岩手フロンティア懇談会(平成22年8月9日)懇談記録
- 対象地域:沿岸広域振興局圏
- 日時:平成22年8月9日
- 場所:釜石地区合同庁舎
- 出席者
小林 昭榮(田老町漁業協働組合代表理事組合長)
佐々木 俊之(漁業)
金野 好幸(有限会社 アール代表取締役)
浦嶋 健(株式会社 浦嶋商店代表取締役)
前田 慧太(北里大学海洋生命科学部4年 潜水部前副部長)
(県側)
達増知事
中村沿岸広域振興局長
菊池沿岸広域振興局副局長(宮古駐在)
水野沿岸広域振興局副局長(大船渡駐在)
「海の産業創造いわてを目指して」をテーマに、沿岸地域で漁業や地元海産物の加工、販売、漁業用具の開発、海洋研究やボランティア活動など様々な分野で活躍されている方々と知事が懇談しました。
開会
中村局長
お忙しいところご出席をいただきましてありがとうございます。ただいまから県政懇談会「岩手フロンティア懇談会」を開催させていただきます。
私は、本日の進行を務めます沿岸広域振興局長の中村でございます。よろしくお願いをいたします。
知事あいさつ
中村局長
開会に当たりまして達増知事からごあいさつを申し上げます。
達増知事
本日はお忙しい中、おいでいただきましてありがとうございます。また、県会議員の先生方もありがとうございます。
今日は、この沿岸広域振興圏におきまして漁業や、それにかかわる商業、研究などさまざまな分野に携わっている皆様から直接お話を伺う機会であります「岩手フロンティア懇談会」を開催いたします。
県では、岩手全体が元気になるためには、まず4つの広域振興圏が元気になることが必要と考えておりまして、ここ沿岸広域振興圏において、さまざまな分野で活躍されている皆さんから広域振興という観点を念頭に置きながら、暮らしやあるいは仕事、現場の課題など幅広く伺って共有することで県政運営に生かしていきたいと考えております。
今日の懇談は、「海の産業創造いわてを目指して」というテーマでご意見等を伺うこととしておりまして、皆様から普段の活動内容、また皆さんお一人お一人あるいはこの沿岸広域振興圏全体がどのようになっていけばいいかということや、希望などについてもお話しいただきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
中村局長
ありがとうございました。
懇談
中村局長
本日ご出席をいただいております皆様をご紹介させていただきます。お手元にお配りしてございます名簿の順にご紹介をさせていただきます。
まず最初に、田老町漁業協同組合の組合長でございます小林昭榮様でございます。
小林昭榮
よろしくお願いします。
中村局長
続きまして、山田町からおいでいただきました佐々木俊之様でございます。
佐々木俊之
よろしくお願いします。
中村局長
続きまして、釜石市のアール代表取締役の金野好幸様でございます。
金野好幸
金野です。よろしくお願いします。
中村局長
続きまして、大船渡市からおいでいただきました株式会社浦嶋商店代表取締役の浦嶋健様でございます。
浦嶋健
浦嶋です。よろしくお願いします。
中村局長
最後に、大船渡市からおいでをいただきました北里大学海洋生命科学部4年の前田慧太様でございます。
前田慧太
本日はよろしくお願いいたします。
中村局長
それから、本日は県議会議員の先生方にもお越しをいただいてございます。
まず、小野共議員でございます。
小野共県議
よろしくお願いいたします。
中村局長
続きまして、岩崎友一議員でございます。
岩崎友一県議
よろしくお願いします。
中村局長
次に、県側の出席者をご紹介いたします。
先ほどごあいさつ申し上げました岩手県知事、達増拓也でございます。
達増知事
よろしくお願いします。
中村局長
沿岸広域振興局副局長宮古駐在の菊池正佳でございます。
菊池副局長
菊池でございます。よろしくお願いいたします。
中村局長
同じく沿岸広域振興局副局長大船渡市駐在の水野尚光でございます。
水野副局長
水野でございます。よろしくお願いします。
中村局長
それで、私が振興局長の中村でございます。よろしくお願いをいたします。
それでは、早速懇談に入らせていただきたいと思います。本日のテーマは、先ほど知事からご紹介もいただきましたが、「海の産業創造いわてを目指して」というテーマでお願いをしたいと思います。県では、昨年の12月でございますが、県の総合計画でありますいわて県民計画というものを策定いたしました。その中で、岩手の未来を切り拓く6つの構想ということで、今後の岩手の将来を目指して、新たな取り組みをいろんな分野で進めていくこととしておりますが、その1つとして「海の産業創造いわて構想」というものを掲げてございます。それを具体的に推進するいろんな取り組みも既に進めてございますが、今日はその中で既に沿岸の圏域で、それぞれの地域でいろんな取り組みをされている5名の方においでをいただいてそのお話を伺いながらいろいろ意見交換させていただきたいというように考えてございますので、よろしくお願いをいたします。
まず最初は、それぞれ自己紹介を兼ねまして、今取り組んでいらっしゃる事柄等につきましてご紹介等をいただければと思います。
それでは、お一方大体5分ぐらいの時間のイメージで、この名簿にございますが、小林様から順にご紹介をいただければと思いますので、それでは小林組合長さんから最初お願いをいたします。
小林昭榮
知事さんには沿岸振興ということで大変ご苦労をおかけしております。なかなか現場がついてこないというジレンマを感じてもいらっしゃるのではないかなと思います。今日は漁業の分野ということで私までお呼びをいただきましてありがとうございます。
旧田老町は17年6月に宮古市に合併して、今、田老地区の世帯数は宮古市の6.5%の約1,600世帯ぐらい。その中で組合員数は707人なのですが、世帯数でいいますと551世帯です。前から漁協は世帯組合員制度をとっておりましたが、それを平成16年から、意欲ある人に一生懸命頑張ってもらうためには個人組合制での組合員制度がいいだろうということで、60年も続いた制度を見直したところでございます。その中で、養殖の基準漁家というのを育成しようとしておりますが、高齢化なり、魚価安で困っています。田老地域の漁業生産は平成11年が最近ではピークで、約19億あったのですけれども、直近の5年平均ですと14億8千万円ぐらいであります。魚価も安く、水揚げも少なくなっていますし、天然海草もその変動が大きいです。田老の場合はアワビを毎年50トンとろうということで自分のところで増殖事業をやっているのですが、値段が安いということもありまして、なかなか所得が上がりません。14億8千万円の内訳は、養殖で5億3千万円。天然採貝草で4億3千万円、定置網で3億8千万円、その他で1億4千万円であります。
