大震災津波後、トヨタ自動車株式会社が東北を国内第3の生産拠点と位置付け、コンパクトカーの生産拠点となっています。震災前に比べてトヨタ自動車東日本株式会社の生産台数は1.6倍の47万台に成長し、従業員も5,300人と3,000人増加しています。

 トヨタ自動車東日本株式会社岩手工場では、2023年(令和5年)の乗用車国内新車販売台数で首位を獲得したヤリス、東北復興の星であるアクアなど、有名な車を生産しています。トヨタ自動車東日本株式会社岩手工場では、高級ブランドレクサスの新型モデル「LBX(エルビーエックス)」の生産もされています。

 自動車関連産業における女性の活躍推進や女性の人材確保のため、トヨタ自動車東日本株式会社と周辺企業群、町、県が一体となって岩手工場敷地内に企業内保育所を整備しました。

 今年から岩手県企業局が花巻市の早池峰ダムでの水力発電で生み出した電力を金ケ崎町にあるトヨタ自動車東日本株式会社岩手工場などに供給しており、LBXの製造にも使用され、製造工程で脱炭素化が進んでいます。インクルーシブやサステナブルということを地方で実践しています。

 自動車関連産業は今、「100年に1度の大変革期」と言われ、各自動車メーカーは電動化や自動運転などの新技術に対応しており、情報通信分野等の事業所との連携も進めています。こうした最先端の自動車関連技術を習得し、次世代の自動車産業を担う人材の育成が求められています。

 岩手県では、県内高校生を対象に「モビリティハイスクール」を実施し、講義のほか、EVキットカーを用いた実習を行っています。今年度も6つの高校で実施します。

 一関高専では「モビリティカレッジ」を実施して、応用的・実践的な実習を行うとともに、企業との共同研究を通じて、より実践力の高い技術者を育成する「モビリティラボ」も実施しています。

《半導体関連産業》

 次に半導体関連産業です。2022年(令和4年)に岩手県の製造品出荷額が初めて3兆円を超えるということに貢献しているのは半導体関連産業です。これまで自動車関連の製造品出荷額がトップでしたが、2022年(令和4年)に初めて半導体関連の製造品出荷額が自動車関連の製造品出荷額を抜きました。

 2020年(令和2年)にキオクシア岩手株式会社の第1製造棟が稼働して3次元フラッシュメモリの生産が開始され、順調に売上げを伸ばしてきていることが大きいです。

 1980年代には世界一のシェアを誇っていた日本の半導体産業ですが、時代の流れに取り残され、競争力が落ちてまいりました。近年、半導体産業を復活させようという機運が高まっています。世界最大手TSMCの熊本県菊陽町への進出や、北海道千歳市におけるラピダス株式会社の工場新設など、日本各地で半導体工場の新設や増設が相次いでいます。

 岩手では、今年7月にキオクシア岩手株式会社の第2製造棟が完成し、来年秋の稼動を予定しています。岩手県の半導体関連産業は約50年に及ぶ歴史があり、北上川流域地域を中心に様々な基盤技術を有する地場企業群が集積しており、岩手発のオリジナル技術の蓄積があるなど、全国有数の半導体関連産業集積地域として発展しています。

 キオクシア岩手株式会社に加え、東京エレクトロンテクノロジーソリューションズ株式会社の増設もあり、メンテナンス業務や、半導体製造装置メーカー向けの板金・溶接など、県内企業が半導体関連産業に参入する機会が拡大しています。

 半導体関連企業、産業界、教育機関、支援機関等が一体となって設立された「いわて半導体関連産業集積促進協議会(I-SEP(アイセップ))」は、半導体産業のサプライチェーンに入ることができるよう、必要なノウハウの習得や技術力の向上、大手半導体企業と県内企業の個別のマッチングなどに積極的に取り組んでいます。

 半導体関連産業でも人材不足の懸念が上がっています。I-SEPでは半導体関連産業の持続的な成長を支える人材を育成・確保するため、一関工業高校や一関工業高等専門学校、岩手大学などの学生や社会人を対象に半導体人材育成講座「いわて半導体アカデミー」を実施しています。

