豚サーコウイルス2型および同ワクチンの効果
平成19年頃より、遺伝子型1のPCV2が岩手県にも浸潤し、同ウイルス関連疾病による経済被害を防ぐために、ワクチンを活用する養豚場が増えつつあります。ここでは、同ウイルスが関連する疾病とその発病要因、ウイルスの遺伝子型と病原性、およびワクチン効果を述べます。
豚サーコウイルス2型が関連する疾病
豚サーコウイルス2型(PCV2)は、平成10年に豚の離乳後発育不良症候群(PMWS)の豚から分離されたが、同ウイルスが他の疾病にも関与していることが明らかとなり、近年、それらを総合して豚サーコウイルス関連疾病(PCVAD)あるいは豚サーコウイルス病と呼ぶようになり、病型として
- PMWS
- PCV2関連肺炎
- PCV2関連腸炎
- PCV2関連異常産
- PCV2関連豚皮膚腎症症候群
が知られている。他方、単一の個体あるいは農場内で複数の病型がみられることも多く、PMWS以外の病型については不明な点が多い。
発病要因
PCVADの発症には補因子の関与が必要であり、補因子として豚繁殖呼吸器障害症候群ウイルス(PRRSV)、パルボウイルス、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ等の重感染、ワクチン接種による免疫刺激、PCV2の遺伝子の相違などが知られている。しかし、どの補因子でも単独ですべてのPCVADの発症や重篤化を説明することはできない。
PMWSを実験的に発症させる条件として、
- 初乳未摂取
- 3週齢以前の感染
- 高力価のPCV2
- 遺伝子型1のPCV2
- 他の病原体の共感染
が挙げられ、これらの条件が揃った農場で本病が発症し易いと考えられている。
遺伝子型と病原性
遺伝子型1のPCV2が事故率の高い農場でのみ分離されている事実から、遺伝子型1は遺伝子型2より病原性が高いと考えられている。しかし、実験感染で病原性の違いを証明した報告は限られ、遺伝子型間の病原性の相違に関する正確な結論は得られていない。
ワクチンの効果
野外の実態としてワクチン効果は高く、事故率の低減に加えて増体重の改善効果も報告されている。PCVADが問題となり始める以前よりも事故率が低下した農場や、PCVADが大きな問題となっていない農場への応用により事故率が低下した報告もみられる。この実態は、PCV2が多くの疾病の重篤化や顕現化を招く基礎的要因として関与していることを示唆すると考えられている。
他方、ワクチン接種により、それまでPCVADの陰に隠れていた疾病が顕在化した報告もある。また、ワクチン効果の正確なメカニズムは不明であり、母豚と子豚への接種効果の相違も十分に解明されていない。
PCV2が関与する病型、PCV2感染後に発病に至るメカニズム、ワクチン接種効果のメカニズムなど解決すべき課題はなお多く、研究の一層の進展が望まれる。
(病性鑑定課)
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