その中で、組合員数は、平成16年度に個人組合員制度へ変更したときに818人だったのですが、今は707人になっております。漁業を行使するために組合員でなければならないという縛りがありますので、世帯組合員のときの家族出漁者が組合員になり、一時的にふえたのですけれども、今は高齢化で毎年10人以上リタイアしております。その中で、漁業者を育てなければなりません。このことは、今始まったわけではないのですけれども、大変大きな課題でございます。隣の重茂漁協は後継者の心配はないようです。当地域と同じようにワカメとコンブをつくっている漁業形態なのに家業として事業が継続されています。片や田老は養殖経営者数が平成17年には112人でありましたが、今は95人になっています。施設規模は1人当りの平均規模が拡大しておりますので、約6%ぐらいしか減ってはおりません。一方、田老町漁協は昭和27年から加工事業をやっておりまして、地場の産品の付加価値販売を当時から目指しておりまして、今は地域の養殖ワカメを全量買い取りして製品販売とワカメメーカーさんに転売するという形をとっております。それで、地域ブランド品としてのおいしい岩手のワカメの代表になろうということで取り組んでおります。また、加工場は、この地域にとっても大きな雇用の場でもありまして、毎日100人ぐらいのお母さん方が働いております。これからも漁業者が減らないように、生産が維持できるようにして地域を守るということが漁協の役割と思って取り組んでいます。
私も漁家に生まれて漁業もやっているのですけれども、漁業はきついとか辛いとかということもあるのですけれども、考えてみるとご夫婦で子供さんを育てられるというサラリーマンではできないすごくいい仕事ではないかなと思っておりまして、漁業者が新しく参入できるように取り組んでいるところでございます。
長くなりました。済みません。以上でございます。
中村局長
ありがとうございました。
では、続きまして佐々木様からお願いいたします。
佐々木俊之
「山田の牡蠣くん」を販売しております佐々木俊之です。私は水産加工という形になってきていますけれども、スタンスとしてはやっぱり漁師であります。漁師がみずから加工品を手がけていこうという、そういう考え方のもとにこの「山田の牡蠣くん」を作りました。今出ますので、どうぞ食べてください。
まず、これをやるきっかけというのはノロウイルスの風評被害がありまして、それでカキ自体が全く売れなくなりまして、どうしようか、売れない。保健所さんに聞くと加熱すればいいんだよと。よし、加熱してみようと。加熱して食べてみると、これで商品にどう結びつけたらいいのかなということで、ただ加熱だけではちょっと弱いなといろいろ調べまして、薫製というふうに。では、薫製してみようとそういう感じでやっていって……、薫製の香りがすると思うのですが、どうぞお食べになってみてください。そういう形で、結局マイナスの面だったわけです、ノロウイルスという。ですけれども、マイナスなのだけれども、それを何とかしようということで、そこからいろいろ考えて模索していくうちに何か生まれてきたなと。
達増知事
おいしいですね。
佐々木俊之
そういうところありまして、だから漁師みずからが手がけるというのがそういう部分で、そのみずから手がけることのよさというのがやっぱり自分がとってきたカキ、自分が育てたカキなので、今どういう状況にあるかというのがわかるわけです。今はもう実入りがよくなっているとか、今産卵期に入っているとか、いろいろ。結局それが安心安全につながっていくのではないかなという思いがありまして。
それともう一つが価格ですね。要するに、漁師というのはいいものを育てようという努力は皆さんやっているのですよね、多分小林さんのところもそうだと思うのですけれども。ですけれども、それが価格に反映するかどうかというと必ずしもそうではない。だったらどうしたらいいのだと。では、自分たちで価格を決められるようなことはどういうことだというと、やっぱり加工品とか二次加工、そういうものをしていく。そうすることによって、自分たちで値決めができるのではないか。そうすれば通年の漁業経営の自分の計画が立てられるようなそういう思いがありまして始めたわけなのですけれども、それで何とか今メディアとかにも取り上げていただいて、ありがたいことに、それでかなり一石を投じることができたなとは思っていますけれども、そんなところです。
達増知事
前に、スライスした一部を試食的に食べたのですけれども、今日は丸ごと一個でうまい。ちょっと食べたときもすごいおいしいと思ったのですけれども、すごいおいしいですよ。
佐々木俊之
ありがとうございます。
達増知事
これはどこに出しても恥ずかしくないというか、すごいと思いますね。
中村局長
この商品化で一番ご苦労をされたような点というのはどういったところですか。
佐々木俊之
実は保健所さんの許可をいただくときに1年ぐらいかかりました。というのは、これが惣菜に当たるのか、珍味に当たるのかということで保健所さんのほうがちょっと判断に悩むということで約1年。その間、保健所さんに何度も行き来しているうちにすごく親身にしていただいて、最後のほうは私が必ず加工施設を全部見に行って、私が全部やるからと、そういう形でやってもらいました。そこが一番の大変な、要するに漁師なものでそういう部分になれてないのです。そういう行政との何というか、そういうこと全く初めての経験なので、そういうことがやっぱり大変でした。
中村局長
こういうオリーブ漬というのは、なかなか今までないですよね。
佐々木俊之
ですね。あれはあれでやっぱり成分があるので、それを溶かして漬けてみようということで。ただ、どのオリーブオイルでもいいという感じでもなく、いろいろあるとは思います。
中村局長
カキに合ったオリーブオイルをと。
佐々木俊之
私はこれがベストだなと思って選んだのですけれども。
中村局長
ありがとうございました。
では、続きましてアールの金野さんからお願いいたします。
金野好幸
アールの金野と申します。よろしくお願いします。
