牛のクロストリジウム感染症

Xでポスト
フェイスブックでシェア
ラインでシェア

ページ番号1007929  更新日 平成31年2月20日

印刷大きな文字で印刷

本病は梅雨明け前後の高温・高湿時に多発する傾向にある。とくに、放牧場では降雨により湿潤した地面が牛の歩行により掘り起こされ、地中に潜んでいた起因菌が地表に現れる機会が増すことから、過去に本病が発生した放牧場では注意を要する。ここでは、本病の疫学・病理学的特徴を要約し、予防策を述べる。

牛の急死疾患として、ボツリヌス症、他のクロストリジウム属菌による感染症、炭疽、伝染性血栓栓塞性髄膜脳炎、硝酸塩中毒、鉛中毒などが知られている。これらのうち、クロストリジウム属菌では以下の菌種と疾病が、過去30年間の岩手県内で発生している。すなわち、Clostridium chauvoeiに起因して気腫を伴う骨格筋の壊死により特徴づけられる気腫疽、Clostridium(C)septicum、C. perfringens あるいはC. novyiによる感染部位の出血と水腫を伴った壊死を起こす悪性水腫、ならびにC. perfringesによる出血性腸炎あるいは中枢神経系を含む実質臓器の出血や壊死が観察されるエンテロトキセミアである。稀ではあるが、気管、肺等の気道の鬱血、出血および水腫を引き起こすC. sordellii感染も確認されている。

クロストリジウム感染症は6か月齢以上の牛に発生し、肥育後期の牛に好発する。それらの多くは散発性であるが、ときに短期間に数十頭の規模で流行する。限られた牛房や放牧場の牧区で長期間にわたり断続的に散発する、あるいは濃厚飼料の給与量の増加を含む飼養管理の変更後に発生するなどの疫学も本病の特徴である。

予防には、牛舎の消毒を基本としたワクチンの活用が最も有効である。前述の幾つかの菌種のトキソイドが混合されたワクチンが市販されているが、可能であれば原因菌種が含まれるワクチンを選択すべきである。菌種間において、ある程度の交叉免疫が成立するが、C. sordelliiと他菌種との交叉免疫の範囲は著しく限定される。したがって、C. sordelliiの関与が疑われる発生地では同菌種が含まれるワクチンの選択が重要となる。ワクチンは1か月間隔で2回接種し、その後は半年毎に1回接種することにより、発病を予防し得る抗体価が得られる。

牛舎の清掃と消毒が不十分な状態でワクチンを活用した農場では、しばしば本病を再発生させている。定期的な清掃と消毒により、牛舎内に存在する起因菌の総量を減少させた衛生状況下で、ワクチン効果を期待すべきである。消毒にはヨード剤やさらし粉(次亜塩素酸ソーダ)が有効である。

クロストリジウム属菌は、濃厚飼料の多給等により消化管内の微生物叢が変化した際に消化管内で異常に増殖し、本病を引き起こす。粗飼料の給与後に濃厚飼料を給与する、濃厚飼料を毎日数回に分けて給与するなどの基本的な飼養管理も本病の予防に重要である。

(病性鑑定課)

PDFファイルをご覧いただくには、「Adobe(R) Reader(R)」が必要です。お持ちでない方はアドビシステムズ社のサイト(新しいウィンドウ)からダウンロード(無料)してください。

このページに関するお問い合わせ

岩手県中央家畜保健衛生所 病性鑑定課
〒020-0605 岩手県滝沢市砂込390-5
電話番号:019-688-4111 ファクス番号:019-688-4012
お問い合わせは専用フォームをご利用ください。