岩手県食の匠232 小山哲子さん(平泉町) 八斗御膳
料理の紹介(いわれ・特徴)
小麦は水害を受けにくいので、北上川河川沿いの主要作物であったことから、八斗は日常食であるとともに簡素な晴れ食であった。
八斗(はっと)の名称の由来は、平泉町内にかつてあった水車での粉挽きの際に、五斗の小麦を製粉すると五斗の小麦粉と三斗のふすまとなり、合わせて八斗になる製粉方法から出たものと言われている。
平泉町では、親戚が泊まった際の夕食には、八斗汁(はっとじる)に加え、この地域の晴れ食に使われる甘いえごま(じゅうね)だれに八斗をからめたじゅうね八斗(ばっと)と、辛みのあるとろみをつけたしょうがだれに八斗を絡めたしょうが八斗(ばっと)を御膳(おぜん)にのせてもてなしの食としていた。
じゅうねに使われる砂糖は、砂糖が貴重だった時代には水あめ、蜂蜜でつくることもあった。
しょうがはかつては、葉しょうがの根を使っていた。
食べる順序は、じゅうね、しょうが、八斗汁の順に食べると食後がさっぱりしてよい、とされた。
他にずんだ、なっとう、あんこ、とうふもあったが、甘さではじゅうね、酒の付け合わせにはしょうがが好まれたことから、この3品の組み合わせとなっている。
口当たりのよい八斗と、さっぱりとした汁、ざらつきの少ないじゅうねだれの甘さ、とろみをつけたしょうがだれの辛みがほどよくバランスがとれ、まろやかな食感となっている。
材料(4人分)
生地
- ナンブコムギの小麦粉(でん粉入り) 400グラム
- 水(八斗練り用) 240cc
- 片栗粉 10グラム
汁
- だいこん 80グラム
- にんじん 40グラム
- ごぼう 40グラム
- ねぎ 40グラム
- 油揚げ 40グラム
- しめじ 60グラム
- だし汁(にぼし、かつおぶし、だしこんぶ) 280cc
- しょうゆ 30cc
- 水 520cc
じゅうねだれ
- 白えごま(白じゅうね) 80グラム
- 砂糖 32グラム
- しょうゆ 8cc
- 塩 小さじ5分の1
- お湯 40cc
しょうがだれ
- しょうが絞り汁 小さじ2
- 干ししいたけ 2枚
- 干ししいたけ戻し汁 60cc
- だし汁(にぼし、かつおぶし、だしこんぶ) 120cc
- しょうゆ 50cc
- みりん 60cc
- 片栗粉 12グラム
作り方
生地
- 小麦粉に水を加えて耳たぶくらいの固さに練って塊にし、最後に片栗粉をまぶし、ビニール袋に入れて冷蔵庫に一晩寝かせる(4時間から5時間は確保)
- 1を手で薄くのばし一口大にちぎり、お湯で2分程度湯揚げする。
八斗汁
- だいこん、にんじんはいちょう切り、ごぼうはささがきし、しめじ、油揚げにだし汁を入れ、醤油で味つけし、3分間煮立てる。
- 湯揚げした八斗を入れ、1分ほど煮る。
- お椀にとり、ねぎを刻んだものを乗せる。
じゅうね八斗
- えごまをフライパンに入れ、5、6粒跳ねる程度まで炒る。
- すり鉢に入れ、30分間ほど粘り気が出てくるまでする。
- すりあがったら、お湯、しょうゆ、砂糖、塩で味をととのえる。
- 湯あげした八斗を入れ、からめる。
- 器に入れる。
しょうが八斗
- しょうがをすりおろして、布巾で漉す。
- 干ししいたけをだし汁に戻し、千切りにし、戻し汁にしょうゆとみりんを加え煮る。
- 煮立ったところに、片栗粉を加え、とろみをつける。
- しょうがの絞り汁小さじ2を加える。
- 湯あげした八斗を入れ、からめる。
共通
椀、器を御膳に乗せ、箸休めとして、季節の香の物を添える。
料理・技術のポイント及び工夫している点
- 地元産のナンブコムギの小麦粉に、でん粉入りの小麦粉をブレンドし、最後に片栗粉をまぶすことで、お湯に入れる際も水なしでも手に付かずにちぎられるほか、口当たりのよいものになっている。
- じゅうね八斗は殻が口に残らないよう、途中でお湯は加えずに粘り気がでるまで時間をかけて入念にすることで、まろやかな食感となっている。えごまは黒でもよい。
- しょうがをそのまま混ぜると繊維が口に残るが、絞り汁とすることで、食感を損なわずにしょうがの風味を味わえるものになっている。
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