私は、本業はFRPの仕事をしています。海産物には関係ない仕事をやってきました。例えばFRPの中でもユニットバスの型をつくったり、RTMという合わせ型を作ったり、いろいろな方法でやってきました。そして、自分はもともと大工だったので、そういういろいろな経験を生かして、そして東部組合の組合員でもあります。それでウニ、アワビ漁にも出ていきます。アワビの場合は、とってくればすぐ組合に出荷できますので。ウニの場合は、あんなような形で殻むきしなければならないのです。この作業に結構時間がかかるのです。だから、本業をそっちのけでウニとれば殻むきもやらなければならない。でも、途中でやめるわけにはいかないのです。手をつけたら、これはもう最後までやり通さなければ悪くなるのです。鮮度が悪くなるのです。
それで自分は困っていたので、どうしたらいいかなと、これどうしたらうまく殻むきできるのかなと、そういう発想を四、五年前から私は考えていました。そして、20年のリーマンショックあたりで私たちの仕事が結構薄れてきましたので、それでちょっと時間もったいないので、考えていたことを少し研究、実験してみようやという感じでいろいろ道具をつくって、そして翌年21年の1月にウニの口あけがあるというので、それに目指して実験用の道具をつくって実験してみました、簡単だけれども。それで、物がとれればこれで自分たちも別な仕事をまた見つけられるのではないかと、新規事業としてやっていけるのではないかと、そういう感じで実験してみたらなんかうまくいったので、それでとりあえず特許……、幾ら頑張ってつくっても特許侵害とかそういうのがいろいろあるので、ある程度お金を投資するということは、ある程度世の中のこと全体を調べて、そして投資していかないと、やったことはいいが、特許侵害に当たるようなのでは、自分たちが苦労しても、お金をつぎ込んでも何にもならないのでちょっと調べてみました。そして、調べてみたらやっぱり特許庁にはバキューム方式という、平成12年に実用新案で上がっていました。それはバキューム方式ですから。ただ吸い込むやつですね、掃除機。掃除機であれば何でも吸い取りますので、ちょっとこれではまずいなと思って。じゃ、我々のはないかなと思って調べたのだけれども、振興局の方々とか育成センターの方々から特許庁のほうちょっと調べてくださいと。そして、調べた結果、ないということで、弁理士さんのほうにお願いして調べてもらったら、やっぱり国際特許、国内特許を調べてもらいました。国際特許にヨーロッパのほうでウニを水圧で割れる機械があったそうです。それは国際特許で上がっているそうです。あとはウニに関しては海産物でないということで、それで国内特許のほうはさっき言ったバキューム、2点だけ。それもバキュームに対してノズル先端部だけ取りかえるやつが細いやつ、太いやつ、先端部を取りかえるのが特許として1つ上がっていました。それで2件だけだそうです。これは特許としていくのにいいのではないかなと。いくのなら特許申請して、それから我々がすべて100%物をつくるのであれば自分で何とかやっていくのだけれども、精密機械みたいな部品も使うので、そしてそうなれば結構いろいろな方々と込み入った話するのには特許申請して、そして出願番号をもらって、それから話した方がいいのではないかという話で、そうやって去年の今ごろ、8月の末に出して9月2日ころ特許庁から出願番号もらって、それから出しました。
中村局長
あれが実物なのですね。
金野好幸
はい。
中村局長
でしたら、ちょっとそれを少し実演をしていただきながら説明をしていただいたほうが……。皆さんもちょっと周辺に集まっていただいてご覧いただきながら……。
達増知事
話には聞いていましたけれども。
金野好幸
何が特許かということでありますが、バキューム方式ですからただ吸い込む特許なのです。だけれども、私が考えたのは巻き取る、それはホースの中を吸い込む、ちっちゃいバキュームつけて。そして、この中にメンテナンスよく、やっぱり食品ですからメンテナンスよくいつでもきれいに使ってもらいたいと思って、そして螺旋にまわるようにウニのわたを絡めてとるのです。そして、これもワンタッチでとれるようになっています。
そして、螺旋というのは右回り、左回りどっちでもいいのですけれども、ただ螺旋で引っ張ってくるとここに結構不純物がたまるのですよ、メンテナンスが大変なのです。それで、この螺旋は一定の方向に右でも左でも回ります、モーターですから。回って、こっちに変な部品をつけるとまたメンテナンスが大変なので、一定の方向に回って引き戻したところに反対の逆ネジというやつを、これも特許申請してあります。だから、引っ張ってきて押すのです、同じ方向ですから。回転を同じに回っていれば押すのです、接点がつくのです。この接点からノズルの排出口になってここのポケットに入っていきます。こういう方法をとりました。これであれば、今のようにバキュームであればこれはとれないのですけれども、だから今よくここに、例えばいろいろな方法で実験したので、例えばこういう方法で、いろいろな方法で、こういうふうな感じで。
中村局長
黄色くないところをとるわけですね。
金野好幸
はい、そうです。
これがモーターです。バキュームの力が一定の力なので、この水圧のバキュームの力を仕上げるときには分散したいので、ここにノズルのほうに穴があります。これでバキュームの力が上がってどんどん吸い込みます。そして、バキュームの力を弱めて仕上げ作業に入るときには手を外していく。ワンタッチでできるようにしました。仕上げるときはこいつを外して仕上げてとるような感じです。
達増知事
黄色いところは残りますね。
金野好幸
はい。こういうような感じで、あとはちょっとやってもらいたいです。あとはこういう方法もとれます。こういうふうにとれます、一瞬でとれます。
達増知事
ウニの格好にはなって、黄色いところだけが入って。
金野好幸
こういう感じで取れます。ちょっと当たれば巻き込みます。
達増知事
当たって巻き込むわけですね。
金野好幸
はい、一人で巻いていますので、どんどん巻き込んで中に入っていきます。わたはどんどんとっていったほうがいいです。放すと微調整で。
達増知事
気持ちがいい。
金野好幸
これを一つずつとるのみです。機械を操作するのも初めて、ピンセットをとるのも初めてなのだけれども、どちらが手早く取れるかということでね。
達増知事
これは便利ですね。
中村局長
そろそろ時間の関係もありますので、この辺で一旦。
達増知事
話には聞いていたのですけれども、よくわかりました。
中村局長
ありがとうございました。実演もしていただきまして、参考になりました。
それでは、続きまして大船渡市の浦嶋さんからお願いをいたします。
浦嶋健
よろしくお願いします。浦嶋です。