 また、岩手大学理工学部は2025年(令和7年)から新たに半導体人材育成プログラムを導入し、1・2年次に「半導体入門」「半導体デバイスと製造プロセス」などの共通の授業を設け、3年次にはコースごとに専門に応じた半導体関連の授業が受けられるようになります。

 来年4月、国内初の産学官連携による「半導体関連人材育成施設」が開設予定です。施設の運営は、人材育成に大きな実績を有する「いわて産業振興センター」が担い、施設の運営費用はキオクシア岩手株式会社や株式会社ジャパンセミコンダクター、株式会社デンソー岩手などの関連企業や地場企業など、施設を利用する企業からの応分負担により賄う予定です。研修の実施にあたってはI-SEPが全面的に協力します。指導員は県内半導体関連企業の協力のもと、企業の社員が担い、半導体関連企業のOB人材も活用します。半導体関連産業の人材育成は喫緊の課題ですので、産学官が連携して取り組みます。

《医薬・医療機器関連産業》

 景気に左右されにくく成長が見込まれる医薬・医療機器関連産業が、自動車や半導体に次ぐ、ものづくり産業における第3の柱です。

 2008年(平成20年)、県内企業の医療機器産業分野への展開を推進するため、産学官が連携して「いわて医療機器事業化研究会」を設立しました。2010年(平成22年)には「岩手県医療機器関連産業創出戦略」を策定しました。いわて医療機器事業化研究会の分科会の活動を契機に、2014年(平成26年)には、地域から世界に発信するライフサイエンス機器産業を生み出すことを目的に、民間主導の「東北ライフサイエンス・インストルメンツ・クラスター(TOLIC(トーリック))」が設立され、民間の取組も活発になってきています。

 2020年(令和2年)に国や県の支援をもとに、岩手県工業技術センターがヘルステック・イノベーション・ハブ(HIH)を整備して、TOLICの活動拠点となり、岩手県の医薬・医療機器関連産業を牽引する拠点となっています。

 「株式会社アイカムス・ラボ」は、岩手大学と共同開発したプラスチック歯車と特許取得技術を用いたマイクロアクチュエーターを活用した製品の製造・販売を行っています。

 「セルスペクト株式会社」は、いつでもどこでも簡単に検査できる新型コロナウイルスの抗原検査キットの開発・販売を行っています。

 セルスペクト株式会社の岩渕社長や株式会社アイカムス・ラボの片野会長はTOLICの役員であり、TOLICを立ち上げる中心になりました。TOLICは昨年「イノベーションネットアワード2023」において最優秀賞である経済産業大臣賞を受賞しました。TOLICの地域の知的・人的資源に基づく民間主導で世界を目指す活動が、地域発のイノベーションによる地域活性化として高く評価されました。

 設立10周年を迎えるTOLICは、地域ファンド、盛岡市、地銀3行などにより、ライフサイエンス関連のスタートアップに投資する新ファンドを設立し、さらなるスタートアップ企業の創出と成長を目指して連携を強めています。

 TOLICは2020年度(令和2年度)からインターンシップを受け入れています。2022年(令和4年)には、学生のインターンシップの受入れや共同研究を行ってきた一関高等専門学校と包括連携協定を結び、一関高専の化学バイオ系教育課程の科目に「ヘルステック創生理工連携講座」を設置しました。

 ドイツで開催された世界最大の医療機器展MEDICA(メディカ)に高校生や高専生を派遣するなど、次世代人材の育成も行っています。 

4 起業・スタートアップ

《ヘラルボニー》

 次に起業・スタートアップです。岩手発のスタートアップとして今最も注目されている企業は、障がいのある作家とライセンス契約を結び、商品化を行う株式会社ヘラルボニーではないでしょうか。

 岩手県も株式会社ヘラルボニーとコラボして、岩手で働く魅力・価値を発信する冊子「冒険者の仕事場」を作成したり、昨年実施した全国植樹祭の式典メインアトラクションの衣装プロデュースをしていただきました。株式会社ヘラルボニーは今年5月、ルイ・ヴィトンなどを傘下に持つLVMH(モネ・ヘルシー・ルイ・ヴィトン)が主催する「イノベーション・アワード」で、「Employee Experience, Diversity & Inclusion」のカテゴリで賞を受けました。89か国1,545社の中からファイナリスト18社のひとつに選ばれて、受賞に至ったということで、日本企業がファイナリストに進出し、さらに受賞を果たすというのは、それぞれ初めてのことであります。

