豚サーコウイルス2型group1の病原性

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ページ番号1007957  更新日 平成31年2月20日

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離乳後多臓器性発育不良症候群(PMWS)に関与する豚サーコウイルス2型(PCV2)は、分子学的にgroup1および2に分類される。高い病原性を有することが示唆されているgroup1が、平成18年(2006年)頃より関東以西の地域で流行し、多数の離乳豚が死亡するなどにより、同地域の養豚産業に多大な被害をもたらした。
平成19年(2007年)、同ウイルスの本県への浸潤が確認されたので、その病原性を検討した。

病原および病理検査

平成17年(2005年)から平成19年(2007年)にgroup2が関与した4農場における離乳豚の死亡と発育不良による淘汰数の割合ならびに病原学的および病理学的検査成績を、平成19年(2007年)にgroup1が関わった1農場のそれらと比較した。
group2が関与した4農場の死亡・淘汰率は10%、28%、10%および3%(平均13%)であり、group1の1農場のそれは27%であった。
病原学的に、group2の離乳豚の肺から得られた同ウイルス遺伝子量は3.8x107から5.3x1010であり、group1のそれは8.3x109であった。
group2の4農場中3農場の離乳豚の肺から、豚繁殖呼吸障害症候群(PRRS)ウイルス、Mycoplasma hyorhinis、Pasteurella multocidaあるいはBordetella bronchiseptica の1ないし数種の病原体が分離された。他の1農場の離乳豚にはClostridium属菌の関与が示唆される腸病変(壊死性腸炎)が観察された。
他方、group1の離乳豚の肺から、前述の病原体に加えて豚パルボウイルスとMycoplasma hyopneumoniaeを検索したが、いずれの病原体も得られなかった。
病理学的に、group2および1の5農場の離乳豚に全身リンパ組織におけるリンパ球の減数および間質性肺炎がさまざまな程度で観察され、group2の1農場のそれらは壊死性腸炎を伴っていた。

考察

group2が関与した離乳豚の死亡・淘汰率は3%から28%の範囲でさまざまであったが、group1では27%の高い値を示した。両groupの遺伝子検出量および肺病変の程度に明らかな相違はなかった。他方、group2ではPCV2以外のさまざまな病原体が関与し、group1ではPCV2以外の病原体は検出されなかった。
得られた成績から、group1では他の病原体の関与なしに離乳豚の呼吸器系で著しく増殖し、同組織に重篤な障害をもたらしたように思われた。
平成20年(2008年)春季より、本病の予防にワクチンが活用され、かなりの効果が実証されている。今後は、本ワクチンの効果的な活用法を検討する必要がある。

(病性鑑定課)

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