当社では、昨年県の経営革新計画の承認をいただきまして、新しい冷薫技術というものを取り入れた海産物の、いわゆる薫製品、先ほどの佐々木さんがお作りになっているカキと同じような薫製品を開発したところであります。もともと当社は先代から漁業、水産物の仲卸を行っていた鮮魚と加工の会社ですけれども、やはり二十数年前のバブル期のあたりの欧米文化が入ってきたころ、どうしても肉食あるいはファストフードのはやりによって魚食文化というものが廃れて漁業者が大変になってきた時代。やはり我々加工者は鮮魚を扱う業者もかなり厳しい打撃を受けまして、工場維持のために業態変更して20年ほど、昨年までですけれども、全く水産業から離れた下請の加工の仕事をしておりました。ですが、やはり魚屋として生まれた私ですので、いつかは必ず魚に戻りたい、そして魚食文化というものを世に継承していきたいという思いはずっと持ち合わせておりましたので、先代の急死があってなかなか急に戻ることができないままずるずると今まで来ましたけれども、やはり近年のリーマンショックからの影響を受けて、今の当社が受けておりました親会社のほうもかなり厳しくなってきた現状、このままでは当社自体も厳しくなってしまうということで、改めてこれまで加工というふうな部分を開発進めてきたものを何とかしていきたいなと思っていたところ、私は鮮魚のほうはちょこちょことやっておりまして、全国の各地産地、港の仲買人仲間といろいろと情報交換をしながら、今東京のほうに仲間と会社も立ち上げて飲食店等々に直接卸ということもしておりまして、その中の飲食店さんあるいは催事屋さん、ホテル、そういった関係者の方からのお話で、どうしても繁忙期にはラウンドの魚をさばくのが大変だと。そういった中で半製品あるいはちょっと手を加えるだけですぐにお出しできるような、そういった魚介類の製品はないものかというふうな話を聞いておりました。その中でもなかなかどういったものを作っていくかということもありまして、いろいろな部分考えておりましたけれども、ただ単に刺身用のフィレでは大手さんであったり、既存の部分からのなかなか脱却はできないだろうと。そういった中でこの新技術、冷薫という手法に会いまして、本来薫製という手法は昔から保存食としての加工というふうに言われておりまして、私が使っている冷薫方法というのはその薫製の方法の中でも時間がかかり、かたい食感、どうしても乾燥度の高いものになっていたのですけれども、それを素材に自分から薫製の成分を取り寄せるという手法を使いまして、生の食感をそのまま生かした形で薫製処理することができると。そのため、薫製の成分によって生臭さが消えるということもありまして、どうぞこちらサンマの生ハム風に仕上げたものですけれども、ご試食していただければわかると思いますが、サンマの刺身の食感、そしてサンマの味はそのままに。そして、その魚の生臭さというものを取り除いた、薫製品でありますけれども、そこまで薫製の香りを強くしないソフト薫製というタイプで作っております。これを世に出そうと思ったきっかけもたまたまうちは会社でいろいろと試行錯誤して試作品を作っていたところ、私の自宅でちょっと食べてみようといっていたところが、あと私の娘が小学生なのですけれども、やはり今の子供たちは魚から離れていますのでなかなか食べてくれないところがありましたけれども、これは気に入って食べてくれる。そこから、こういうものだったらば魚の苦手な人でも、子供さんでも食べていただけるのかなと思いまして、いろいろと試行錯誤した結果、こういった商品ができたということで、昨年県のほうの計画のもとに事業を立てようというふうに進めておりました。もともと魚屋としてやってきたものもありましたので、すんなりとこういった加工に戻ることができましたけれども、いかんせん販路のほうがまだまだ世になじみのない商品ですので、その開拓というふうに苦戦しながら日々頭抱えながらやっているところでございますけれども、こういった新しい商品というものがこれからいろいろな形で世に発信していけて、そしてまた日本の魚食文化、和食の中心はやはり魚食だと思っていますので、そういった中での一助となっていければいいのかなというふうに感じております。これをこれから広めていければなと思っております。
以上です。
達増知事
バクバク幾らでも食べられそうな感じがしますね。
浦嶋健
今、道の駅とか産直施設のほうで置いていただいているのですけれども、お父さん、おじいちゃん関係がやはり気に入って食べていただいて、うれしい話にその方々からせっかく自分が夜のつまみに買ってきたものを脇から孫がつまんでいくんだよねというふうに言ってもらえるとすごいうれしく感じます。
達増知事
やめられない、止まらない的な、もう一切れ、もう一切れという感じになりますね。
中村局長
そうですね、おつまみとかには非常に向いているような。
浦嶋健
ええ。どうしても鮮度の関係とかもありますので、薫製処理していく中で時間がどうしてもかかってしまいますけれども、それを短時間ですることによって素材そのまま柔らかい食感を保つのです。
中村局長
これを作るので一番難しかったとかというようなところはどういったところなのでしょうか。
浦嶋健
どうしても薫製の場合ですと、薫製した煙の成分の中にタール分やそういった煙のいぶしのこげの臭いというものが入っていますので、それが素材についてしまうとどうしてもえぐみだったり、苦みだったりということに水分が多いとどうしてもかかってしまうのです。それをいかにして煙の中から取り除くかということをいろいろと考えるか、あとは先ほど申しましたとおり、できるだけ短い時間で鮮度のいい状態のままで薫製処理を行うということですね。
中村局長
そうすると今後の課題はそれをいかに売っていくかというところが一番の……。
浦嶋健
そうですね。実際サンマ自体を販売させてもらっているのですけれども、量販店さんで置いていただく場合には既存のシメサバであるとかシメサンマであるとか、そういった部類と一緒にされてしまいますので、値段的には格段に違うものになってしまいますから。コスト的にはかなりかかるものですので、そのコストを抑えるという部分ですね。あと当社でもカキの薫製、先ほど佐々木さんがお作りになられているような部分でやっているのですけれども、やはりこの佐々木さんが作られているカキの薫製とうちで作っているカキの薫製では、一番の違いというのが漁家さんが作っているという部分と加工屋が作っているという部分が一番大きな違いがありまして、やはり漁家さんがつくっている商品というのは、漁家さんがそれなりに手塩に育てたものを作っているということで付加価値がすごい高いのです。我々加工屋というのは、どうしても普段から加工品を扱っていますので安いというイメージがどうしてもついてしまいますので、素材は地元のものを、いいものを使っているのですよといったことでも、やはりその辺の違いということが出てきますので、いかにコストを下げるか、あるいは知ってもらうかということですね。