 冒頭で述べたように、世界経済のあるべき姿を地方において実現する経済成長、これからの経済成長は、イノベーティブで、そしてインクルーシブで、またサステナブルでレジリエントでなければならないということを、かなり株式会社ヘラルボニーは実践し、世界的にも評価されていると言っていいと思います。

《ファーメンステーション》

 次に株式会社ファーメンステーションです。2009年(平成21年)創業で奥州市に工場があります。規格外の農産物や食品・飲料製造時の副産物、フードロス、未利用資源を独自の発酵技術で加工して、他にはないサステナブルなオリジナル原料を製造しています。

 奥州市の休耕田で栽培されたオーガニックの米を発酵・蒸留して、エタノールの製造をしています。このエタノールと、シードルを生産する際に出るリンゴの搾りかすから作られたリンゴエタノールを配合した99%を天然由来原料使用の除菌ウェットティッシュを販売しています。

 米から作るエタノールの製造過程で残った発酵粕を化粧品の原材料に使用したり、鳥や牛のえさに活用したりして鶏糞や牛糞を肥料にするなど、ごみを出さない、循環型の取組を実践しています。

 岩手のわかめを収穫した際に、普段は廃棄されている根元部分を使用したシャンプー・コンディショナーもあります。 

《インパクトスタートアップ協会》

 県は株式会社ヘラルボニーや株式会社ファーメンステーション、また株式会社雨風太陽などが正会員となっている「インパクトスタートアップ協会」と昨年、意見交換を行いました。全国団体です。

 インパクトスタートアップというのは、社会課題の解決と経済的な成長を両立しながら、成長する企業を目指そうというものであります。

 株式会社ヘラルボニーのように知的障がいのある芸術家のアートを生かした新しいビジネスモデルを構築したり、株式会社ファーメンステーションのように独自の発酵技術で未利用資源の再生・循環を構築するなど、社会的な問題や課題に取り組み、これまでになかった社会に新しい動きをもたらすということです。

 インパクトスタートアップ協会はインパクトスタートアップのエコシステムを構築し、持続可能な社会を実現するということを目的にし、2022年(令和4年)に設立され、野村ホールディングスやみずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ、丸井グループなどが賛同会員となっています。

 盛岡市がインパクトスタートアップの設立に投資をしようということで、今年9月、内舘茂市長が「インパクトスタートアップ宣言」を行い、成長事業の構想段階や発展途上にあるスタートアップを対象に、専門家によるセミナーやメンタリングの支援を行うこととしています。

《いわてスタートアップ推進プラットフォーム》

 スタートアップエコシステムとは、スタートアップ企業が創業から成長、そして成功に至るまでのプロセスで必要な様々なサポートとなる起業家支援施設やコワーキングスペース、アクセラレーションプログラム、VC(ベンチャーキャピタル)、エンジェル投資家、そして大学などの研究機関、地方自治体などが含まれます。

 岩手県におきましては、「いわてスタートアップ推進プラットフォーム」を設立しています。起業支援拠点である岩手イノベーションベースや、経営相談など中小規模企業に対する経営支援のノウハウを持つ商工団体、様々な技術や研究成果を持つ高等教育機関、金融機関、市町村などの96団体が参画し、事務局を県が担っております。

 地域経済の新たな担い手となる起業家の成長を支援して、成長した起業家が次の起業家を支援するということで、継続的に起業家が生み出される仕組み、スタートアップエコシステムを構築していきたいと思います。

 いわてスタートアップ推進プラットフォームは、昨年キックオフミーティングを行い、起業家や起業を志す者と支援者との交流を行いました。そして、「新規事業開発支援分科会」や「創業支援分科会」、「女性の起業支援分科会」の3つを設置して、効果的な支援手法を検討しています。