中村局長
ありがとうございました。
それでは、続きまして北里大学の前田様からお願いいたします。
前田慧太
北里大学水産学部4年、潜水部の前田慧太と申します。よろしくお願いします。
潜水部というのはスキューバダイビングをやっている部活なのですけれども、水生生物の生態を観察するのを目的に活動しています。昭和47年に創部して、結構歴史が深い部活なのですけれども、どんなことをしているかといいますと、日々のダイビングやトレーニングのほかに毎週末1回海岸清掃を行っておりまして、場所は大学から近い漁港3つなのですけれども、1回の清掃で指定ごみ袋の一番大きいやつの3つ分くらいは、毎週やっているのですけれども、溜まってしまいます。種類というのはやっぱり釣り具とか、釣り人のごみというのが結構多いように感じます。それと漁業者の方のごみなのかはわからないのですけれども、ネットや発泡スチロールなども結構多いように感じました。そのほか日々の活動以外でも潜水部で毎年1回海底清掃という活動を通して活動をやっているのですけれども……。それでは、映像を見てもらいましょうか。
毎年1回なのですけれども、海底清掃といいましてスキューバダイビングの機材を背負った状態で海底でごみ拾いを行います。こういうふうにいろんな漁業者の方々と協力いたしまして活動しています。
活動しようと思ったきっかけは、やっぱりきれいな海で潜りたい、フィールドを守りたいという思いから始めました。活動は今年で11年目、海底清掃については11年目になります。こういう経験がありますと地域の方々との交流もありますし、そういう連携は大切にしていきたいなと思って活動しています。
海底清掃ですと、やっぱり海岸清掃と違いまして、ごみが海の中にあるわけなのですけれども、見えないごみ、タイヤとかバッテリーとか、あと漁業者のごみが結構……、ホタテの稚貝のネットとかワイヤみたいなものですとか、結構そういうものが多いです。
僕たち潜っていて意外だったのは漁業者の方のごみが結構多かったということです。フィールドを大事にされているのかなと思ったのですけれども、なかなかそういうものは、海の中に入ってしまうと隠れてしまうとわからないのかなと。こんな感じです。タイヤは結構多いです。
こういうごみというのは、短いスパンで見るとそんなに影響はないのです、環境への。魚礁になったりとか、いい面もあるのですけれども、長いスパンで見たときに溶け出したりして環境ホルモンの流出とか、あとこういうのがだんだん小さくなって破片になっていったときに本当に細かくなっていったときに成分が蓄積されて人間まで影響が出てしまうのではというふうに。
あと短いスパンで見ても危ないごみというのがありまして、ビニールというのはマンボウとか岩手とかでもとれますけれども、ウミガメとかに直接影響あります。食べてしまうと、やはり詰まってしまって死んでしまうので、そういうのには影響あると思います。こんな感じなのですけれども。
一昨年は大船渡市の水産功労賞をいただきました、この活動で。去年は北里大学同窓会準会員課外活動奨励賞をいただいております。
以上です。
中村局長
最近部員の方もふえているというようなお話も聞きましたけれども、新しい部員の人たちの反応とか、そういったのはどういったことをおっしゃっていますか。
前田慧太
まだ今年はこれからなのですけれども、海底清掃は。海岸清掃を週1回やっているのですけれども、ごみが多いことに結構驚いているというか、掃除したのにまた、みたいに感じているみたいです。
海底清掃を通じまして去年僕が感じたのは、ごみ以外でも漁港自体が汚いといいますか、ヘドロがたまっていたりしまして、もう海底清掃自体が危ない。ごみをとること自体が結構危険な作業というふうになっておりまして、結構やりにくい状況になっておると感じました。
達増知事
そういうのは実際に見てみないと、歩いてみないとわからないでしょうからね。
前田慧太
そうですね、やはり隠れてしまっているので、海の中に。漁業者の方もなかなか海の中に潜って見るということは余りないと思うのですけれども、そういうのをメディアとかこういう活動を通じて注目されるので、知ってもらいたいというか、こういうふうになっていますという状況を知ってもらいたいと思って活動しています。
中村局長
活動の場所というかポイントは、毎年海底は同じようなところですか、それとも変えて活動されたりとか。
前田慧太
日々のダイビングは基本的に同じ場所でやっているのですけれども、海底清掃は、やはり先ほど申しましたとおりヘドロなどで危険なので、安全性と汚さを考慮してごみなどの量も考慮しまして毎年変えてやっております。
中村局長
なるほど。確かに地上のごみですと日々目にしてというか、それできれいにしなきゃみたいな部分もありますけれども、海底の場合は、お話にあったように一回沈んでしまうとなかなかわからないみたいになりますからね。やっぱり貴重な活動だなというふうに改めて実感をいたしました。
5人の方から一通り今取り組まれている事項等についてご紹介をいただきましたけれども、1回目のお話を踏まえながら、また今度は皆さんが今まで取り組んできたことを通じていろいろ日々感じていることなり、あと今後こういったことをやってみたいとか、今後の夢なども含めてまた一通り順にお話をお伺いできればと思います。
それではまた、小林様からお願いをいたします。
小林昭榮
岩手の県北の重茂から県北地帯の養殖漁業といえばワカメとコンブ、野田村ではホタテを一部やっていますけれども、ワカメ、コンブの養殖が中心です。その中で専業者といいますとワカメとコンブは一体的な養殖施設でつくっている養殖漁家です。漁船漁業は、49年あたりはイカ釣り漁船がぐんとふえたのですけれども、イカがとれなくて魚価も安くなって廃業が続き、当時は十五、六隻あったイカ釣り船が、田老では今2隻だけです。特に漁家の減少は高齢化が一番なのですけれども、そのほかには所得機会が少ない原因があるかと思います。県南ではホヤとかホタテとかカキで、結構年間何百日もお金をとれるのですけれども、当地域は、ワカメは7区分ぐらい、コンブは4区分ぐらいです。お金が入る回数が少ないことが若い人の悩みと思います。