5 ゾーンプロジェクト

《新しい時代を切り拓くプロジェクト》

 それでは最後、地域の視点からゾーンプロジェクトについてお話をします。

 岩手県の総合計画「いわて県民計画(2019~2028)」において11の「新しい時代を切り拓くプロジェクト」というのが掲げられております。これは新しい技術を取り入れたり、新しい社会潮流を取り入れたり、そういった変化を生かしながら、柔軟に政策を進めていこうということで、普通の計画と違うプロジェクトというジャンルを立てて、そこに11のプロジェクトを並べています。一番上にあるのはILC(国際リニアコライダー)プロジェクトですが、その次に並んでいる3つのプロジェクトが岩手県を大体3つに分けて、それぞれの地域の開発を目指すゾーンプロジェクトというようになっております。

《北上川バレープロジェクト》

 まずは北上川流域の「北上川バレープロジェクト」です。ざっくり北上川流域というイメージであります。北上川流域を北上川バレーと言っているのは、アメリカのシリコンバレーをもじっております。

 北上川は東北第一の大河であり、流域面積が全国第4位、長さも全国第5位という川です。日本の他の大河は、人が住んでいないようなところを蛇行しながら流れたり、人が住んでいるところに流れていても、そこに並行して新幹線や高速道路はできないような形で流れていたりとか、なかなか流域面積や川の長さをフルに活用しにくい大河ばかりですけれど、北上川というのは川に平行して、高速道路や新幹線が通っておりますし、花巻市には空港があります。そして、川に沿って県庁所在地の盛岡市をはじめ、多くのまちが形成されているわけです。

 生活用水(水道水)、農業用水、工業用水、また発電用水も賄うことができるという、こういう北上川を中心とした北上川バレーというような地形は、世界中探してもなかなか無いと言っていいと思います。

 先端的な工場や有機などにも挑戦するような安全安心な農場もあり、森林もすぐそばにあり、世界遺産・平泉もありますし、郷土芸能が盛んに行われていたり、また新幹線駅に加え、在来線もありますので、駅ごとに駅前のにぎわいもあります。非常に生活するのに良く、温泉やスキー場、ゴルフ場にも事欠きませんし、ここで働いて、プラスここで子供を育てるというのは非常に良いのだということを改めて発信していきたいと思います。

 こういう地理的条件に恵まれて、自動車関連産業や半導体関連産業の集積が進んでいるというところがあります。

《三陸防災復興ゾーンプロジェクト》

 そして沿岸全体を「三陸防災復興ゾーンプロジェクト」として取り組んでいます。

 東日本大震災津波は大きな悲劇だったのですが、そこからの復旧・復興を通じて、震災前には無かったような、中心市街地やまちづくりが各市町村で行われました。そして復興道路と呼ばれる自動車専用道路もでき、三陸鉄道も何とか生き残っております。そして港湾機能がここにはありまして、クルーズ船の寄港、コンテナ航路利用などは、震災前よりずっと多くなってきています。

 こういうところですので東日本大震災津波の経験を生かした防災ということについては、全国的・国際的な拠点にもなり得るところであります。

 みちのく潮風トレイルや三陸ジオパークなど世界とつながる魅力もありますし、食やスポーツも国内・海外に大いに引き合いのあるところであります。

 交通の便も良くなって、岩手三陸沿岸が1つになり、沿岸が内陸と1つになり、また全国・海外とも繋がっていくというような地域として発展していくという可能性が広がっています。

《北いわて産業・社会革新ゾーンプロジェクト》

 そして、いわゆる県北は「北いわて産業・社会革新ゾーンプロジェクト」です。革新というのはイノベーションでありますので、県民計画策定時にこういう名前にしているのですが、北いわてイノベーションゾーンといった方が、すっきり分かりやすいと最近思っています。イノベーションを活発にできるぞということであります。

 再生可能エネルギー資源が多くあり、実際様々な地域に根差した再生可能エネルギーの活用がどんどん進んでいます。また、漆関連産業、お酒やせんべいなどの食産業、アパレル産業などの特色ある産業が地域に根づいて発展しているというところでもあります。