もう一つ、今少し深刻に思っていますのは既存の養殖漁家でも嫁さんをもらえないというのがすごくありまして、田老では8%ぐらいの、七、八人は50後半でも独身です。母さんと一緒にやっているのですが、母さんがリタイアすると途端に1人ということで、コンビニの弁当で養殖をやっているという形になる。本当にこれは大変なことです。田老地区の漁業者の育成は、一つは専業の養殖漁家の育成、もう一つは兼業であっても、いつまでもウニやアワビとかコンブとかワカメをとる漁業者の育成です。
1つは、今までの専業漁業者の育成というと、金を貸すからやってくれというようなことだったのですが、これでは全然着業できない。資料の中に新規着業者支援プログラムというのが右上にありますが、新規着業には多額のお金がかかりますし、また収穫までの生活費のこともある。そんなことから漁協では施設はほとんど漁協で利用施設として提供する。また、一人でやれなければ協業体での着業を勧める。今年から1協業体が出ましたので、今後もこのような形で協業体も進める。生活費は生産代金の前払いという形になる。あとは、宮古市が今年から実施した新規就業者の支援補助事業で、一人10万円2年に限って支給するという事業を利用しています。これにより新規の方を募集して去年2人、今年2人応募がありました。大きな流れから見ると本当にささやかな取り組みなのですけれども、これを何とか成功させていきたいと思っております。
もう一つは、兼業であっても漁業に従事する旧田老町民を育成することです。今では考えられませんが、60年も前の小学校、中学校の時代は、採貝草の口開け日には学校は休みでした。今はこんなことができませんから、資料の真ん中にある水色のところなのですけれども、組合員でなければ出漁できないのに、平成11年から高校生以下18歳未満の方については、希望であれば採貝草漁業の出漁を認めております。アワビについては授業時間に食い込みますけれども、そのほかは海に出ても登校時間には間に合うという時間帯ですので、毎年12人から18人ぐらいの小学校の5年生から高校生まで出漁しております。これが大人になって漁業者として、兼業者として残るかどうかわからないですけれども、田老の子供に生まれたら、田老の海はこうだったよとか都会に行っても言えるぐらいのことは経験させていきたいなという取り組みでございます。
もう一つ、専業漁業者の着業の課題としては、所得とリスクであります。それから、技術経験のことだと思います。また、過度な海の怖さや漁業の辛さということがあるように思います。これは漁業者から教えてもらったり、技術免許、海技免許をとることで克服できると思います。
平成5年には、子供さんがお父さんとワカメ養殖に行って、お父さんが亡くなり、その子供だけ残った。その子供はお父さんの養殖を中学を卒業してすぐ引き継いだのです。これがもう今は立派な漁師さんになっており、漁師さんから教えてもらって学習していけば、怖い、危険なことも回避できると思います。
いずれ地域では漁協における6次産業化というようなことを言っていますけれども、生産から製品販売までの雇用の場でもあったり、地域全体が漁業にすごく関心を持っていくということで田老地域を維持していきたいし、それによって漁業者、専業者を育てていきたいというふうな思いで、ささやかな取り組みですけれども、一生懸命やっていきます。
中村局長
新規に漁業に従事していただくようないろんなプログラムで取り組みされているというお話しがありましたけれども、これまでこの制度を利用されている方というのは、大体何名ぐらいいらっしゃるのでしょうか。
小林昭榮
去年2人で、2人のうち1人しか利用できなかったですね。今年の2人は全部これを利用しております。軽トラックまでも中古なのですけれども、利用施設として提供しております。
中村局長
結構いろいろ至れり尽くせりみたいな、かゆいところにも手が届くようなフォローをするといった感じですね。
小林昭榮
消耗資材は、利用施設として提供できないので着業者はお金がかかりますね。
中村局長
そうですね。あと青少年、高校生以下の方に口開けの活動というか、やってもらっていると言っていましたけれども、それに参加された皆さんからはどういった感想が聞かれましたか。
小林昭榮
学校に行っても、例えばアワビを何キロ取ってきて何万円だとかというようなことを言いますから、すごく関心を持つこともあるらしいのです。今年は兼業のサラリーマン5年生の子供さんがやりたいということで認めました。道具の用意があり、漁家の子供でなければ難しいかなと思いますけれども。
中村局長
そういう経験をして、新たに漁業についてみようと思ってくれるような人がふえてきてもらえればいいですね。
小林昭榮
そうですね、地域でそういう環境つくっていければ。
中村局長
ありがとうございました。
それでは、続きまして佐々木さんからお願いいたします。
佐々木俊之
私のこれからの取り組み方向でいきますと、まずアカザラガイというのがありまして、それは漁師の人たちはおいしい、おいしいと食べているのですけれども、なかなか流通に乗らないこんなちっちゃい、ホタテのちっちゃいような貝なのです。それを最終的には隣近所に配ったりなんかして、それでも毎日、毎日だと、今日はいいですとかと言われてして、返したりしてしまうのですけれども、何とかそういったものを利用したいなと。未利用資源というか、低利用資源の有効活用をしてみたいということで二匹目のドジョウで、それも薫製にしてしまえと、早い話。そういう考えをしまして、いろいろとやってみようと思いまして、それで水産業の6次産業化支援事業というものに応募しまして、アカザラガイということで。そうしたら採用いただきまして、それでよし、これで一生懸命やってみようと思いまして、そういう余り利用されていない資源というのがまだまだあるので、そういったものを利用して流通に持っていくともっともっと漁師サイドとしても、要するにそれがお金になっていけば非常にうれしいことにつながっていくので、そういったものがまだまだあるのではないかなと思いまして、そういったものをいろいろと見つけて付加価値つけていってというのが非常に大切かなと思いました。
それとまた戻るというかあれなのですけれども、「山田の牡蠣くん」やって、口幅ったい言い方ですけれども、ある意味成功したと思っているのです。その要因は何かというと、実は個人名出してしまいますけれども、五日市知香さんという方がいまして、この方がトータルで商品化のコーディネートしてくれたのですけれども、たまたま知り合いでして、何度も何度も親身になってきて話し合いをして、それでやってくれたのですけれども。それで、パッケージデザインからいろんなものをやってくれて、私たちというのはそういう部分が欠けているのです、できないのです。だから、そういう部分を補ってくれる人がたまたま私の場合はいたということなのですけれども、何かそういう接点を行政側とどんどん、どんどん作っていただければ。1回や2回ではなくてある程度の長いスパンでそういうふうにしていくともっといろんな商品ができていくのではないかなと思いました。それで、ぜひそういったこともやっていただければ非常にありがたいなと思います。
中村局長
わかりました。今のお話、我々も十分踏まえてまたいろいろ支援もさせていただければと思います。
アカザラガイというのは、いわゆる天然に幾つかあるみたいな貝……。
佐々木俊之
カキとかに勝手にくっついてしまうのです。それは意外とホタテより弱いのです。ですから、なかなか東京方面へ送ろうとしても死んでしまったりして臭ってきたとか言われてしまうので、そこを何とか新鮮なうちに加工してしまって……。
中村局長
商品化をと。
菊池副局長
ホタテより味が締まっている感じがしますよね。
佐々木俊之
そうです、ホタテよりおいしいと。
中村局長
なるほど。
菊池副局長
市場でものすごい安いのです。
中村局長
ぜひそれがまた商品化して売れていけばいいですね。
菊池副局長
名前はつけましたよね、まだ未発表ですか。
佐々木俊之
もう発表してもいいと思います。
中村局長
ネーミングもいろいろ考えているわけですね。
佐々木俊之
「山田の赤ちゃん」と。
達増知事
牡蠣くんに次いで赤ちゃんと。
佐々木俊之
先ほどの五日市さんのネーミングですけれども。
中村局長
わかりました。引き続き新しいほうの取り組みも頑張っていただければと思います。
それでは、次に金野さんからお願いをいたします。
金野好幸
私は、今開発中なのでまだ途上国なので、ちゃんとして、本当に来年あたりから販売ルートをつかんで……。
販売ルートというのは、まず県漁連さんとの販売契約を結んで、あとはネットワークというのは、まず組合がネットワークになって、そして漁民さんがまず組合さんに注文したら漁連さん、そして私のところに注文、発注されれば皆さんにお届けしたいと、そういう考えで取り組んできました。ただ、やっぱり値段的にうちのほうは本当は安いのをつくりたかったのですけれども、各部署がメーカーさんに頼らざるを得なかったのでこの値段になったし、あとは例えば商社さんに頼めばもっと手数料、マージンを取られる可能性が強いので、それで直接漁連さんのほうにお願いして販売ルートをつかんでやりたいと。
そして、ウニの場合はとても繁殖率が強いのですよね。繁殖率が強くて、例えばウニの磯焼けというのがありますよね。磯焼けというのは、ウニは食べ物がないと磯のコケを食べるのです。コケを食べると、コケの中にはいっぱい海草の根になるものが存在しているのですよ。それを食べ物がないと食べてしまうのです。だから、冬場とるウニというのはコケを食べて腹ごしらえしているのだけれども、余りウニの繁殖率が強くてもウニのあれには、環境というのだか、生態というのだか、そういうのがバランスが崩れるので、ある程度ムラサキウニのほうも、今は1かごとかそういう感じでとれるのだけれども、とれるのであれば1かご、2かごとらせてもらったり、そうすれば漁民さんのほうも幾らかでも収入源が上がる。そうなれば、自分らも必要となる機械も提供してもらえるのではないかと、こういう発想でやっています。今現在は、さっきも言ったように販売ルートはそんなに私たちはわからないので、今は広域センターの、振興局の皆さんから結構応援されていろいろな方々を紹介されて商品説明ということでそっちこっち歩いて商品の説明して歩いています。来年に向けて、これから一生懸命やっていきたいと思いますので、ご協力のほどまたよろしくお願いします。
中村局長
今シーズンは何台ぐらいさばけたとおっしゃっていましたか。
金野好幸
今年は50台ぐらいですね。来年はもっと2倍でも5倍でも言いたいのですけれども、とりあえず今年は、漁連さんもPRのほうは余りしてないのです。来年1月から各漁協にPRチラシ全部配って本腰でやっていくそうなので。
中村局長
先ほどみたいに実際に生で見てみると、いいものだなと思ってもらえると思います。
金野好幸
ウニの殻をとる作業というのは若い人たちはやらないのです。浜からウニをとるのはいいのだけれども、作業はもう年寄りの人ばかりなのです。どうしてもピンセットで、飽きてしまってやらないのです。ところが、この機械使えば結構くるくる巻くので、若い人たちも喜んで使うのです、今のところは。
中村局長
ゲーム感覚で。
金野好幸
はい。そういうわけで、そういうのをいろいろ役に立てればいいと思っています。
中村局長
わかりました。また来シーズンに向けてお互い頑張っていければいいと思います。
続きまして、浦嶋さんからお願いいたします。
浦嶋健
私も始まってまだ半年ちょっとなのですけれども、一番の課題、問題点は何にしても資金面です。といいますのも原料自体市場から購入しますので、どうしても旬の季節にそのものを購入しなければならない。そうなった場合、一番のサイクルですと市場のサイクルが10日決済なので、先にお金を払わなければならない。そうなった場合、在庫品はまだ売れてないので、そのための運転資金というのが莫大な費用になってくる。その関係で、どうしても販路がつかめてない状態のものになりますと、なかなか在庫をつくったはいいが、どこへ持っていくか。旬の季節につくらなければならない。それが年間通してあるものであればその時々、注文に合わせてつくることが可能ですけれども、そういった部分の難しさということが一番の課題になってきますし、今大船渡もそうですけれども、鮮魚をやられている方たちは比較的元気にやられています。といいますのも、そのとおりサイクルが10日で動きますので、現金は転がるのです。収入は微々たるものですけれども、利益に関しては微々たるものですけれども、現金が転がる関係で生計のほうは何とか回っていく。ところが、そこから加工しようとするとどうしても資金が出てこない。そのためになかなか断念している部分がある。