 そして、御所野遺跡が北海道・北東北の縄文遺跡群の構成資産として世界遺産に登録されました。これにより、岩手県北というのは、青森、秋田さらに函館、北海道の南の部分に繋がっていく1つの拠点なのだという、北に向かっていく拠点性というものが、縄文遺跡群が世界遺産に登録されたことで見えてきているというところがあります。実際、函館まで新幹線が通っていまして、交流人口の拡大への期待が高まっています。

 こうした地域の地理的条件、歴史的条件、また鉄道の話もしましたが、高速道路が通っていて、それぞれの地域の身近なところにインターチェンジがあって非常に活用しやすい地域でもあります。

 ある意味で、伝統的な産業化の路線を進んでいる県南の北上川バレーや、復興を通じて大きな可能性が広がっている沿岸と比べても、世界経済フォーラムがイメージしているような、これからの経済成長を実現できる、より先進的な地域として発展する可能性があるというふうに見ております。東京大学も同じ発想でイノベーションの場としての北いわてを高く評価しています。プラチナ社会研究という東大の研究所や研究者のネットワークがあるのですが、これが北いわて産業・社会革新ゾーンに入って、そこで地域振興の絵を描き、色々と具体的な事業を始めているところです。

 東京大学をはじめ、学術の先端と連携し、また北いわて13市町村が入って、産学官で構成される北いわて産業・社会革新推進コンソーシアムというのが立ち上がっております。北いわての資源や産業を生かして持続的に発展する地域づくりを推進してまいります。

おわりに

 地域的には、北上川バレー、三陸防災復興、そして北いわて産業・社会革新という3つのゾーンそれぞれに日本や世界の他には無いような特徴や可能性があります。

 そして岩手全体としては、1次産業、2次産業、3次産業のバランスがとれていると思います。

 1次産業については、広い県土と変化に富んだ気象・立地条件を生かした大きなフロンティアがありますし、2次産業は、自動車関連産業、半導体関連産業、そして医薬・医療機器関連産業を3つの山としながら産業振興を進めていくことができる。そして3次産業についても、豊かな自然や歴史・文化を生かした観光業や食産業などに加えて、スタートアップが盛んになるというように様々な可能性を秘めています。

 大谷翔平選手や菊池雄星選手が野球で世界に羽ばたいているように、産業面においても岩手から世界に羽ばたくときであります。

 岩手の良さや可能性が岩手県内、そして岩手県外の人にも知られていないというところが課題であり、岩手県内の企業は働き方改革などを行って、どんどん魅力的になっていっていますし、また全国的な企業も岩手県内で操業し、非常に条件の良いところがあるというようなことが、県内の若い人たちにまだまだ知られていませんし、その親御さんなど家族にも知られていないという問題がありますので、これを周知することをさらに徹底していきたいと思います。

 ちなみに、今年は人口戦略の観点から人口の少ない町村に光を当てることを念頭に様々取り組んでおりまして、普代村は岩手で一番人口の少ない村なのですけれども、人口が少ないところというのは、そこに問題があって人口が少ないというよりは、実は良いものがたくさんあるにも関わらず、それが知られていないこと。そして、やはり交通の便が悪い。そのことで人口が少ないというところが本質なのではないかと思います。

 これは岩手県のような県単位で見ても、日本中、人口が減ってきていますし、特に岩手や北東北3県は人口の減少率が高いわけなのですが、それはそこに問題があるからというよりも、そこの良さが知られておらず、また一定の交通の不便さがあるということで人口が減ってきているというところがあると思います。

 したがって、普代村のようなところの良さが広く知られ、交通の不便さもどんどん克服しながら、そこに人がやってくる、また人が残るようになっていく、そういう動きを岩手の人口の少ないところからつくっていくことができれば、日本の中でも同じような動きをつくっていけるということでもあります。岩手県全体において、転出超過を含め、人口減少が進んでいるのですが、交通の便は岩手県としては着実に良くなってきておりますので、あとは岩手県の内外に岩手県の産業環境の良さを含めて、価値や魅力を伝えていくことができれば、大いに今後発展の可能性があるということだと思います。

 ご清聴ありがとうございました。

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