あとは加えて、加工されている方々に関しても、やはり端材の部分での加工が多いものですから、それなりのものでしか売れない。そして、それをもっともっと売っていくためには、今度は設備関係、その辺の投資が必要になってくる。今はどうしても量販店さんであるとか、今の宅配関係の商社でもネット関係のビジネスされている方もそうですけれども、どうしても工場見学された場合、これではだめですよというふうなことが多々言われてきますので、やはりその設備関係というものは大きくなってきます。そのために私も工場のほうを内装は全面的に文句言われないほどに直しています。HACCPまではどうしてもいけませんけれども、それに準じた形での最低限の部分に関してはやりました。ただ、やはり設備面と販路の部分というふうなものがまだまだかみ合ってない部分がありますので、どうしても赤字の事業が続いているというふうなのが現状です。そういった部分も含めまして、これからどういうふうなスタイルでの販売をしっかりつけていくかというふうなことが一番頭を悩ませているところですし、大体の販路関係も見えてきている部分はありますけれども、やはりそれを順調に転がしていくためにはそれなりの資金が必要になってくるかなというふうな部分ですね。
中村局長
資金面では、我々行政のほうでまたいろんな制度もありますので、またそこはご相談しながら対応させていただきたいなと思っております。
浦嶋健
あと加えて、先ほどの佐々木さんもそうですけれども、加工のほうに力を入れてやっていく中で、今はどうしても食の安全という面で多々言われている部分から量販店さんであるとか、そういったお客様のほうからかなり厳しいことが指摘されるようになってきています。その関係で、なかなか私どもわかり得ない部分、どこにどう相談したらいいのか、どういったことで検査をしたらいいのか、検査費用も通常の機関にお願いすると相当な額になってしまったりとか、それができないためにどうしても販路も増やせなかったということもやはり出てきているところですので、できればそういった公共機関でのそういう支援といったものもあっていただければありがたいなと思っています。
中村局長
わかりました。
それでは、前田さんからお願いをいたします。
前田慧太
やはり日々の活動の中で意識していることというのは変わらずに、これからも活動を通していろんな人に海の大切さというものを伝えていきたいというのはあります。そういう活動の中に海底清掃という大きな1年に1回しかないイベントというのがあるのですけれども、海底清掃は1年に1回しかやっていないので、こういうのも数とか場所というのももうちょっと広げていっていったら、もっと多くの人にこういう現状があるのだよというのを伝えられるのかなというのは思います。ただ、なかなか場所というのは今まで地元の漁港のほうをきれいにしているのですけれども、地元は海岸清掃を週に1回やっていまして結構あいさつとか、顔見知りの漁師さんとかといらっしゃいまして、いいよ、いいよと言って掃除させてもらったりとか使わせてもらったりするのですけれども、なかなかほかのフィールドというのは、海は漁師さんのフィールドという概念というのがあるので、そういうのはなかなか使いにくいです。もっとそういうフィールドというのを広げていけたらいいかなと思います。
あとそうですね、さっき金野さんも言っていましたけれども、磯焼け、日々の活動でも結構ダイビングで潜っていまして、あるのです、磯焼けしているフィールドといいますか。もう本当に、岩しかないので真っ白で、そこにウニがいるのですけれども、まばらにいるわけではなくてばっと固まっているのです。何で固まっているのかなと思ったら、本当にわずかしかない海草とかにすごいたくさんのウニがわっと集まっているのです。生物も多様度がなくて、岩とウニとわずかな海草しかない。海草の芽も摘まれてしまうといいますか、大きくなる前に食べられてしまうので。そういうのも漁業資源の被害、枯渇とか、そういうものの問題にもかかわっていけたらもっと活動の幅というのは広がるのかなと思っていました。そういうのに関しても検討していきたいと思っています。基本的には、フィールドというのは漁師さんとか、やはりフィールド使っている方々と一緒に守っていきたいと、それだけです。
達増知事
深く潜って実際に見てもらえるというのは非常にありがたいことですからね。
中村局長
そうですね。そういう意味では、今後、地域の漁協さんなんかとうまく関係をつくってというか、そういった清掃活動をもう少し広げていきたいというような感じですかね。
前田慧太
そうですね。
中村局長
そういうのはどうでしょうか、小林組合長さんなんかは今のお話を聞いて。
小林昭榮
そうですね、漁港内ですと漁師さんは理解すると思うのですけれども、一般の漁場、ウニとかアワビとかの採捕場所ですと、なかなか理解が進まないですね。私ども漁港の中を山田のダイバーの方からやっていただいたこともあったのですけれども、大分前のことで、その後やってなくて、すごく堆積していると思います。
中村局長
そうですね、確かにそういう意味では、そういった活動の輪が広がっていって、岩手の海岸なり、漁港なりがもっともっときれいに環境がよくなっていけばいいですよね。
前田慧太
イメージもいいですし。
小林昭榮
そうですね。
中村局長
ありがとうございました。皆さんから今後のいろんな展望なり、我々行政への期待みたいなお話もちょうだいをいたしました。我々もそれをまた踏まえて業務にしっかり生かしていきたいなというふうにも思いました。
知事所感
中村局長
2周り皆さんからお話し聞きましたので、最後に知事から皆さんのお話を伺っての所感等があればお願いをいたします。
達増知事
厳しい経済情勢が続いていて、また少子化、高齢化という社会トレンドもあるのですけれども、そういった中でそれぞれ最前線においていろんな課題を克服していこう、新しいことに挑戦し、またそれを推し進めていこうという力強い動きがあることがよくわかりました。また、そういったことを進めていくに当たってさまざまな課題があるということも改めて確認できましたので、そういったところは行政もしっかり支援をして、そういう意欲、創意工夫がどんどん実現して成功事例になっていくように県でも支援をしていきたいと改めて思いました。今日は本当にありがとうございました。
閉会
中村局長
それでは、大変ありがとうございました。大体予定されておりました時間になりました。本日は皆さんからいろいろ貴重なお話をちょうだいいたしました。我々としてもまた皆さんの活動をいろんな形でご支援をしながらこの沿岸地域の活性化なり、水産業の活性化に引き続き努めていきたいと思いますので、よろしくお願いをしたいと思います。
それでは、以上をもちまして県政懇談会「岩手フロンティア懇談会」を閉じさせていただきます。どうもありがとうございました。
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